はくしょんの魔法
私ね、魔法使えるのよね!
・・・マジックポイント?
そんなんありゃしないわよぉ!!
そんなんなくても使えるのよぉ!
大丈夫大丈夫、誰にでも使えるから!!
大丈夫大丈夫、全然危険じゃないから!
あのね、私の魔法。
・・・教えてあげる。
くしゃみ出そうって人がいた時にね、使える魔法なんだ!
うん、花粉の時期にね、結構役立つかもよ!!
くしゃみが出そうになってる人を見つけたら…。
すかさず!!!
「はくしょん、はくしょん、はくしょん!」
って唱えてみて!!!
・・・ね?
くしゃみでそうだった人が、おかしな顔して睨み付けてくるでしょ?
「ちょっと!!くしゃみ止まっちゃったじゃん!!」
めっちゃ文句、言われちゃうけどね!
とっておきの魔法だよー!
とっておきの呪文だよー!
良かったら、役立ててみてね!
…って。
なんでそんなに、不満そうなのかなー?
え?
もっと派手な呪文が、知りたいとな!!!
むう、マジですか…。
うググ、ホントに?
あのね、今ってね、魔法使える人あんまりいないじゃ、ないですかぁ。
それってね、理由があってね?
うん、魔力がね、枯渇しちゃったのね。
だから、普通の人にはね、ド派手な呪文は…厳しいかな??
火を起こす?
ライターでいいじゃん。
水を出す?
水道でいいじゃん。
空を飛ぶ?
飛行機でいいじゃん。
体を乗っ取る?
脳移植でいいじゃん。
不老不死?
観察園に行けば自動的にそうなるよ。
何でもかんでもさあ、魔法なんかなくてもできちゃうんだよね。
それでも、どうしても、ド派手な魔法がぶっぱなしたいの?
うーん、じゃあ、やってみる?
唱えた途端に、消滅するよ?
唱えた途端に時空管理局に拘束されるよ?
唱えた後、自動的に不老不死になれるからいいのかな?
でもねえ、私は現代に生まれたんだったら、現代の技術の中で生きるのが良いと思うんだー。
昔の技術はね、昔生きてた人たちのものなんだー。
今の技術にどっぷり漬かってる人にはね、昔の技術って合わないんだよー。
魔力があふれてた時代の人は、魔力耐性があったんだけどねー。
魔力がないのが当たり前の時代に生きる人に、耐性なんかあるわけないのよねー。
まあねえ、木っ端みじんになりたいって気持ち、わからないでもないかな。
昔はね、そりゃあ木っ端みじんになって大気や土や海に溶け込みたいと願う人がわんさかいてね?
星の一部になって、人の暮らしを支え、感謝の念を受けたいんだ、人が大好きなんだってね。
まあねえ…まさか溶け込んでる存在を、人が認識できなくなるなんて思いもしなかったから。
人と心を通わせることができなくなった今、ずいぶん溶け込んだ存在達は悔やんでいるけどね。
そんなこと、微塵も気が付かないでのほほんと生きてるのが…今の人間だからねえ。
そうそう、だからね、魔法なんて完全に時代遅れなのね。
うんうん、だからこその、私のおしえてあげた魔法が必要なのね。
時代遅れの、時代にそぐわない昔の魔法なんかより、はくしょんの魔法よぉ!
地味に役立ち、地味にお仕置きにぴったりというか!
ちょっと役立ちそうで、ちょっと意地悪に使えそうな、魔力いらずの、現代で安全に使える魔法!
うん、ぜひ、試してみて?
試してみて、使えたら…きっとあなたも。
私の、言葉が、信じられる、かも?
ね、どこまで、本当だと、思う?
どこに。
嘘が。
あると、思う?
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