![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/174884142/rectangle_large_type_2_58e86dc9055fd35342a9bff2724da387.png?width=1200)
重症心身障害児を取り巻く制度の課題:大島分類の限界と新たな障害概念の必要性
重症心身障害児(者)(以下、重症児者)の在宅医療を取り巻く状況は、近年大きく変化しています。医療技術の進歩により救命できる命が増えた一方で、医療的ケアを必要とする重症児者も増加し、従来の制度では十分な支援が行き届かない現状が浮き彫りになっています。
本稿では、重症児者の現状と制度的な課題を、大島分類にも触れながら考察します。
大島分類の現状と限界
重症児者の定義として広く用いられているのが、大島一良氏が1971年に発表した大島分類です。これは、重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態を指し、障害福祉サービスの対象を定める上で重要な役割を果たしてきました。
しかし、大島分類は、医療ケアや医療機器の使用状況を考慮していないため、近年の医療技術の進歩に伴い、その限界が明らかになっています。例えば、気管切開、人工呼吸器、胃瘻などの高度な医療を必要としながらも、歩行や会話が可能な「医療的ケア児」は、大島分類では定義されず、十分な支援を受けられない可能性があります。
法律改正と新たな障害概念
このような状況を受け、2016年には児童福祉法が改正され、人工呼吸器などの医療を日常的に必要とする状態が、新たな障害概念として定義されました。これにより、医療的ケア児への支援体制の整備が進められることとなりました。
しかし、法改正後も、医療、福祉、教育における支援体制は依然として不十分であり、医療的ケア児とその家族は、様々な困難に直面しています。
制度上の課題点
支援資源の不足: 重症児者への訪問医療を行う医療機関や、訪問看護、短期入所、ヘルパーなどの在宅生活を支える社会資源が不足しています。
医療と福祉の連携不足: 医療機関と福祉サービス提供事業所との連携が不十分であり、情報共有や連携体制の構築が課題となっています。
相談支援体制の脆弱性: 相談支援専門員は、知的障害者の支援を中心に育成されてきたため、医療知識や医療機関との連携に関する知識・経験が不足している場合があります。
医療的ケアに関する知識・技術の不足: 医療・福祉従事者の中には、医療的ケアに関する知識や技術が不足している者がおり、適切なケアを提供できない場合があります。
家族の負担: 医療的ケア児の在宅介護は、家族に大きな負担を強いるため、家族への支援体制の強化が求められます。
今後の課題
医療・福祉・教育の連携強化: 関係機関が緊密に連携し、切れ目のない支援を提供できる体制を構築する必要があります。
医療的ケアに関する知識・技術の向上: 医療・福祉従事者に対する研修機会を充実させ、医療的ケアに関する知識・技術の向上を図る必要があります。
相談支援体制の強化: 相談支援専門員の専門性を高め、医療機関との連携を円滑に進めるための体制を整備する必要があります。
家族への支援拡充: 家族介護者の負担を軽減するため、レスパイトサービスや相談支援、経済的支援などを拡充する必要があります。
地域社会の理解促進: 重症児者に対する地域社会の理解を深め、共に支え合う社会づくりを目指す必要があります。
まとめ
医療技術の進歩により救命できる命が増えた一方で、医療的ケアを必要とする重症児者も増加し、従来の制度では十分な支援が行き届かない現状が浮き彫りになっています。
大島分類の限界を認識し、新たな障害概念に基づいた支援体制を整備するとともに、医療、福祉、教育の関係機関が連携し、地域社会全体で重症児者とその家族を支えることが重要です。