デフレでは、中央銀行の貨幣供給の効果が下がる
以前の記事で取り上げたように、
イングランド銀行の
季刊誌での解説では、
【多くの経済学の教科書】が
貨幣供給について
誤った説明をしていると
指摘しています。
一般的な説明としては、
中央銀行が保有するマネタリーベースを
供給すると、
各銀行はそれを裏付けに
貸出しを増やしていく。
その結果としては、
銀行システムで乗数倍の貸し出し
預金が形成される。
という貨幣乗数の理論です。
この説明であると、
中央銀行がマネタリーベースの
量を操作することで、
貨幣供給の量を操作できるという
ことになりますよね。
ちなみに、
貨幣供給量には、
個人や企業の保有する
現金通貨と預金通過の合計のことで、
銀行の保有する
日銀当座預金の準備預金は
含まれていません。
インフレ(ディマンドプル型)には、
民間が保有する貨幣の量
(貨幣供給量)を増えることが
必要です。
この流れであれば、
中央銀行が
マネタリーベースを
増加させれば
インフレは生じるということに
なりますよね。
ただ、説明してきたように
銀行による貸し出しは、
借り手の預金口座へ
書き出すことによって、
行われているに過ぎません。
銀行の手元にある預金は、
銀行の貸し出し能力の
制約にはならなかったですよね?
貸し出しの制約になっているのは、
あくまで借り手の資金需要なんです。
つまり、
中央銀行が
マネタリーベースの量を操作して、
各銀行の準備預金を増やしても
借り手の方に資金需要がないのであれば、
銀行の貸し出しは増えません。
例えるなら、
私は男性ですが、
女性用の衣服がいくらセール、
たとえ0円であっても、
『欲しくないしな』
となれば買うことはない
といったイメージでしょうか。
『セールにすれば買ってくれるでしょ』
というのは全てが成り立たない
というわけです。
では、話を戻して、
現在は、デフレです。
デフレは
需要<供給
となっている場合ですから、
民間に資金需要がない状態です。
つまり、
デフレの時には、
中央銀行は、
民間の銀行からの貸し出し(貨幣供給量)
を増加させることはできず、
結果として、
インフレにつなげることができない
ということになります。
もちろん、
銀行が貸し出しを行うことによって、
応じた準備預金も増やすルールがあるので、
そのパーセントの調整で、
銀行への融資活動に影響を
及ぼすことは可能です。
もしも、
民間に『借りたい!』
という需要があれば、
金融政策は有効に
機能することが期待されます。
インフレの場合は、
借り入れの需要が多くなり、
貨幣供給量が増加していますので、
中央銀行が貸し出しの抑制を
図ることができるわけです。
ただ、
デフレのように、
民間に需要がない場合には、
準備預金を増やしたとしても、
銀行の貸し出しは増えません。
預金通貨が増えるから
マネタリーベースが増えるのであって、
マネタリーベースが増えるから、
現金通貨が増えるわけでは
ないわけです。
このため、
中央銀行は、
インフレ対策には力を発揮できますが、
デフレ対策は難しいわけです。
まさに、
『紐は引けるけれど、押せない』
という格言でも知られてますね。
ただ、
ここまで読んでいただいて、
あれっ!?思われた方も
いるかもしれません。
そうです、
はじめに書いたように、
経済学の教科書には、
【中央銀行がマネタリーベースを操作すれば、
貨幣供給量を操作している】
と書いているわけです。
昨今は
日本の中央銀行である日銀が
インフレ率2%とするために、
大規模な量的緩和(マネタリーベースの増加)
を実行しています。
テレビの
コメンテーターなどが
『こんなに日銀当座預金を増やしています』
というような説明も聞きました。
ただ、
日銀がインフレを起こすことは
難しいのは説明した通りです。
なぜなら、
繰り返しになりますが、
貨幣供給量が増えると、
マネタリーベースが増えるのであって、
マネタリーベースが増えると
貨幣供給量が増えるわけではないからです。
だからこそ、
日銀以外で
民間に貨幣が流れるような
政策が必要になるわけですね。
一緒に学んでいきましょう!
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