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千寿子さんの“最期”の迎え方

千寿子さんの「お墓参りをしたい」という願いに、どこか戸惑い、避けようとしていた私たちスタッフ。

死を口にすること自体が“縁起でもない”と感じてしまい、真剣に向き合えない自分たちがいました。

死はどこかマイナスのイメージが強く、避ける話題であることを私たちが持っていたからです。

しかし、千寿子さんの願いに込められた本当の意味を知ることで、私たちの考え方を大きく変えるきっかけになりました。

⚫︎死をどう捉えるか

死をどう受け止めるかは、人それぞれ、宗教や文化によって異なります。

例えば
•仏教:輪廻転生を信じ、死を魂の再生と考えることが多い。
•キリスト教:死後に天国での永遠の命を信じる希望。
•イスラム教:神への帰還とされ、死は新たな世界の始まり。
•日本の伝統的な価値観:ご先祖様との繋がりを大切にし、墓参りを重視する。

千寿子さんの願いも

この“ご先祖様との繋がり”が根底にあったのではないでしょうか?

⚫︎千寿子さんの「最期のわがまま」

千寿子さんは、白血病を宣告されたのは80代後半で、積極的な治療を選ぶことはせず、しばらくが自宅で過ごされていました。

しかし、「家族に迷惑をかけたくないから」との思いもあり入所
他の利用者様との会話では、「ここを選んだのは私。ここでどう過ごすかが私の最期のわがまま。」と言われてました。

その“わがまま”の一つが、故郷・京都のお墓参りだったんです。

「お墓に行って、ご先祖様にちゃんと挨拶をしておきたい。私がここでお世話になることを報告したら、自分の命を楽しみたい。」

その言葉には、死を迎えることへの覚悟と同時に、命を全うすることへの前向きな思いがありました。

⚫︎千寿子さんの願いを叶える準備

私たちは、千寿子さんを含めて、家族や医療・介護スタッフと話し合い、千寿子さんの想いを共有し計画することに

しかし、その間にも病状は悪化し、体力も徐々に低下。

お墓参りを実現することは、簡単ではありませんでした。

それでも、千寿子さんの強い意志を支えたいという思いで、スタッフ一同で計画を立てました。

・千寿子さんの願いを叶える準備

千寿子さんが入居してから9ヶ月が過ぎる頃、彼女の体調には明らかな変化が見られるようになりました。

食欲が徐々に低下し、全体の1~3割程度しか食べられなくなり、食が細くなってきたのです。

それでも彼女の「お墓参りをしたい」という思いは変わることがありません

また、体力の低下が進み、お手洗いでの排泄が難しくなり、失敗することも増えてきました。

これを受けて、千寿子さんの希望により紙パンツでの対応に切り替えたり、入浴時の体力消耗を考慮し、週に1回の入浴へと回数を調整するなど、日々のケア内容も柔軟に変更していきました。

その中で、果たして本当にお墓参りが実現できるのか、スタッフ間でも不安の声も多く上がりました。

「今の状態で行くと確実に悪化する」
「途中で何かあればどうすれば・・・。」
「彼女が行きたいなら全力で私たちがサポートしたらよい」など
食い違う意見もチラホラ出てくる中、ご家族から頂いた言葉がありました。

娘さまとお孫様から、「母の願いを叶えるためにありがとうございます。もし、ゆるされるなら母のわがままを実行してあげたい。私も一緒に行きますし何があっても母が望んだことなので、私たち家族も覚悟ができました」

この言葉と千寿子さんの強い想いを受け、スタッフ一同が千寿子さんの体調を注視しながら計画を立てる一方で、ご家族とも何度も綿密な打ち合わせを重ねました。

どのタイミングなら実行可能か、どのようなサポートが必要か、細部にわたって議論を重ねる日々。

彼女の体力の限界や安全面を考慮しながらも、「どうしたら実現できるか」を中心に話し合いを進める中で、スタッフ全員が千寿子さんの願いを支えたいという思いで一致し、いよいよお墓参りの日程が決定!!

千寿子さんに報告し、お墓参りの日程をカレンダーに記入しその日を待つ時間を過ごすことになります

しかし・・・。病状はさらに深刻へ

次回予告:最期の旅の結末

次回は、千寿子さんの「お墓参り」という夢がどのように実現したのか、そして彼女が教えてくれた「生き抜く力」についてお話しします。
彼女の姿が、皆さんに何か大切なことを伝えるきっかけになれば幸いです。

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