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高齢者ケアの未来を語る:CADL理論


医師: 今日は高校生の皆さんと、これからの高齢者ケアのあり方について考えてみたいと思います。特に注目したいのはCADL理論、つまり「文化的日常生活行為」という考え方です。2025年問題という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは団塊の世代が後期高齢者になり、介護の需要が急増することを意味します。

高校生A: はい、介護の人手が足りなくなる、と授業で習いました。

医師: 人手不足も深刻な問題ですが、それ以上に重要なのは、ケアの質を高めることです。従来の介護は、ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)といった、食事や入浴、買い物などの基本的な生活動作をサポートすることに重点が置かれていました。

高校生B: 高齢者の方の身の回りのお世話をする、というイメージですね。

医師: そうですね。もちろん、それも大切ですが、CADL理論は、それだけでは十分ではないと考えます。CADLは、高齢者の方の「生きがい、心地よさ、暮らし方」といった、文化的な側面に着目する新しいアプローチです。

高校生C: 文化的な側面、ですか。具体的にはどんなことですか?

医師: 例えば、趣味を楽しんだり、地域活動に参加したり、家族や友人と交流したりすることです。CADL理論では、これらの活動が高齢者の方の心身の健康を維持し、生活の質を高める上で非常に重要だと考えます。

高校生A: なぜ、そんなに重要なんですか?

医師: ADLやIADLのサポートだけでは、高齢者の方の「生きる意欲」を引き出すことが難しいからです。趣味や社会参加など、自分が本当にやりたいこと、楽しめることに取り組むことで、高齢者の方は生きがいを感じ、心身ともに活性化されます。

高校生B: 何のためにリハビリをするのか、という目的が変わってくるんですね。

医師: その通りです。例えば、下肢筋力を鍛える目的が「寝たきりにならないため」ではなく、「孫と公園で遊ぶため」になる。それだけで、リハビリに対する意欲は全然違ってくるでしょう。

高校生C: 高齢者の方の「その人らしさ」を尊重することが大切なんですね。

医師: まさにそうです。高齢者の方一人ひとりの個性や価値観、生活習慣を理解し、その人に合ったケアを提供することが重要です。

高校生A: ICF(国際生活機能分類)という言葉も出てきました。これはどんなものですか?

医師: ICFは、人間の生活機能を包括的に評価するための国際的な枠組みです。しかし、ICFは客観的な評価に重点が置かれており、高齢者の方の主観的な体験、つまり「心」の部分を十分に考慮できていないという批判もあります。CADL理論は、ICFの弱点を補完するものとして捉えることができます。

高校生B: 高齢者の方の心に寄り添うことが大切なんですね。

医師: はい。高齢者の方の「人生の価値、生きる意味、生きる目標」を理解し、それを尊重したケアを提供することが、これからの高齢者ケアに求められる姿です。

高校生C: 私たち若い世代も、高齢者の方の心に寄り添うことができるように、もっと意識を高めていきたいです。

医師: そうですね。高齢者の方を単なる「介護される人」としてではなく、一人の人間として尊重し、その人の人生を豊かにするサポートができるように、私たち一人ひとりが意識を変えていく必要があります。今日は皆さんと高齢者ケアの未来について議論できて、とても有意義な時間でした。ありがとうございました。

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