おかしな味
「うわ、これ化粧品の味がする!」
友人にキャンディをひとつあげたら、変な顔をされた。
どうやらローズミルクの香料が気になるらしい。
……私のお気に入りのキャンディなんだけどな、お気に召さなかったみたい。
「……なに、化粧品食べた事あるの?美味しいじゃん。」
「うーん、ちょっとムリ!」
友人は、キャンディを吐き出すとゴミ箱にポイと捨てた。
……もったいないなあ、もうあげるのはやめておこう。
「うわ、これトイレの味がする!」
友人にマドレーヌをひとつあげたら、変な顔をされた。
どうやら金木犀のジャムが気になるらしい。
……私のお気に入りのマドレーヌなんだけどな、お気に召さなかったみたい。
「……なに、トイレ食べた事あるの?美味しいじゃん。」
「うーん、ちょっとムリ!」
友人は、一口かじったマドレーヌをゴミ箱にポイと捨てた。
……もったいないなあ、もうあげるのはやめておこう。
「うわ、これタイヤの味がする!」
友人にグミをひとつあげたら、変な顔をされた。
どうやらグミのフレーバーが気になるらしい。
……私のお気に入りのグミなんだけどな、お気に召さなかったみたい。
「……なに、タイヤ食べた事あるの?美味しいじゃん。」
「うーん、ちょっとムリ!」
友人は、グミを吐き出すとゴミ箱にポイと捨てた。
……もったいないなあ、もうあげるのはやめておこう。
「うわ、これお風呂の味がする!」
友人にお茶を出したら、変な顔をされた。
どうやらジャスミンティーの香りが気になるらしい。
……私のお気に入りのジャスミンティーなんだけどな、お気に召さなかったみたい。
「……なに、お風呂飲んだ事あるの?美味しいじゃん。」
「うーん、ちょっとムリ!」
友人は、一口飲んだカップを持ってキッチンに行きお茶を流した。
……もったいないなあ、もうあげるのはやめておこう。
「うわ、これ泥の味がする!」
友人に鰻をご馳走したら、変な顔をされた。
どうやら鰻の風味が気になるらしい。
……私のお気に入りの鰻屋なんだけどな、お気に召さなかったみたい。
「……なに、泥食べた事あるの?美味しいじゃん。」
「うーん、ちょっとムリ!」
友人は、鰻を全部私の丼に移すとタレのかかったご飯だけを食べ始めた。
……もったいないなあ、もう奢るのはやめておこう。
「うわ、これ外人の味がする!」
友人にトルティーヤをひとつあげたら、変な顔をされた。
どうやらマサラの匂いが気になるらしい。
……私のお気に入りのトルティーヤなんだけどな、お気に召さなかったみたい。
「……なに、外人食べた事あるの?美味しいじゃん。」
「うーん、ちょっとムリ!」
友人は、一口かじったトルティーヤを私に差し出すと口直しにコーヒーを飲んだ。
……もったいないなあ、もうあげるのはやめておこう。
「……ごく普通の味だなあ。」
友人が、変な顔をしている。
どうやら私の事が信じられないらしい。
……私のお気に入りの友人なんだけどな、お気に召さなかったみたい。
「うーん、取り立てて語る味でもなかった。」
私は、小さな骨をペッと吐き出すとゴミ箱にポイと捨てた。
……もったいないから、全部残さず食べておこう。
大変グルメな友人は、ごく普通の一般人の味しかしなかった。
マズいマズいと言ってると、美味しいって言ってもらえなくなっちゃうよ!
※語弊ありまくり※
↓【小説家になろう】で毎日短編小説作品(新作)を投稿しています↓ https://mypage.syosetu.com/874484/ ↓【note】で毎日自作品の紹介を投稿しています↓ https://note.com/takasaba/