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季節のかわり目につき
このところの体感気温の急上昇に、戸惑いを隠しきれない。
まさに季節の変わり目真っ只中…、大混乱がハンパないと言いますか。
確か先々週までは、冷蔵庫の中と朝一のキッチンの温度が同じだったはず。
二週間前までは、常温保存のラードが硬くて絞り出すのにヒーヒー言ってたような。
先週までは、朝一でファンヒーターのスイッチを入れていたんだけども。
確か今週頭までは、ダウンジャケットなしでは外出できなかったと思う。
三日前まで、寝る前に電気毛布のスイッチがつけっぱなしだったことに気が付いては、うわあああん電気代がアアアア!ってなってたはずで…。
「今日は息が白くない。」
「もう春だからね。これからどんどん暖かくなるよ!空もどんどん爽やかにブルー化していくし!!」
毎朝真っ暗な街中を歩いて向かっていたはずの公園までの道のりも、いつの間にかずいぶん明るくなっている。
毎日朝六時に家を出て近所の公園までウォーキングをしているので、日の出の時間の変化にはかなり敏感だったりするんだよね。
息子とともに晴れ渡る空の下を歩きつつ…季節の移り変わりをしみじみと感じてみたり。
そうだなあ、間もなく春…、生きとし生ける者たちが寒さで縮こまっていた季節は過ぎ去ろうとしているのだ。
さらば、冬。
ようこそ、春。
冬さんバイバイ!
春さんおひさ!!
今年はどこに桜を見に行こうかな。
近所の公園巡りもいいけど、桜の名所も捨てがたい。
某公園は出店が多いから絶対行きたいでしょ、某お城の公園はジャンボ三色団子があるから絶対行くでしょ、某川縁は桜筏が見事だから絶対に行きたいし、市役所の上から見下ろす市民公園の景色は毎年欠かさず見に行ってるから…!!!
「寒くなくて、暖かくないね。」
ニコニコしながら空に向かって手の平をフリフリ、気温を確認している息子がつぶやいた。
…そうだな、確かに、暖かくは、ない。
…そう、寒くないのだ。
なんというか…ぬるい?
いや、ぬるくすら、ない。
早朝は、日中と違って太陽の光の恩恵もまだ貧弱で…体感温度こそ極寒ではないものの、ポカポカとした陽気のようなものは感じられないというか。
ピリリと引き締まるようなキンと張り詰めた低すぎる気温は存在しないけれども…半袖で外を出歩くには、まだ早いのだ。
ここで冬物をしまいこんでは、おそらく昨年同様着るものに困ってしまう。
ホント毎年この時期は、どうも暑かったり寒かったりが急転直下過ぎて振り回されちゃうんだよね。
昨日なんか電気毛布つけて寝たら暑くなっちゃって夜中に蹴っちゃって…寒くて目が覚める事になっちゃってさあ!!
寝るときに電気毛布が必要なくなろうとも、五月くらいまではいつでも使えるよう準備をしておかねばなるまい。
ここで電気毛布を洗ってしまいこんだら、おそらく昨年同様押し入れの奥から引っ張り出す羽目になってしまう。
電気毛布をしまいこむには、まだ早い時期なのだ
…そうだな、まだ春には、なっていない。
一見暖かそうに見える朝一の陽だまりは、まださほどぽかぽかと身を温めたりはしないのだ。
風の吹く場所ではそれなりに気温の低さを感じるし、冬はまだ過ぎ去ってはいないのだと、思い知らされる。
「は、は、はくしゅん!!」
ああ、でも花粉はしっかり飛んでいるから、春といえば春なんだよなあ。
毎年大体、日差しを浴びても寒くて凍える時期が過ぎたあたりからくしゃみが止まらなくなるんだよ。
そうだな、日差しが暖かいなと思ったころに、ローションティッシュを六箱買い込むんだった。
今年はちょっとだけくしゃみが出始めるのが遅い気がする。
いつもならローションティッシュを買いこむ前に安いティッシュで鼻をかみすぎて皮膚がカザカサになってるはずで…。
……よし、今日買いに行こう、カサついてからでは遅すぎる。
ポケットティッシュをヒップバッグの中から取り出して、鼻をかみかみ今日するべきことを脳髄に叩き込む…。
ドラッグストアでティシュボックス買うでしょ、空気清浄機のフィルター掃除するでしょ、花見情報チェックするでしょ、イチゴ狩りの予約入れるでしょ、ええとそれから……。
「風邪?」
「いや、花粉だね!毎年この時期はもうね…あーヤダヤダ、早く家帰って空気清浄機の前で深呼吸しよ!!」
くしゃみってのは、一回出だすとどうにもくせがつくというか、なんというか。
公園でラジオ体操をしている間も、公園内を歩いている間も、何度もくしゃみが出てしまって…ウーン、鼻の下が少しひりひりするぞ。
ウォーキングの帰り道も、何度も派手に飛沫を飛ばしつつ、自宅へと急ぐ。
…少しうす雲がさしてきた、ひょっとしたら雨が降るかも?
心なしか気温が下がってきた気がする。
「やっぱ寒いね、まだまだ冬は明けていないな…うう、さっきまで日が出てたのにちっとも暖かくないよ…」
「そう?」
…やっぱり太陽が引っ込むと一気に気温が下がるな。
少し風が吹いてきたから、余計に冷たさを肌に感じるというか。
「ふー、さむっ!家帰って温かいスープでも飲も…」
急いで帰宅したものの、すっかり冷え切ってしまった私の体はスープ一杯くらいじゃ温かくなりませんでね。
「すごい冷え込みじゃん、ヤバイ、ファンヒーター付けよ…」
帰宅するなり、凍えた体をヒーター吹き出し口のどまん前に置いて暖を取る私…。
「ちょ、なんかこの部屋めちゃめちゃ暑くない?!」
「いや、外が寒すぎてさあ…はっくしゅ!!」
朝風呂から出てきた素っ裸の旦那が何やら文句を言っている…そりゃあお湯から出たあとは暑いでしょうよ。
こちとら外から帰ったばかりで…くしゃみも出るし鼻は垂れるし、なんか鳥肌も立ってきたぞ、心なしか震えが……。
「熱すぎる。」
「そう?全然暖まってこないけどな、…はくしょん!!」
息子が赤い顔をして…うん?上着を脱いでTシャツ一枚になったぞ、寒くないのかね。
こちとらくしゃみのし過ぎと鼻のかみすぎで、頭も痛くなってきたというのに…。
「なんか顔が赤いよ?熱あるんじゃないの!!」
「計ったほうがいい。」
息子に体温計を差し出されて、しぶしぶ計ってみると…げえ!!
38. 2度ある!!!
そういえばなんだか背中がぎしぎしする、心なしか肩の関節も腰もしばしばと痛むような…。
しまった、私は普段からわりと体温高めで、発熱していても平気なタイプがゆえに、いきなり動けなくなってしまうパターンがですね!
そういえば去年もこんな感じで、春早々に風邪を引いてしまって…せっかくの出店めぐりが、鼻が利かなくって味がわかんなくてめちゃめちゃ不服満載になったような覚えがあるぞ。
風邪が治りきっていないのに花冷えのさなか出歩いて、新たな風邪を引いてひどい目にあったんだった…。
「ごめん、熱あったわ…残念だけど、春休みの大掃除はちょっとできそうにない、悪いけど皆さんで頑張ってください、私はもう寝ます、だって熱あるし…うーんなんだか頭も痛い、食欲もないな、お昼は皆さんで食べてきてくださいね、ではごきげんよう…。」
暖かいパジャマに着替え直して、風邪薬の瓶を手にキッチンに向かう私……。
「なんでこんな時に!!今日はガレージの大掃除するって言ってたじゃん!!狙って風邪ひくのやめてよ!!!」
「ええ~マジで!!ゴミ出しめっちゃあるのに!!!てゆっか昨日薄着してたのがいけないんじゃん、だから着ぐるみ着とけって言ったのに!!」
「無理しないで。」
今日は前々から計画していた年度末大掃除をする日だったんだけどさ、熱が出ちゃったら無理するわけにはいかないのでね。
掃除は元気いっぱいの皆さんにお任せしましょうね、残念だけど…。
ブーブー文句を垂れる旦那と娘を見送り、私はそそくさと寝室へ。
風邪から回復した際には、優しい事を言ってくれた息子に大好物のキノコ鍋を作ってあげよう…。
そう心に決めて、ペットボトル片手に寝室に引っ込み、ぐうぐう休ませてもらったわけですけれども。
「ちょ…何これ!!!なんでこんなにピザ頼んでんの?!何お菓子広げてるの?!誰!!焼きそば箱で買ってきたのは!!…ちょっと待て、この資金はどうした、…なんで私の財布が机の上に転がってんのさ!!!」
夕方、小腹が空いてきたなと思って下に降りていくと、なんとなく整頓されたリビングで…とっ散らかしてパーティーを開いている奴らがああアアアア!!!
でかいピザの箱が三つにバケツに入ったチキン、1リットルのアイスにペットボトル各種、パンパンにもののつまったレジ袋にテーブルの上に食べかけのスナック菓子とチョコのお菓子、ソファの向こう側に隠すように置いてあるのはカップ麺の箱が二つ!!!
「ごめーん!ピザ代足りなくなっちゃったから借りた―!」
「お母さんも食べなよ!ピザの耳美味しいよ!!!あとアイスもでかいの買ってきたし、ケーキもある!!」
「食べられる?」
せっかく下がった熱が、怒りのあまりまた上昇してしまったわけですけれども!!!
翌日にはすっかり元気になってですね!
週末には、無駄に買い込まれた食材を使って大量にお弁当を作り、それを持って花見を楽しんできたというお話ですよ…。
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