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原稿は書く前に、良し悪しの3分の2が決まっている

 雑誌や書籍の編集・ライターを仕事にして約30年。最近は若いライターさんから「良い原稿の書き方」を聞かれることが多くなった。

 そんなときは「原稿は書く前に、すでに良し悪しの3分の2が決まっていますよ」と言っている。

 原稿を書くときの流れは、ざっとこんな感じだろう。(1)「企画・テーマ決め」→(2)「取材」→(3)「原稿書き」

(1)【企画・テーマ決め】では、「誰を(何を)取材したいのか?」「何を聞きたいのか?」「なぜ聞きたいのか?」「聞くことで何が得られるのか?」「それは読者のためになるのか?」などを考える。

(2)【取材】では、「企画・テーマ決め」で考えた内容を中心に話を聞くが、その前に「取材相手のバックグラウンド」や「これまでにどんな発言をしているか」などをチェックしておく。そして「今回の取材で聞きたいことはすでに発言しているか」、発言していたら「自分が聞きたい内容と反対の意見ではないか」などを確認する。

 取材では「これまで発言していない新しいこと」を聞き出したいが、うまくいかないこともある。そんなときは「同じ話でも、より詳しく具体的に」聞くことで差別化をはかる。

 ちなみに僕の場合、インタビューするときに「今日はコレとコレとコレを聞きたい」と最初に伝えることが多い。すると取材相手は、頭の中で話すことを整理してくれるからだ。

 また、質問事項をプリントアウトして、インタビューのときにわざと相手に見えるようにテーブルの上に置くこともある。すると「次はこの質問か」と準備してくれるし、知りたいポイントを詳しく説明してくれるからだ。

 インタビューで、いきなり核心の質問をすることはない。「このお寿司のおいしさの秘密はなんですか?」とすぐに聞くよりも「寿司職人になろうとしたのはなぜですか?」など相手が話やすそうな質問から始めて、「若い頃に食べたおいしいお寿司の味が忘れられなかった。単にネタを切ってシャリにのせただけでなく、シメたり、漬けにしたり、ひと手間加えてあった。それをふた手間にしているんです」というように、過去の記憶を思い出してもらったり、頭を整理してもらう時間を設けるようにしている。

 話が取材術のほうにそれてしまったが、取材時に「何を聞きたかったのか?」「なぜ聞きたかったのか?」「何か新しい情報を得られたか?」「それは読者のためになっているか?」がきちんと聞けていることが重要だ。

 そして(3)【原稿書き】になるわけだが、ここまできたら何を書けばいいのかはもうわかるはず。構成はできあがっているのだから、あとはまとめるだけ。

 だから、原稿を書く前に良し悪しの3分の2は決まっているし、「誰に何を聞いたのか?」「なぜ聞きたかったのか?」「聞くことで何が得られたのか?」「新しい情報はあったか?」「読者のためになることは何か?」がきちんと聞けていれば、良い原稿になる。

 原稿を書くのが難しいという場合、事前の「企画・テーマ決め」や「取材」が十分でないことが多いはず。何が聞きたいのかをしっかりと確認しておけば、原稿はスムーズに書ける。これが良い原稿を書く秘訣で、基本だ。

 と、こんなことをHIU(堀江貴文イノベーション大学校)編集学部で雑誌を作っている皆さんに話してきました。

 今後は「note」に「原稿の書き方」「取材術」「編集とは」などを書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ちなみに、「文章術」などは、いろんな人が書いていますが、きっとどれも正解です。文章の書き方はひとつではありません。いろんな人の話を聞いて、自分にあった方法を選べば良いと思います。その選択肢のひとつになれば幸いです。


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