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ゴミステーション
こちらはゴミステーションでございます。
どなたさまも、不要なものをお出しください。
こちらで処分させていただきますよ。
基本的に、無料で承りますよ。
…はい、こちら燃えるゴミですね、いただきますよ。
…はい、こちら危険ゴミですね、ああ、ガスはこちらで抜いておきますのでね。
…はい、こちらは…衣類ですか、燃えるゴミで大丈夫です。
…分別ができていない?じゃあ次の収集日に分別して持ってきてください。
・・・ちょっとあなた!困りますね!!
これは粗大ゴミです!
きちんと粗大ごみ等収集処理手数料納付券を貼ってください!
納付券はコンビニで買えますからね!!
とっとと買ってきてください!
…ちょっと!ここに置きっぱなしにしないでくださいよ!!
持って帰ってください!!
・・・ちょっとあなた!困りますね!!
これはお金じゃないですか!!
ちゃんと使ってください!!!
使いきれない?
使い切るのが常識でしょう!!
使い切れないほどお金を稼いで、何無駄な時間過ごしてるんですか!!
使えないならいらなかったものじゃないですか!
あなた頭悪いんじゃないですか?
時間はお金じゃ買えないって常識、欠落してますね!!
全部責任もって使ってください!!
・・・ちょっとあなた!!困りますね!!
これは思い出じゃないですか!!
ちゃんと思い出してください!!
思い出したくない?
自分が経験した記憶じゃないですか!!
思い出すのが当然でしょう!
辛くて思い出したくないといいますか。
では思い出がなくなったら、辛いという感情が消えてしまいますがいいんですね?
また同じような悲しみが襲ったとき、また同じように辛くなってここに捨てるんですか?
何度捨てるつもりですか?
悲しみをきちんと消化しようとは思わないんですか?
…分かりました。
どうしてもいらないというんですね。
お引き取り致しましょう。
・・・その代わり。
あなたから後悔の二文字を取り上げます。
あなたは今後、後悔をすることができなくなります。
やりたいことをやって、失敗した時に、自分を誇るようになります。
いいですね?いいんですね?
やりたいことをやらない選択ができなくなりますよ。
いいんですね?
…お引き取り致します。
・・・ちょっとあなた!!!困りますね!!!
これは夢じゃないですか!!!
これを捨てるなんてとんでもない!!!
夢がなくて何を糧に生きていくつもりなんですか!!
やりたいことはないんですか!!
すべてやりつくしたとでもいうんですか!!!
やりたいことが見つからないというんですか!!
まだ見つかってないことに気が付いていないだけじゃないですか!!
見つかるまでの時間を味わい尽くしてもいなくせに何言ってるんですか!!!
…夢を持つことが、できないというんですか。
では、この夢は?
今あなたが捨てようとしているものこそ、あなたの夢だという事に気が付いていないだけじゃないですか。
あなた、この夢がなんであるのかさえ分かってないのに捨てるんですか?
バカなんですか、そうですか。
…分かりました。
どうしてもいらないというんですね。
お引き取り致しましょう。
・・・その代わり。
あなたから、悪意を取り上げます。
あなたは今後、悪意を持って行動したり考えたりすることができなくなります。
あなた耐えられますかね。
夢を持たずに、善意の塊でいることができますか?
いいんですね?いいんですね?
善意を振りまいて返してもらった愛にさえ、希望を持てなくなるんですよ?
夢を手放すという事は、望むものが何一つなくなるという事なんですよ?
…捨てるのやめますか、それは重畳。
・・・ちょっとあなた!!困りますね!!
これは時間じゃないですか!!
ちゃんと過ごしてください!!!
人が人である時間を、何放棄しようとしてるんですか!!!
生まれてきた意味、分かってるんですか?
時間を捨てるという事は、ゼロになるという事なんです!!
あなた「0」と「1」の違い分かってます?
ないものとあるものの間には、乗り越えられない境があるんです!
あなたまさか「0」と「0.00000000000000000001」が近いものだとか思ってませんよね?
全然まるで近くないって事実に気が付いてない人が、時間を捨てるとかふざけないでください!
あるかないかで、まるで違う、その事実にすら気付かないくせに何言ってるんですか。
どうしても捨てるというのですか。
・・・そうですか。
それではあなたから、自由を取り上げます。
「1」の中で過ごしているあなたたちは、「ゼロ」の中の私たちに気が付けません。
なぜなら「1」があるからです。
時間は「1」の中でしか流れません。
「1」を捨てたらあなたは止まる。
それはすなわち、自由をすべて失うという事。
それでも捨てるといいますか。
…わかりました。
・・・じつはね。
私も昔、時間を捨てたんですよ。
そして、ここに、いるんです。
「ゼロ」に持ち込まれた不用品を受け取りながら。
「1」を手放さなければよかったと後悔をして。
捨てられたごみの悪意にさらされここに囚われていたのです。
あなたは。
ほんとうに。
時間を捨てますか?
…分かりました。
私から仕事を取り上げるという事ですね。
最近ごみに紛れてしまって、自分というものをすっかり失くしてしまいましてね。
収集したものにね、引きずられちゃうんですよ。
本当の自分がね、どこかに行ってしまったんです。
私、それを探しに行きたいと思っていたんです。
私は懐かしい「1」の世界に行くことにします。
・・・ああ、そうですね、何かお渡ししないといけませんね。
自由をくださるあなたに・・・私が渡せるもの。
あなたには、感謝の言葉を差し上げますね。
「ありがとう。」
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