食べ放題だ、ヒャッホゥ!… か ら の
こちらは4/1に書いた作品です(*'ω'*)
今日は年に一度の、世界に嘘が溢れる日…エイプリルフール。
ああ、待ちかねたぜ!
一年ぶりの……食べ放題♡
特設ウソバイキング会場には…うっひょ―!!
めちゃめちゃうまそうな嘘がずらりと並んでやがる!!!
オレは嘘が大好きなんだよ!
普段世の中に蔓延している妙に辛気臭い生活臭にまみれた嘘なんかよりも…、断然オレはエイプリルフールのはしゃいだ感じのウソが大好きでさあ!
悪食呼ばわりされることも多いけど、この時期にしか味わえないわざとらしさがたまんねーのな!!
『あーあ、私もいよいよ20歳かあ、老けたなあ…』
『今朝はね、宇宙人の刺身を食べてきたんだよ!』
『起きたらほら、右耳だけおっきくなっちゃった!!』
『今度二次元世界に連れてってもらえる事になってさあ!!』
『私、実は体重45キロなんですよぅ~』
『昨日はおばけ退治をしたんだけど、まさかのひい爺さんだったわ!』
『知ってる?牛乳を主食にする法案が可決されたって話!』
マッタリコクのあるなんとも言えない粘っこさ、それでいて案外アッサリしている、魅惑の味がたまらない。騙してやろうという意気込み、とりあえずふざけてみるかというチャレンジ精神、イベントに託けて言いたいことぶちまけてやるって思惑…その他もろもろが実にいい感じで混じり合ってさ!いつまで経っても印象に残るような奇跡の一品に出会うこともあるんだよなあ♡
く〜!
今日は腹いっぱい嘘を食べるぞ〜♡
まずは…そうだな、あの…、かわいらしい嘘から行くか!
「あんたなんか嫌いなんだからね!」
甘酸っぱくてちょっぴりせつない…エイプリルフールを意識した、わざとらしいひと言……。
もぐもぐもぐもぐ……、これはおいしい!
摘む手が止まらない。
ああ…ゴメン、ホントゴメン。
……ついつい、嘘を全部食べてしまった。
残ったのは、真実だけ……。
嫌いという感情だけが、漂っている……。
……やばい、僕はもしや、やらかしてしまったのでは。
縁結びに忙しい天使どもに見つかったら……まずいかも!
「俺も嫌いだし!」
なんだ、心配して損したよ!
キライ同士の両思いになったんだったらばんばんざいじゃん!
せっかくの春到来、新しい恋でも見つけて天使どもをわくわくさせてやれよ~!
よ~し、次いこ、次!!
『俺に任せとけって!』
男を感じる、潔いさぎよい感じ、嫌いじゃないぜ!全部放り出す気満々の責任感のなさがたまらんなあ♡
もぐもぐもぐもぐ……、これはおいしい!
摘む手が止まらない。
ああ…ゴメン、ホントゴメン。
……ついつい、嘘を全部食べてしまった。
残ったのは、真実だけ……。
任せろという意思だけが、漂っている……。
……やばい、僕はもしや、やらかしてしまったのでは。
運命を与えた神どもに見つかったら……まずいかも!
「じゃあ、全部頼むね~!」
なんだ、心配して損したよ!
どっちにしろ丸投げされるんだったらばんばんざいじゃん!
せっかくの新年度、心機一転まじめな人生を歩み始めりゃ神どもも喜ぶだろ!
よ~し、次いこ、次!!
『お前らだけに言うけど、ヤバイ奴らに目を付けられてるんだ…』
ド定番のバレバレ感、相手もノリノリで嘘って決め付けてるのが実にいいアクセントになっている!
もぐもぐもぐもぐ……、これはおいしい!
摘む手が止まらない。
ああ…ゴメン、ホントゴメン。
……ついつい、嘘を全部食べてしまった。
残ったのは、真実だけ……。
宇宙人に目をつけられたという隠蔽された過去が、漂っている……。
……やばい、僕はもしや、やらかしてしまったのでは。
記憶操作をした宇宙人どもに見つかったら……まずいかも!
「…そうなんだ。詳しく話を…聞かせて?」
なんだ、心配して損したよ!
友人のふりした宇宙人監視者に見張られてるんだったらばんばんざいじゃん!
せっかくの新世界との遭遇、細胞の一つ一つまで観察させてやりゃ宇宙人どもも喜ぶだろ!
いいねえ、いいねえ!!
うまい嘘がめっちゃあるぞ!!
勢い付いたオレの食指は止まらない!!
よーし、手当たり次第に食い散らかすぜ☆
『好きなのは貴方だけ』
甘ったるいなあ、こんなのに夢中になるやついるのかよ?!
『やべえ、全然勉強してない』
誰にも信用されていないバレバレの嘘ねぇ…実にしょっぱい!!
『明日は仕事なんだ』
実にいい加減な味がする…薄っぺらいなあ、物足りなさがハンパねー!
『すごく可愛い』
なんとも適当な味…どこにでも溢れているつまらない味だな。
『いやいや、大したことないですよ』
ねっとり絡みつくイヤミな味だが…軽すぎて食った気がしない。
『みんながいってるよ』
言い訳じみた大味だな…。
『意味わからない』
一番分かってるくせに、嘘のふりした文句じゃねえかこれ…ぺっ、ぺっ!!
『楽しい』
自分を騙す嘘はインチキくさい悲壮感がごってごてで…食えたもんじゃねえな。
……どうもこのあたりは良い嘘がないなぁ。
食べても食べても、満足できない。どれを食べても、これはというものがない。ありふれた嘘ばかりで、真新しさというか、感動がない。
くそ、しくじった…微妙に腹がいっぱいになってきちまった。
去年はとびきりうまいレアものにありつけたのになあ。
食品メーカーの嘘に絡めた、実にうまい嘘でさあ。
最近の企業の悪ノリがピリリと効いて二段階で楽しめて!
まだこれはという極上の嘘を食えてないのに…なんてこった。
……おや、あんなところに、見たことがない嘘があるぞ。
微妙に光っているような。
絶妙に震えているような。
奇妙な色合いをしているような。
珍妙なにおいを発しているような。
あれは…誰の、どんな嘘なんだろう?
見たことがない嘘だ。
これは…興味深い。
もうずいぶん腹がいっぱいだけど…最後に食べておこうかな。
口直しがしたいし、珍しいもんを食ったという自慢にもなりそうだ。
『私は平凡な一般人ですよ、ぐふふ!』
手を伸ばして、ポイと口に……入れてみる。
もぐ、もぐ。
もぐもぐ。
……もぐ。
これは確かに……嘘だ。
……けれど。
もぐもぐ、もぐもぐもぐもぐ。
ただの一般人がついた、つまらない嘘のはずなのに…、なんだ、この。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。
これは確かに……嘘だ。
……けれど。
この、かみ砕けない感じ、ごくりと飲み込めない感じ、やけにしつこい、それでいて淡白な、ぼんやりとしていてはっきりしない…事実が日常でこってりとデコレーションされていて本体が味わえないというか、嘘というよりは、 ……偽装?
……最近は、 いろんなのがこの星にいるからなあ。
オレは人の嘘は好きだけど、人じゃない人紛れ込んでるやつの嘘は求めちゃいないんだよ。
……つか誰だよ!!
嘘バイキングに こんなもん混ぜ込んだのは!!
オレは嘘しか食べられないんだぞ?!
しっかり食っちまったじゃ……
ぎゅる、グルルぎゅぶぶぶぶぶ…きゅぅ、ゴロ、ゴロゴロゴロゴロ……!!!
ヤ バ イ !!!
この音、腹部の大混乱、押し寄せる…波!!!
腹、腹が…いてえ!!!めちゃめちゃ痛い、とにかく痛い、つか信じられないくらいどんどこどんどこ詰め込んだ嘘が急降下、急発進、急加速!!!!!
「す、すみませっ・・・と、トイレ、お手あらいはどこに?!」
「あ、あちらですっ?!」
便所に駆け込み…ぐぉおお…せっかく食った嘘が全部でてったー!!!
………。
…………。
よーし!!!
スッキリ、したぜぇ~♡
しかしまあ…こんな粗悪品を並べるなんて、特設ウソバイキング会場が聞いてあきれるよ。
せめて並べるものくらいチェックしとけよなってんだ!!
……あれだなあ、やっぱり誰かが収穫してきたもんじゃなくて…自分で見つけて食ったほうが安心安全ではあるなあ。
あーあ、めんどくさいけど……、探しに行くかあ。
オレは浮かれた嘘を撒き散らしている世界に、すきっ腹を抱えて向かったのだった。