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こわいはなし【ショートショート】

「ねえねえ!怖い話してよぅ!!」

キッチンで絶賛晩御飯調理中の私のもとに、息子が突撃してきた。

このところ、小学五年生の息子は怖い話に興味がある模様。怖い話を聞いて、それを学校で友達に聞かせて、怖がらせることに夢中なのだった。…なんという悪趣味な。誰に似たんだ。

「いいよ、よく聞いてね。『悪の十字架』あるところに怪しげなお店がありました。ドアはいつも、しまっています。大きな十字架のデザインされた、重厚なドアは開く気配を見せません。少年は、そのドアが開く時をずっと心待ちにしていました。そこに、背の曲がったローブを着込んだ鼻の長い魔女が現れました。少年は魔女に問いかけました。「この店は、いつになったら開くのですか!!」「十時だよ」ばたん!重厚なドアが閉まってしまいました。少年は、自分の腕時計を見ました。九時半です。「あくの、じゅうじか…」少年は、三十分待ったのち、ようやくお店にはいれたという事です」

息子が何やらおかしな顔をしている。愉快な子供だ。

「ちょっと!!怖くないじゃん!!!」

「なんだ、じゃあ別の話、よく聞くように。『恐怖の味噌汁』ある日、お母さんがぶつぶつ言いながら、鍋をかき回していた。何を言っているのか、聞き取れない。いつもの優しいお母さんの顔が、なんだかとても怖い。この人は、本当にお母さんなんだろうか。心配になった僕はお母さんに声をかけた。「お母さん、何を作っているの」「おいしい、みそ汁よ」嘘だ!!見たこともない怪しげなものが表面を覆っている!!「これは、本当に、みそ汁なの?」「ええ、今日、ふの味噌汁なのよ」「きょう、ふのみそしる・・・?」初めて食べた、ふのみそしるは、恐ろしく美味かったという事です」

息子が何やらおかしな顔をしている。見てて飽きない子供だ。

「ちょっと!なにそれ!!!」

「なんだ、お気に召さない?じゃあ最後ね、よく聞いて。『悪魔のぬいぐるみ』ミカちゃんには、大事に大事にしているぬいぐるみがありました。けれど、汚れてしまったので、お母さんが捨ててしまいました。ミカちゃんは泣いて泣いて、お母さんにいいました。「ぬいぐるみがないと、寂しくて眠れないの。新しい子を買ってほしいの」お母さんは、ミカちゃんのために、新しいぬいぐるみを買ってきました。袋に入った新しいお友達を、そのままミカちゃんに渡しました。「あけていい?」「どうぞ、かわいがって、あげてね……?」袋を開けると、中から可愛いかわいいぬいぐるみが出てきました。「あ、くまのぬいぐるみ!!」おしまい」

息子が何やらおかしな顔をしている。表情豊かな子供だ。

「もう!!全然怖くないやつばっか!!」

「いや……だって、怖いの聞いたらさ、君寝れなくなるよ、ホント。それでもいいの」

息子が震え上がった。なんだ、かわいいじゃないか。

「寝れないのは困る!もういいよ!!おもしろかったから!!!」

息子がプンプンしてリビングに行ってしまった。なんだ、面白い人だな。


いや、まあ、ねえ……。

怖い話すると、、、いろいろ怖いことになっちゃうかも、しれないでしょう?

怖くなってからじゃあ、取り返し付かなくなっちゃうかも、しれないでしょう?


……現に、今だって。


怖くない愉快な話をしただけなのに、でっかい十字架背負ったクマのぬいぐるみが、ドロンドロンの怪しげな物体入った鍋持って、ここにいるんですけれども。

さてどうするかなと思って、下を見たら、うっかりくまちゃんと、目が合った。

「食べる…?」

「頑張って作ったんだね、偉いと思うよ。ごめんね、今ご飯作っちゃってるから、おなか空いてる子の所に、持ってってあげて?」

「うん、探しに行ってみる…」

ふわりとくまちゃんが消えたのを見て、私は安心して晩御飯の調理を再開した。


ぐつぐつ煮える鍋の中には、卵。うん、もうゆで上がったな。

一気にざるに開けて、冷水につけてと。

・・・あれ、一個派手に割れてるな。食べちゃえ。

卵の殻をむいて、パクリと、食べる。

「ゆでた まごを たべる、お母さん、か」

ああ、おもしろい、おもしろい。

明日はもっと面白い話をしてあげよう。

怖い話は、しなくても、ねえ?


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皆さんの知ってるのと違うかもですが気にしないでください(。>д<)



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たかさば
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