風との指切りげんまん
ビューン!ビューン!ピュロロロロ!
ビューン!ビューン!ピュロロロロ!
飛ばせ、飛ばせーーー!
やっほー、ぼくは風だよ!
そう、カーテン揺らしたり、紙飛行機を背中に載せたり、雨の降る方向を斜めに変えたりするあの風!たまに台風って呼ばれて怖がられたりもするのが最近の悩み!
うーんと、今日は何のお話ししようかな。
あ、そうだ、みんなにまだ言ってないぼくの秘密の特技があるんだけど、知りたい?
だよね!知りたいよね!
もう、しょーがないなあ、君にだけ特別だよ!
でも、秘密だよ?
わかった?
いくよ、、、!
ピュロロン、ピュロロン、ピューーー!
『僕の秘密の特技は、スーッとみんなの髪の毛や服の端っこを揺らす時に、”クリエイティブの種”ってやつをぽとって置いてくこと!!!』
あーあ、言っちゃったよ。
言わない約束したのに、破っちゃった。
ウォルト・ディズニーも、葛飾北斎も怒ってるかも。あ、ココ・シャネルにも叱られちゃう、怖いなあ。
だって、みんなぼくの “クリエイティブの種”に気が付いて拾ったのがきっかけで有名になったんだからな。そう、だから君がディズニーに行った時とか、富嶽三十六景に感動した時とか、シャネルのバッグもらった時は、ぼくにありがとうって言ってくれてもいいんだよ?
でも、こんな秘密知られたらほんとに大変なんだから、絶対に、絶対に、絶対に秘密だよ。
指切りげんまん、嘘ついたら、洗濯物飛ーばす、指切った!
フウ、これで安心。
ここまで言っちゃたから、いっそのこと“クリエイティブの種”のことも教えてあげる。
“クリエイティブの種”は、ぼくは誰にでも全員にそばを通るときにぽとって落としていくの。だからね、僕は今も、、、ほらっ!こんなにたっくさん種を持ってるんだ!!
多すぎてうっかり犬の前に落としちゃったこともあったんだ。その犬は種に夢中で目の前の棒に気が付かなかったんだろうね。その年に「犬も歩けば棒に当たる」ってことわざが生まれたよ。ミスが言い伝えられて世の中に残ってしまうってなんか嫌な気分。
でも、たいていはちゃんと人のそばにぽとって置いてくよ。まあ、みんなその種に気が付いてくれないんだけどね。スマートフォンを眺めていたり、遅刻しそうって早歩きしてたり、頭の中がストレスの黒さに埋め尽くされたり、って時にはみんな種を踏んでいくんだ。
ぼくの種に気が付くのは、ふとしたその時だよ。
イチョウの木の黄色に秋を感じるあの瞬間、散歩に行こうと「行ってきます」を言ったあの瞬間、夕空を美しいと思えたあの瞬間に、人はぼくの“クリエイティブの種”を見つける。
拾って、水をやって、花を咲かす。そしてこの種の役目は終わるんだ。
そう、だから僕が近くを通った時は、この話を思い出してね。もっとぼくを感じて。そして、いつか綺麗な花を咲かしてね。
あ、ぼくもう行かなきゃ!!
指切りげんまん、忘れちゃだめだからね。ぼくと君との秘密だから!!
またね!
ビューン!ビューン!ピュロロロロ!
ビューン!ビューン!ピュロロロロ!