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お風呂という戦場

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


「お風呂に入る際は十分気をつけろ。」
と、父親に言われた。
お風呂がとにかく寒いのだ。
12月23日、出張ついでに実家に宿泊。
いざ入浴というタイミングでの一言。

やれやれ、もうすぐ後期高齢者になるあなたこそご注意あれ、と独り言ちたが、私もあと数年で50歳。『敦盛』なら人生のゴールであるからして
お風呂でどうにかなるやもしれない。

その日は寒かった。外気は0℃前後。
夜の10時頃、脱衣室に入った。
石油ファンヒーターが効いた部屋は熱いのか寒いのか判然としない環境だった。100℃を超える温風がヒーターから出ているので室温はやたら高いのだが、窓や壁の表面温度が低いのだ。そして、その一番の元凶はルーバー窓。
目隠しルーバーがついた窓ではない。ガラスがルーバーなのだ。
どんな経緯で生まれたのだろうか。
商品会議で、気鋭の誰かが
「ガラスをルーバーにするのはどうですか?」
と、発言したら、
「は!その手があったか!」
となったのだろうか?
テレビとビデオをくっつけたらどうですか?
お茶をペットボトルにいれたらどうですか?
ローキックを後頭部に決めたらどうですか?(人はこれを延髄蹴りと呼ぶ)
つまりコロンブスの卵的なアレコレ。

「実家のルーバー窓」 カーテンでひっそり存在しているが
窓ガラスがルーバー状になっている

ただ、その発想は断熱だとか、気密だとかがない時代のものであって、今ではアナクロでしかない。
実家に戻ってくる度にあの窓を見ると愕然とする。

で、裸になる。(脱衣室なので)
そして、在来浴室の折れ戸をあける。
寒い。50年近い人生が走馬灯のように駆け巡りそうになる。
意を決して入浴する。
寒い。千人針のお守りをもって入りたくなる。
さっさと洗う。
で、出る。無事生還。

私は紳士のたしなみとして赤外線カメラを持ち歩いている。
なので、実際どれぐらい寒かったのかを確認した。

「実家在来浴室」 カーテンの向こう側にもあるのだよ、ルーバー窓
柱形の入隅は0.4℃ 露天風呂気分

柱形の下端、入隅の辺りは0.4℃だった。ほぼ外気。
これは寒い。まずい。命にかかわる。

ブルースリーと同じ辰年である私でさえ、このお風呂にはハラハラする。
父親は齢七十四。寅年。武闘派で、長く空手の県のトップをしていたとはいえ、温度差には弱いに違いない。
お風呂におびえるドラゴンとタイガー。
どうしたものか。

「ルーバー窓で改修のやりようある?」
と、懇意にしているYKKの営業マンに相談。
すると、
「いけますよ、カバー工法があります。」との
心強いお言葉。https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&volumeID=YKKAPDC1&catalogId=12325820000&pageGroupId=7&designID=pro&catalogCategoryId=&pagePosition=R

おお、戦場に咲く花。
在来をユニット化するに越したことはないが、窓を変えるだけでも
随分改善されるはず。
ましてや、今は補助金がしっかりでる。

年間10000人以上の方がお風呂で亡くなっており、交通事故者数の4倍となっている。

今は昔、交通死亡事故者数が10000人を超えていた頃、『交通戦争』と呼ばれていた。今はお風呂が戦場と化している。
私は、その戦場にタイガーを送り込んでいるのか?と悶々とする。
(断熱だの、気密だのという仕事をしているのに。)
そんなこんなで、補助金を利用させていただきつつ、タイガーとスネーク(巳年の母親)が少しでも元気に過ごせる環境を提供するべし、と決めた
年末なのであった。

今年も色々お世話になりました。
色々と情報アップしたいと思いながら、遅筆で月一本しかアップできておりませんが、来年も引き続き読んでいただけたらと思う次第です。




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