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願いが叶う世界

「……そうそう、すごくいい夢見たんだよ、欲しいものが出せる能力持っててね!」
「へえ……、そうなんだ、詳しく話を聞きたいな。」

「おいしいもの食べて、イケメンとイチャイチャして、お金たっぷり出して散財して、豪邸でのんびりして、空を自由に飛んで!うーん、まだテンション上がってる!すごくいい夢だったの!」
「良かったねえ、…幸せだった?」

「幸せというか、すごく楽しかったけど、おいしかった味もイケメンの顔も思い出せないし、豪邸の質感がなくて、買い物の内容も漠然としてて、空を飛んでも風とか気温とか感じなかったの。なんか、全部がぼんやりしてるのがもったいなかった!」
「まあ…夢だからねえ、イメージの力が弱いと、肝心なところでぼやけちゃうんだね。」

「あーあ、現実で欲しいものが出せる能力があったらよかったのに!」
「現実でモノを構築するのは難しいんだよ、何もないのにクッキーは作れないでしょう?現実の世界は…願いを叶えるために必要な物質がないとね。夢の中だったら、イメージするだけで材料が揃う…欲しいものが出てくるから、現実に無くてもサクサク物が作れるし、手に入るんだけど。」

「夢は現実じゃないから、夢の中には現物が存在しなくてもいいから、何でも出てくるって事かあ…。」
「まあ、夢の中でも、あれがない、これがないって…現実に引きずられて勝手に制約されてる人は多いと思うけどね。」

「確かに時間がなくて困ってる夢とか、あと100円足りなくてイライラしてる夢、見ることある!!あれって何なんだろうね、自由に見られるはずの夢なのにさ、どうして自分の首を絞めるような事になっちゃうんだろ。」
「せっかく自由に何でも揃うはずの夢なのに、現実でつらい経験ばかりしてるから、できないものって思い込んじゃうんだね。もったいない話だと思うよ。」

「せっかくなんでも叶うのに、現実のせいで夢の中まで浸食されちゃうなんて…なんか、切ない……。」
「…そうだね、もっとみんな、自由に願いを持っていいし、自由に願う姿を想像してもいいと思うよ。」

「想像は無限だもんね。…でもさあ、所詮ただの妄想だし、むなしいだけっていうか!現実の世知辛さがこう…引き立っちゃうような事も無きにしも非ずっていうかさ?」
「イメージってのは持ち出せるでしょう?常日頃から欲しい物や人生の道筋とかを思い浮かべていれば…やがて実現に必要な物質や要素が溜まっていって、手にすることが可能かもしれないんだよ。…引き寄せの法則って、聞いた事、ない?」

「強く願ったり、信じたりしたものは実現しやすいってやつでしょ?昔春分ドリームマップとかやったけど、全然叶わなくて!」
「それは…叶うまで待てなかったから……なんじゃないのかな?ほら、無理って諦めちゃう癖がついてるからさ。」

「ええ~、でもさ、願うだけで…思うだけで、お金が現実に出てくるかな?現実問題として、物質が手元にないわけじゃない?お金を構成している紙もインクも金属もないんだよ!」
「世の中に紙もインクもあるから、お金というものが存在しているんでしょう。ただ切っ掛けが足りなくて、貴方の元にこない…目の前にないってだけでね?イケメンも然り、いるけど貴方の元には来ていない、みたいな。」

「何が足りないのよ、どうやったら来てくれるのよ!切っ掛けって、そんなの関係あるの?願ったものは何一つ手に入らなかったよ?」
「だからそれは、欲しいと願って手を伸ばしていたら、いつか目の前に現れた時につかむことができる的な?諦めずに日常で目を光らせてる人と、諦めて欲しいものから目を背けている人だったら…どっちがチャンスを物にできると思う?自分の求めるものを認識している人は…やっぱり違うと思うよ?」

「そんなの…偶然ラッキーを手にする人だっているわけで!!」
「確かに運や本人の努力の結果として手に入ることはあるかもだけど、物って、意外なものからできているって事、あるでしょう?例えば、ボタンなんかは牛乳からできていたりするんだよ。もし貴方が今牛乳を持っていたら、ボタンを作れる可能性はゼロではないってこと。」

「そんなの作り方も知らないし、できないに決まってるじゃない!というか、牛乳って!!何その理論!普通は牛乳からボタンなんて…作れない!作ろうとしない!意味わかんない!」
「そう?ネットで作り方を検索することもできるし、工場に行けば実際に目の前でボタンができていく様子も見ることができるし…ものすごい執着心を持っていたら、実現できそうなものだけど。仮に貴方が子供の時に牛乳からボタンを作れることを知って、いつか必ず自分の手で作るんだと心に誓っていたならば、今頃ボタンを作っていたかもしれないでしょう。知人にボタン工場で働いている人がいたら、牛乳を持ってって作らせてもらえる場合もあるだろうし。」

「つまり…、私が牛乳を…ボタンを作るための原材料を持っていたとしても、作りたいと思う熱意も知識もないからボタンが作れないって事?ボタンを作りたいと思って、知識が欲しいと願って目を光らせていなかったから、牛乳をボタンにする材料が足りてないって事?」
「この世には、牛乳からボタンを作っている人はいるんだよって事だよ。貴方がたまたま、牛乳からボタンを作るという道筋に入らなかっただけで。……まあね、普通は、牛乳からボタンを作りたいって思う人、あんまりいないか。はは、チョッと意地悪な話をしてしまったみたいだ。……ごめんね?」

「いいけど!!ただの…こじつけ?憶測?推測に過ぎない感じがね!?」
「物事の実現には、願う気持ちが必要って事さ。見えないけれど、立派な現実世界における…情熱という物質なんだと思うよ。誰かの発見があって、誰かが動いて、物質を使って、現物になっている…つまり、イメージがなければ、現物というものは生まれて来なかったんだからさ。」

「うーん……、そっか…イメージ、大切ってことだね。私、これからなるべく自分のしたいことやほしいものを積極的に思い浮かべることにしよ!」
「うん、それがいいよ、きっと君の願いは……叶うはずだよ。……ボタンとか。」

「もー!!!どうせ作るなら、ボタンなんかじゃなくて翼が作りたいよ!私!!」

「ああ、そうなんだ?じゃあ、材料を集めるために……頑張らないとね?」

「だね!私いつか、自分の翼で大空が飛びたいんだよね!……フフ、これはいくらがんばっても、叶いそうにない夢だけど!」

「……諦めなければ、イメージし続ければ、何がどう影響して願いが叶うか、わかんないんじゃない?」

「そうかな?翼なんて…どうやって想像したらいいのかわかんないよ?ええと、立派な筋肉に関節、羽毛に骨も必要だよね、どれくらいの大きさが必要なんだろ、重力に逆らって空に浮くためにはー!!」

「肉、腱、神経、骨に皮膚、羽毛のあるタイプが良いの?コウモリなんかは皮膚で飛んでるね。」

「やっぱ羽根だよ!!フワフワしてるし、なんか天使っぽいでしょう!」

「ああ……、こういう、羽根?」

「うんうん、こういうの!!これをたっぷり翼に蓄えて、ふわっと宙に浮いて……羽ばたいて……ああ、羽ばたくくらいじゃ、浮ばないなあ、地球には、重力が……。」

「じゃあ、重力のない場所に行けばいいんじゃないかな?……まあ、宇宙には、青い空なんて……ないけどね。」

「そうだね、重力が無ければ、自由に空を……。」

「……ほら、君の望んだ、羽根が……背中に、生えているよ?」

「ふふ……私、飛んでる、ああ……体が、軽い……。」


「……さ、じゃあ、そろそろ……夢から、覚めようか。じゅうぶん、楽しんだみたいだし。」


「ここは、夢……?私、いつの間に、眠っていたんだろ……。」

「ううん、ここは、……現実だよ。」


「……現実…って、なんだっけ……?」

「君の夢が、叶う場所だよ?」


「かなう、ば、しょ・・・・・。」


「願う事はすべて……僕が叶えてあげるって、言ったでしょ?」


「イケメン、おいしいもの、お金、それから・・・・・・ボタン。」

「全部、出してあげたんだよ?……懐かしい、星で願った頃の、記憶。」


「・・・・・・。」


「さ、次の星に着くまで…、ぐっすり、おやすみ?」


「たくさんのみんなが、本物の人間の到着を、楽しみにまっているからね……。」

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たかさば
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