【漫画原作】「レイニー・タウン」第2話脚本

★第2話本文★


〇1話目の続き・宙の部屋

宙「あの女が病院を出た後、僕は尾行した。帰宅した家の玄関から、今夜と同じ風貌の、天空寺星が出てきた。二人は間違いなく親子だ」

亮M『天空寺星は、世間の噂通り、宙の妹だったのか?』

亮「ん……つまり、愛人の娘が本家の兄貴に会いたくて、漫画家の道を選んだ」「となると、普通のファンよりもディープだな。そんな健気な妹ちゃんを、復讐の道具にできるのか?」

宙「兄だと慕われているのだとしたら、鳥肌が立つ。寒気がする。気持ちが悪い」「しかし、向こうから近づいて来たのは、幸運だったよ。蜘蛛の巣にかかった蝶と、同じだね」

亮「俺が蜘蛛か」

宙「そして蝶は、跡形もなく食べられる」

亮M『相手が星であれば、話は別だ。単行本1冊700円だとして500万部の印税は3億5千万円。半分税金で持って行かれたとしても、単純計算で1億7千万円以上残る』『星から1億だけもらって、蜘蛛の巣から逃がせばいい。その頃には宙も正気に戻っているはずだ』
亮「わかった。宙の復讐を手伝うよ」

宙「ありがとう。やはり亮は、僕の大親友だ」

亮の顔がニヤける。1億円の札束を想像している。
亮「そうと決まれば、色営(色恋営業)スタートだ。夜が明けたら、星に今夜のお礼をしよう。連絡先を教えて」

宙「連絡先は交換していないんだ。真美子さんに聞いておくよ」

亮M『真美子か。すっかり忘れていた。今夜俺がターゲットにした太客候補だった』
亮「OK」

亮はソファーから立ち上がり、窓越しに新宿の街を見下ろす。雨は上がり、夜が開け始める。
亮M『空が明るくなり、街のネオンと同化する。色で例えると淡いグレーだ。俺は嫌いではない、この無彩色の世界が』


〇翌日の昼過ぎ・亮の自宅(インテリアが凝っている洒落た部屋)
・寝室で亮が目覚める(裸で寝ている)
・スマホを見ると宙から星の連絡先が届いている

亮がベッドの上で、星にラインを送る。(丁寧な文面)「天空寺星先生 ムーンライト・ルージュ支配人のアキラです。突然のライン、失礼いたします」「昨夜のお礼がしたくて、真美子さんから連絡先を聞きました」「昨夜はご来店、誠にありがとうございます」「来週の金曜、店でヒロトのバースデーイベントがあるのですが、取材に来ませんか?」「シャンパンコールが飛び交って、楽しいですよ」

亮「さて、次は真美子に送るか」
亮が真美子にラインを送信する。「真美子さん、アキラです」「昨夜は素敵な時間をありがとう」「またいつでも遊びに来て」「待ってるよ」

すぐに既読がつき真美子から返事が届く。「アキラさん、真美子です」「昨夜は楽しかったわ(絵文字のハート)「来週の金曜日に行ってもいい?」「早くアキラさんに会いたいわ」

亮「んー。来週の金曜日は困る。星を誘ったヒロトのバースデーイベントだ」
亮が真美子に返事を送る。「俺も、早く真美子さんに会いたい」「来週の金曜日まで待てないよ」

すぐに既読がつき真美子から返事が届く。「わかったわ。火曜日に行く(絵文字のハート ×3)」

亮が真美子に返事を送る。「嬉しいよ」「火曜日が待ち遠しい」

すぐに既読がつき真美子から返事が届く。「(絵文字のハート ×5)」

亮がスマホをベッドの上に投げ捨て、部屋を出る。(鍛え上げられた肉体美)
亮が寝室を出た後に、星から返信が届く。

亮が洗面所で顔を洗い、寝室に戻る。スマホを手に取り、ニヤける。
星からの返事「アキラさま 天空寺星です。こちらこそ、ありがとうございました」

亮「ん? これだけ?」
亮が落胆して、再びスマホをベッドに投げ捨てる。クローゼットから着替えを取り出し、服を着る。

星からの新着が届く。
亮がスマホを覗き込み、すぐに開封する。
星からの返事「お誘いありがとうございます。ちょうどシャンパンタワーが見たかったので、金曜日、取材に行かせてください」「ヒロトさんにもよろしくお伝えください」

亮「よし!」
亮がガッツポーズを取り、星に返事を送る。「星先生、早速のお返事ありがとうございます」「それでは金曜日、お待ちしております。アキラ」

亮「さて、どうやって俺に惚れさせようか」
亮が嬉しそうに鼻歌を歌う。


〇火曜日の夜・『ムーンライト・ルージュ』で真美子が亮の接客を受け、喜んでいる。

真美子「ボトル、入れちゃおうかな」「何がいいかしら?」
真美子が周辺のテーブルを眺める。イルカが泳いでいるボトルを見つける。
真美子「あれがいいわ」

亮「ドルフィンですね」

真美子がメニュー表を開いて金額を確認する。ドルフィンは40万円。高額なので迷う真美子。ボトルの色はカラーバリエーションがある。

亮が真美子の手を握る。
亮M『真美子には、破産しない程度に貢いでもらおう。それに、宙と星を結ぶ大切な女だ。無下にはできない』
亮「ピンク色はいかがですか? 華やかな真美子さんに、よく似合う」

真美子がウットリとした表情で亮を見つめる。
真美子「うん。それにする」
真美子が満面の笑みで、亮の指に自分の指を絡ませる。亮が微笑む。

ピンク色のドルフィンがテーブルを飾り、はしゃぐ真美子。

〇真美子が会計をする。

〇亮が真美子を見送る。


〇金曜日の夜・『ムーンライト・ルージュ』でヒロトのバースデーイベントが行われている。

店内はヒロトに招待された太客(優良客)たちで賑わっている。客同士がライバルであるため、高級シャンパン合戦が繰り広げられる。
アナウンス「アルマンドゴールド、頂きました!」
アナウンス「こちらはドンペリピンク、入りました!」
続け様にシャンパンコールが響き渡る。

星が、前回とほぼ同じ風貌で来店する。黒いパンツがロングスカートに変わっている。
黒服が、前回と同じ店内で一番目立たない席に、星を案内する。

星の隣席の客が、ヒロトの顔写真が刻印されているオリジナルシャンパンを3本入れる。
アナウンス「オリシャン3本、いただきました!」
袴姿でオシャレをしているヒロトと、店内のホストたちが、星の隣席に集まる。
シャンパンコールが始まる。
コールの最後に隣席の客にマイクが向けられる。「姫、一言どうぞ!」
隣席客が叫ぶ。「ヒロト、愛してる!」

星が隣席の様子をノートに書き留める。

隣席が落ち着いた頃合いに、亮が星のテーブル脇に到着する。
亮「星先生、ご来店ありがとうございます」「ちょうどこれから、ヒロトのエース(一番売り上げに貢献している客)が大きなシャンパンタワーを建てますよ。今日のメインイベントです」

星のテーブルからよく見える場所に、お洒落なデコレーションが施された10段のシャンパンタワーが準備されている。
ヒロトとヒロトのエースである愛莉が二人並んで、シャンパンタワーにシャンパンを注ぐ。
大盛り上がりの店内。

シャンパンタワーが終わり、ヒロトと愛莉が、愛莉のテーブルに戻る。サプライズで愛莉が、ルイ十三世のボトルを準備している。
喜ぶヒロト。ルイ十三世にキスをする。

愛莉が得意気な表情を浮かべる。
愛莉M『私は絶対的なヒロトのエースよ』

亮「星先生も、シャンパンコールをしてみますか?」

星が左右に首を振り、誘いを断る。

亮が苦笑いをする。
亮M『俺のシャンパン売り上げは、ゼロか』
亮「シャンパン以外で、何か欲しいものは、ありますか?」

星が斜め横の隣席の客のテーブルに並ぶ、ガラスの靴を指差す。

亮M『何だ。1本たった5万円の、飾りボトルか』
亮は落胆するが、表情には出さない。
亮「シンデレラ、ですね」「中身はブランデーなので、お酒が飲めない、星先生には、飾りボトルになってしまいますが、よろしいですか?」

星が頷く。

亮「色は9色あります。どれがお好みですか?」
亮がメニュー表を開いて、星に見せる。

星が全ての色を指差さす。

亮(驚きながら)「全部、ですか?」
星が頷く。

亮が黒服を呼ぶ。
アナウンス「シンデレラ、全色(コンプリート)入りました!」

亮M『合計45万円。真美子に勝ったな』
亮がニヤける。
星のテーブルに、9色のガラスの靴が並ぶ。「オールコール」(高額の酒を入れた客に行うお礼のパフォーマンス)はしない

〇亮が星を店外まで見送る。

亮M『今日は、色営(色恋営業)まで行けなかったな。星を俺に惚れさせるのは、時間がかかりそうだ」「顔も声も全くわからないから、このアキラ様でも苦戦する』

亮「星先生、ヒロトのバースデーイベントの取材は、しっかりできましたか?」

星(声を出して)「はい」

亮「それは良かった」「ん!?」
星が急に喋り出したので、驚く亮。

続け様に、星がスカートをめくり上げる。
亮「えっ!?」
亮の目が、星の右足に釘付けとなる。

星の右足の、ふくらはぎから太ももに刻まれた、大きな火傷の跡。

星が持ち上げたスカートを下ろす。
星「りょう兄ちゃん。私だよ」

亮の表情が固くなる。
亮M『りょう(亮)兄ちゃん?』『何で俺の本名を知っている? 宙でさえ知らないのに』

亮【回想】
幼い少女の後ろ姿。
少女が振り向いた。
「りょう兄ちゃん」
美しい少女が微笑む。
少女の右足には、大きな火傷の跡が刻まれている。
【回想終わり】

亮「……キララ、か?」

星が、帽子とサングラスとマスクを外す。美しい顔が露わになる。
星「そうだよ。私、キララだよ」

亮と星が見つめ合う。

2話目ここまで。

★前後へのリンク★

【第1話はこちら】

【第3話はこちら】


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