お正月
※こちら2022年のお正月に書いたお話です※
おっと…、こんな所にお年玉が落ちている。
……誰だ、落としたのは。
どうしたものかとあたりを見回す。
……誰が落としたんだ。
舌を出してへらへらしてるあいつか、それとも鼻息の荒いあいつか、もしかして取っ組み合いのけんかをしているあいつらか…、いやいや大人しくおやつをもしゃもしゃやってるあいつらかも、もしや優雅に空に浮いてるあいつか?チョロチョロしてるやつも怪しいぞ、もしや大声で叫んでるあいつか?
せっかく人がなけなしのこづかいはたいてあげたのにー!
……返してもらお。
そっと拾って、ポケットに……。
「あっ!それあたしのお年玉!!良かったよぉ、探してたの!」
よたよたとこちらに向かってきたのは…真っ赤な目をした、女子!!
さては昨日……徹夜でかるたをやっていたな!!
いくら正月とはいえ、はしゃぎ過ぎだ!!
「落とすくらいならいらないってことだね!!遊ぶのに忙しいみたいだしこれは私が…
「あーん!!だめぇえええ!!!」」
足元でぴょんぴょん跳ねる、女子。
……自己管理はきちんとしていただきたい。少々きつめにお灸をすえておかねばなるまい。
「もう!お年玉落としても気づかないくらい寝不足なんじゃん!ちゃんと自制して遊ばないとダメだよ!」
「だってぇ…今年は仕事ないし、イイかなって思ったんだもん……来年は忙しくなるし。」
口をとがらせている女子の長い耳が、風になびいていらっしゃる。
…そうだな、一仕事する前に羽目を外しておきたい気持ちは、わからないでもない。思えば昨年の正月は、大酒のみのオオトラが正月の場を派手に荒らして…雷を落としたのだった。
……今頃ヤツは、日本中で正月のあいさつ回りにてんてこ舞いしている事だろう。
「元気がいいのは良いけど、体調悪くしてまで遊ぶのはナシだよ?君らが万全の体調で頑張ってくれないと、日本全体が疲労困憊しちゃうんだからね?」
「……はぁーい。」
いくぶんすねた様子でこちらを見上げる女子…ピンク色のお鼻がすんすんしてる、……まあ、新年だし、あんまり説教するのもかわいそうか。
「はい、もう無くさないでね!!」
「うん!!」
お年玉袋を手渡すと、真っ白なほっぺたがほんのり桃色になって…ふふ、かわいいなあ、もう。
「ウシは疲れ果てて寝てる?おいしい干し草を差し入れに来たんだけど、見当たらなくて。」
「なんか新しくできたジェラート専門店に行った、ずっと偵察に行きたかったんだって。」
昨年働き通しだった青年は、年明け早々別件の仕事に邁進しているらしい。相変わらず真面目なことだ、牛乳の啓蒙活動に余念がない、さすがだ……。
「じゃあ、差し入れついでに私もジェラート食べに行こうかな?……君も良かったら一緒に来るかね、おごりますよ。」
来年は頑張って働いてもらわねばならないのでね、今のうちに労っておいてモチベーションを上げておきたい。
「わーい!!ありがとー!!」
大喜びの女子の手を握り、一歩踏み出したら。
「私も食べたいにょろ……。」
「わしもつれてけぇえええ!!」
「僕もお供します!争ってる場合じゃ……ない!」
「コケーコケコケ!!」
「ブルんぶるるんっ!!ヒヒ―ン!」
「わーい!大好き!ちゅー♡」
「うめ~もん食べたい!!」
「ウッキ~!喧嘩は中断だ!!」
「ブキ~っ!!あ!!イイな!!俺も食いたい!!イモ食いたい!!」
わいの、わいの、ざわ、ざわ!!!
うっ……!!
女子一人連れてく予定が…まさかの大所帯っ…、ヤバイ、財布の中身!いやしかしアンタらはダメとか絶対に言えないやつ!!なんだかんだ、この皆さんは毎年頑張ってくださっておりましてですね!
「あーあー!も~わかったわかった!連れて行くから!!ちゃんと正装してください!」
ボスンぼよんシュッぽわわんドロンドロン…各々個性的に姿を変え替え、うん、あっという間に…10人の愉快な仲間たちが勢ぞろい。
「はい、それでは皆さんで行きますよ!!ちょ、アンタしっぽ忘れてる、爺さんはひげが伸びっぱなしだ、君鼻間違えてる、ちょっと姐さん人の姿で巻きつくのはやめてちょうだい!!」
「多少大丈夫だよ~♡最近耳とかしっぽ着けてる人間増えたし!」
「明らかに本物なのはまずいんだってば!!ちょっとチェックするからみんな並んで!!」
わいの、わいの、ざわ、ざわ!!!
うさ耳猿耳犬耳はまあいいか、明らかな鱗はまずい、とさかはクオリティが高すぎるからアウトだし蹄なんてもってのほか…ちょっとまて、手のひらサイズの人がおるかい!!!
あああ!正月早々なんと言う落ち着きのないことか!
私はマイペースな十二支の皆さんに振り回されつつ……、本年度の無事を祈るのであった。
一方その頃の猫(略
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