【300文字でわりとコワイ】11~15
300文字以内で書いた、ちょっと心臓がキュッとなる物語です。
VOICEVOX:春日部つむぎ の朗読ショート動画もあります。
この記事の最後にあるYouTubeチャンネルリンクから飛べます(*'ω'*)
邪魔な荷物
早朝七時、イベント会場に向かうために電車に乗ると、信じられないくらい混んでいた。
世のサラリーマンたちはこんなにも過酷な環境の中に身を置くのかと驚愕する。
のほほんと暮らす自分には馴染めそうもない世界だ。
駅員にぎゅうぎゅうと押されながら電車に詰め込まれると、足元になにかがある事に気が付いた。
明らかに邪魔になっているのに、誰も文句を言わない事に驚く。
…みんな、大人なんだな。
俺が声をあげたところで、どうせ無視されるのだろう。
そう思ったとき、車内が大きく揺れ…俺は勢いよく荷物を踏んでしまった。
すると、その瞬間。
とてつもない力が、秒で爆散し。
窮屈な車内に、風が吹きこんだ。
おいしそうなアメ
おばあちゃんのおうちにあそびにきた。
おばあちゃんのおうちには、かわいいものがいっぱいあるの。
クッション、ぬいぐるみ、バッグ、アクセサリー。
おばあちゃんのしゅみはハンドメイドなんだって。
おさいほうばこをつかってぬのにまほうをかけたら、ステキなものができあがるんだって。
ユキちゃんも、まほう、つかいたい。
ナイショでおさいほうばこをあけてみたら、ちいさいアメがいっぱいならんでた。キラキラしてておいしそう!
なめようとしたらおかあさんにみつかっちゃった!
あわててアメをくちのなかにいれたら、ごくんってしちゃった。
のどのおくに、なにかが…ひっかかったよぅ。
さけんでるおばあちゃんとおかあさんがこわいよぅ……。
先生
著名な先生と対談させていただくことになった。
昔から憧れていた新進気鋭の経済評論家を前に、緊張感が凄まじい。
お年を召したとはいえギラつく目の輝きは衰えていない。
どんな話が聞けるのか楽しみでならない。
繊細な先生のご希望で、防音対策がしてある部屋をご用意した。
初めこそ紳士的だったが、徐々にヒートアップしていく先生をみて、だんだん肩身が狭くなってきた。
現代日本の闇を語るうちに若者たちへの怒りが抑えきれなくなったらしい。
目の前にいる自分までもが敵と認識されてしまった。
失礼がないよう気を使いながら頭を下げていると、先生はカバンの中から光るものを取り出した。
そして、躊躇することなく、目の前にいる敵を穿った。
振込
若い頃に借りた金を、ツレに返すことになった。
引っ越し資金の10万を借りて、そのままバックレて…五年。
けっして逃げた訳ではないが、返そうと積極的に動いた記憶はない。正直、今さらという気持ちがあるが…見つかってしまったのだから払わねばなるまい。
勤め先に連絡すると言われては対応せざるをえない。
ちょうどボーナスで11万出たばかりだ、利子もつけて指定された口座に振り込んでやるか。
ド素寒貧になった俺だったが、ツレからの電話は今だ鳴りやまない。
もしかして、詐欺るつもりか?
あまりにも振り込まれていないとうるさいので、振込済みの振込票を叩きつけてやったら『口座番号が違うんだけど』とぬかしやがった…。
大丈夫だ!
体育の授業でハードルをやることになった。
どんくささに定評のある俺は1つも飛び越えることができない。
棒高跳びで一度も飛べたためしがなく、ハードルを跳び越す事が怖くてたまらないのだ。
もし飛べなかったらケガをする、転びたくない、そんな気持ちが邪魔をしてハードルを前に立ち止まって跨いでしまう。
クラスメイト達から笑われ落ち込んでいたら、体育教師が俺の目を見て言った。
「お前は飛べる!大丈夫だ!なあに、引っかかったってハードルが倒れるだけだ、思い切って飛べ!」
体育教師の力強い言葉を真に受けた俺は、思い切ってハードルに挑んだ。
結果、右足首と左ひざ、左手首の骨折をし、一生スポーツを楽しめない身体になった。
動画へのリンク
ショート動画は月曜から金曜の17:00に
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