実は私、神様なんですよ。
やあやあ、こんばんは。
このところずいぶん暑い日が続いておりますが、お加減はいかがですか。
こうも暑いとですね、フル装備での外出がきついんですよねえ。
黒い衣服というのは、ホント無駄に熱を集めてしまいましてですね。
白い服に身を包んでみたものの、あまりに不似合いでね、久々に大人泣きしちゃったんですよ、ええ。仕方ないんで時折、冷たい麺類ずるずるしながら、頑張っているんですよ。キュウリ、美味いですよね…。
わたくし、紹介が遅れてることに只今気が付きました。
わたくしは、黒い人などと呼ばれてます。その呼び方はなんだかちょっといただけませんねえ。
実は、わたくしはですね。
神様、なんですよ。
現代の世界にも、神様というものはしっかり存在しているのですよ、はい。
わたくしは、人の希望を叶えたり、人の悪事を引き留めたり、人の運命をいろいろと操作してみたり…それは、神様と言っていいとおもうんです、ですから、神様を自称しているわけなんです。
…なにやら訝し気な表情をなさるのですね。
フウム、人というのは、自らの知らぬ何かを受け入れる際にまず疑ってかかるもの、でしたね。なるほど。…それでは、お一つ、わたくしの力をお見せしようではありませんか。
…はい、いいですよ。
あなた、たった今、この世界に戻ってきました。
ええと、あなたはですね、ずいぶんな人生を送ってきたんですけど…忘れちゃったみたいですね。やっぱり、ただの人では、世界を渡るときに記憶が剥がれてしまうみたいですね、選ばれない人の異世界転生は無理があるなあ…。
ああ、説明が遅れましたね、ええと、あなたはさっき、異世界転移して、世界を何も変えずに寿命でこっちに戻ってきたんですよ、はい。私が神様である証拠を見せようと思ってね、転移してもらって、あっちで一般人として暮らして、寿命でお亡くなりになったんで、こっちに戻ってきたんです。
あちらであなたはかなり私のことをクソ神とか言ってましたね、私気付いてましたよ、だからあなたには何一つチートを差し上げなくってですね、ええ。でも地球の一般常識があるから、結構普通に生きていけたでしょって覚えてないかー。うーん、残念です、ええ。
まあね、魂には、異世界の記録が刻まれてるんで、いつか異世界の記憶が思い出せる時が来ると思いますよ、その時私が本当に神様だったって気が付いて、心の底から焦るが良いと思いますよ、はい。
…何やら不服そうな面持ちですね。
記憶にないことを言われて、実感が伴わないのは致し方ない事ですね。けれど、私は確かにあなたを異世界に転移させたので…。ああ、異世界転移ではなく、ほかの事で神様であることを知らしめろというのですね。
では…あなたに幸運を授けましょうか。
あなたは、来月から今まで以上にツイてきますよ。
今月までのあなたと、来月のあなたを比べてみるとよいでしょう。来月の終わり、あなたは私が神であったと、思えるはずです。…あなたが、このことを覚えていれば、ですけどね。
来月の終わり、あなたは私に対してどんな感想を持つでしょうかね?
何も変わらなかったと思いますかね?
ひどい目にあったと思いますかね?
あまりいいことがなかったと思いますかね?
すごく良いことがあったと思いますかね?
幸運を授けなかったら、あなたはどうなっていたかなんて…あなたは知る由もないですからね。
何かあったはずなのに、何もなくて済んだこととか。
ひどすぎる目に合うはずが、ひどい目で済んだとか。
良いことがないはずが、ちょっとだけ良いことがあったとか。
ちょっとしたうれしいことが、すごく良いことになったとか。
そういう変化に、気が付けないから…あなたはただの、人なんですけどね。
・・・私は、神様ですから。
そういう、忘れっぽくて気が付けないところに、人としてのかわいさを、見出していたりするんです。…少しくらいのクソ神様呼ばわりはね、軽くスルーさせていただきますとも。わたくしは、ずいぶん、心がでかいのです、はい。
ただし…あまりにも不敬な場合は、また異世界にぶち込む気、満々ですのでね。次は手厳しい世界にぶち込むかもしれませんけどね?…まあ、わたくし、優しいですから、ええ。
感謝の気持ちがわたくしのもとに届きましたら…またあなたの前に、姿を現すかも、知れません。
…とりあえず、1か月間、ちょっとした幸せをかみしめて、お過ごしください。
小さな幸せに、気が付ける人に、なってくださいね。
…この物語に隠した、わたくしの意図に気付けると良いですね。
また会えると、いいですね。
では、ごきげん、よう。
とんでもねえ、あたしゃかみさまだよ!
↓【小説家になろう】で毎日短編小説作品(新作)を投稿しています↓ https://mypage.syosetu.com/874484/ ↓【note】で毎日自作品の紹介を投稿しています↓ https://note.com/takasaba/