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与えたがり
あなたとっても疲れてますね。
僕が元気を分けてあげましょう。
そーれー!
はい、元気になりましたね、足取りも軽く、なったでしょ!ハイ、行ってらっしゃい!
あなたとっても落ち込んでますね。
僕が楽しみを分けてあげましょう。
そーれー!
はい、テンション上がりましたね、うきうきするでしょ!ハイ、行ってらっしゃい!
あなたとってもやる気がありませんね。
僕が好奇心を分けてあげましょう。
そーれー!
はい、探究心がうずうずしましたね、旅立ちたくなったでしょ!ハイ、行ってらっしゃい!
あなたとっても悲しそうですね。
僕が喜びを与えてあげましょう。
そーれー!
あれ、うれしくないんですか、困りましたね。
それでは笑いを与えてあげましょう。
そーれー!
あれ、面白くないんですか、困りましたね。
それでは富を与えてあげましょう。
そーれー!
ばしっ!!!
札束が、宙をまう。
ひらり、ひらりと、ゆっくり床に散るお札。
「いい加減に、してもらえませんか。」
「悲しみは、私のもの。」
「悲しみに浸る私を、邪魔しないでください。」
悲しみなんて楽しい人生には必要ないでしょ!
さあ、僕が取り除いてあげるから、この愉快な気持ちを受け取りなさい!
「出て行ってください。」
でもね、
「あんたの押し付けがましいおせっかいがほんとに嫌いなんだよ!」
「人の悲しみに乗り込んでくるんじゃねえよ!」
「俺の悲しみを奪って、俺から感情を取り上げるんじゃねえよ!」
「俺の人生に、勝手に踏み込んで来るんじゃねえよ!」
そお?
「あんた人に施してるつもりで優越感に浸ってるようだけど!」
「誰かの人生に自分の爪あと、残したいだけなんだろ?!」
「人の人生、自分好みに塗り替えようとしてんじゃねえよ!!」
「人の人生、つぶすなよ!!」
はいはい、わかりましたよ。
でもね、あなた間違ってますね。
僕、別にあなたの人生に邪魔するつもりなんてないんですよ。
ただね、傍観者として楽しみたいというかね。
人の人生って面白いじゃないですか。
自分とは違う感性で、自分とは違う選択をするもんですから。
人のまちがいを正せたとき、非常にうれしいんですよねえ!
「生き方のまちがいなんて、他人が判断するもんじゃ、ねえだろうが!!!」
「勝手なエゴで、てめえの正解を押し付ける、お前がむかつくん・・・だよっ!!!」
どかっ!!!
おうふ・・・めっちゃ重いブローもらっちゃいましたね。
こいつには、私の施しは・・・必要ないみたいだな。
いまどき、珍しいやつも、いたもんだ。
・・・はは、泣きながら怒って、どこかに行ってしまったよ。
もう、会う事は・・・ないかな?
私は、ぽんぽんとおしりについたほこりを払って、立ち上がり。
黒い翼を大きく広げ…、闇が深まってゆく空へと、飛び立った。
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