私の仕事
……少し前に、ネットで仕事を見つけた。
完全リモートワークで出社の必要がなく、作業は非常に単純明快、しかも月末支払いという、魅力的な仕事。これはと思い応募したところ、無事採用されることになった。
仕事は、とあるサイトを一時間おきにチェックする……それだけだ。
モニターに映っている部屋の中に何人いるかを数え、ラインで報告するだけの作業。朝八時から夕方五時まで、1日に10回のカウントをし、一回1000円、一日で10000円、一ヶ月で310000円が手に入る。
報酬額としては、破格だ。
映っている人が、激しく動き回る事がある。
映っている人が、微動だにしない事もある。
映っている人が、争っている事だってある。
人数に規則性がない上に行動も一貫性がなく、カウント作業は多少骨が折れるけれど…とても割りの良い仕事だ。
たまに人が重なってしまうことがあるので、ズーム機能を使ってチェックしなければいけないが、そんな労力は微々たる物だ。
私は今まで、キツイ仕事や難しい仕事、心が磨耗する仕事にめんどくさい仕事…数多くの仕事に就いては、辞めてきた。
生きていくための金を手に入れるため、さんざん苦労をしてきた私にとって……、モニターに映る人を数えるだけの簡単な作業は、この上なく楽でストレスのないものだった。
今までの苦労が報われて、ようやく楽で実入りの良い仕事にありつけたのだと…思っている。
正直なところ、映っている人が気になる事もあるけれど……、いちいち気にしていては、仕事を続けることはできない。
私は、この仕事を辞めるつもりなど、毛頭ない。
……この、楽な仕事があれば、私は生きていけるのだから。
映っている人を、気にするわけには、いかないのだ。
映っている人を、気にしてしまっては、いけないのだ。
なぜ、人を数えるのか…。
なぜ、人は泣いているのか…。
なぜ、人が助けてと叫んでいるのか…。
私は仕事に対して、『なぜ』と言う疑問を持つべきではないと、結論を出している。
与えられた仕事はただの対価を得るための作業に過ぎず……、時給1000円の、わりの良い仕事、ただ、それだけだからだ。
長く、長く給料を得るために、私は与えられた仕事を淡々とこなしていく……。
ただ、それだけのこと、なのだ………。