【短編小説】口癖。

『ねえ。なんか面白い話してよ。』

それが彼女の口癖だった。

彼女とは
大学で知り合って地元が近いことから
仲良くなった。
毎週公園でくだらない話をする
親友になった。

彼女特有の口癖を言われると
僕は、
犬に噛まれたとか、
お店のトイレに行った時ドアが閉まってなくて気まずかったとか、
ポケットに入れてたチョコレートが溶けて漏らしたみたいになったとか、
毎回僕自身にあった出来事を
ちょっとオーバー目に話す。

僕の話を聞くと、
必ず彼女は
『全然面白くないんですけどー』
と笑ってるのか
泣いてるのかわからない表情で
僕の肩をバシバシ叩いてくる。

そんなまるで犬みたいな、
ころころ表情が変わる彼女が
僕は大好きだった。

今日、彼女の口癖を聞いたら
【想いを伝える。】そう決心して
いつも待ち合わせする
公園のベンチに座って待っていた。

でも、その日は来なかった。
交通事故にあったようだ。

僕は必死になって病院に向かった。
でももう間に合わなかった。

即死だったらしい。
不幸中の幸いと言っていいのかは
わからないけど、
僕の好きだった彼女の顔は
原型をとどめていた。

もっと早く自分の気持ちを伝えたかったと
僕は後悔した。

『ねえ。起きてよ。
僕は君のことが好きだったんだ。』
僕は、彼女の頬をさわりながら、
今にも動きそうな綺麗な顔をした彼女に
話しかけた。

彼女は動かないけど、
なぜか、全然面白くない!と
言われたような気がした。
そしていつもの笑い声もどこかからと
聞こえてきた感じがした。

その瞬間自分の目から一滴の水が頬を伝った。
これが僕の人生で最後に流した涙だった。

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初めて小説を書きました。

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