イモは天下の回りもの
……ああ、今年も、この季節が、やってきた。
食欲の秋も終盤となった11月……、我が家の玄関に、わんさと積まれているのは。
土だらけの、サツマイモっ!!!たまにジャガイモっ!!!
毎年10月から11月中旬にかけて、我が家にはなぜかサツマイモが集まってくる。
―――家庭菜園で収穫したからおすそわけね!
―――お客さんがどーぞっていうからありがたくいただいてきたー!
―――芋掘り行ってきてさ、食べきれないからあげるよ!
―――お客さんが箱買いしたからお土産に持ってってって渡された―!
―――なんかめっちゃもらったけどうちイモ食わんのだわ、もらって!
―――会社のパートさんからもらったー!
―――優のおばあちゃんにもらった。
―――杉下さんがくれた―!
―――いいもんもらったー!
サツマイモの収穫時期はおよそ9月下旬から11月中旬、この時期にいただくものはやや大ぶりで些か成長し過ぎたものが多くみうけられる。
大きすぎるものは調理するのが大変なのか、家族でサツマイモ狩りに出かけた皆さんによるおすそ分けがやけに集まって参りましてですね。
思ったより大豊作でドン引きしちゃった皆さんが、あそこの家の人は良く食うから何とかしてくれるに違いないと持ち込んでくださいましてですね。
正直うれしいが、わりとかなり相当こんなに集まらんでもええがなって思っちゃう私がいる!
そもそも、サツマイモのレシピというのは、わりとこう、毎日毎日食べるようなものじゃないっていうか……。
芋まんじゅうに芋粥、大学芋にスイートポテト、豚汁に入れてみたりシチューにしたり、わりといろいろアレンジしてみるものの、サツマイモの持つ独特の甘みが実にこう、連日の消費を妨げるというか……。
サツマイモは確かに嫌いじゃない、むしろ好きだ、しかしこうも毎日食べ続けていると、はっきり言って……飽きる!!
「ああ~、今日はどうやって食べよう、くそう、食っても食っても減っていかない、どうするよホント‥‥。」
昨日ようやく箱一つになったと思ったのに、今朝がた加藤さんからレジ袋いっぱいのサツマイモをいただいてしまい、イモ箱はもはやハイレベルの崩し将棋みたいになっている、このままでは下の方の皆さんが痛んでしまうかもしれない、……ちょっと入れ直すか。
片手で持つと重たいレベルのジャンボサイズからガタイのいい人の親指くらいの小ぶりなものまでみっちりと…くそう、旦那だな、むちゃな詰めこみ方しやがって……。
傷んでいるものを抜き取って、箱に入れ直していく。今日は何を作ろうか、甘いのばっかだときついんだよね、レンチンしてから焼肉のたれで炒めてチーズでも乗せてみるか……。カレーは不評だったんだよなあ、まあ全部食べつくしたけど。
大昔だったら焼き芋でもやって近所に配ることもできたけど、今はいろいろと行政のあれやこれやがあってそれもできない。
娘がまだチビッ子だったころ、旦那がこども会で焼き芋やりたいって市役所に相談に行ったら、サクッと無理ですって言われちゃって、公民館の調理室借りて蒸かし芋大会やったんだよなあ……。地味に盛り上がらずにビミョーな空気が流れたんだよ。
外部に頼れぬ今、この一本当たり400kcalのサツマイモおおよそ30本、計12000calは我が家で消費せねばならないわけで……。
そりゃあふとましい体もどんどん重量を増していきますわなあ……。
どんだけウォーキングで汗を流そうとも、一向に体は引き締まって行きませんわなあ……。
「ただいまー!いいもんもらったー!」
泥だらけの手でさつまいもを拾う私の耳に、ぶくぶくとした能天気な声が!
「またもらってくる!もういらん!」
私は怒り心頭でふとましいをとうに通り過ぎた旦那を振り返り───!
「え!いらないの!じゃあ俺全部食っちゃお!」
ちょ!その、ぶよぶよした腹の前に抱えられているのは!どこぞのケーキ屋の、でっかい箱!めっちゃ良い匂いする、ひさびさの洋菓子臭!
「なにそれ!ズルい!私も食べる!」
「いらんって言ったじゃん!せっかくお客さんがくれたデコレーションケーキなのに!もー、仕方がないから一人で食うわ!」
どす、どすどすどす!
普段悠長にボテボテと移動する癖に、こういう時はめちゃめちゃすばやい旦那は、あっという間に玄関を抜けキッチンへ!
まずい!一瞬の躊躇が……一口も食べられない悲劇に直結する!
私は両手にイモを抱えたまま、急いであとを追ったのであった!
芋はうまい。
焼きいもが気軽に楽しめる敷地が欲しいだす。