「あれ」ってそもそも何だっけ?
① 「UA値」
住宅設計者は、その住宅がどれぐらいの外皮性能(断熱性能)なのかを説明する義務がある。また2025年以降は設計している住宅を、国が定める「省エネ基準」に適合させる義務が発生する。よって、住宅の提供者として、最低限知っておくことが必要な「用語」や「単位」がある。そういったアレコレを解説。
住宅の断熱性能を語る上で一番取り上げられている「用語」がUA値。
UA値は政策的に言うと2025年の義務基準の一つなのだ。
超えなきゃいけないハードル。
具体的には以下の大項目2点。
①外皮性能
-UA値(外皮平均熱貫流率)
-ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)
②一次エネルギー消費量
大項目①はUA値とηAC値(イータと読む)にそれぞれ分かれる。
それぞれに個別の基準があるので、UA値、ηAC値、一次エネルギーの3つの項目の基準をクリアしていないと違法建築となる。
で、繰り返すが、この断熱性能の代名詞がUA値。
「A工務店の住宅はUA値0.34w/m2k、あっちのB工務店はUA値0.26w/m2kだ。だからB工務店の方が断熱性能はよいね。」
と、比較検討できてキャッチ―だ。
「A商業のエースは140km/hの球を投げるけど、B学園のエースは150km/h投げるらしい。」と似ている。
定量的に比較検討できる。
で、UA値とは何か。
熱は高い方から低い方に移動する。
そういうものらしい。
私も人間をして40年以上になるので
感覚的にはそういうものだろうな、と思う。
画像①のような住宅で、室内が20℃、外気が19℃だった時、外気の方が低いので、室内の熱は外に移動しようとする。
(日射熱だとか、室内発生熱だとか、外気による熱流出は置いておく。)
熱は中と外の境界を「越境」して移動する。
住宅の場合その境界は断熱材の位置、断熱層だ。
その断熱層の位置を
・屋根(天井)
・壁
・床(基礎)
・窓
に大別する。(屋根/天井、あるいは床/基礎の違いは断熱材がどこにあるかで決まる)
そして、それぞれの断熱層において、内外温度差1℃あたり、また1m2あたり、どれだけの熱(ワット)が移動するかを数値化する。
それをU値という。単位は
U = w/m2k
そして、各断熱層において、U値が出たらそれぞれの面積と掛けて各断熱層毎の熱損失量を出す。
例えば、屋根のU値が0.25w/m2kで屋根面積が60m2あった場合
内外温度差1℃あたり屋根から逃げる熱は
0.25*60=15w/k
つまり、屋根から逃げる熱は1℃あたり15w(ワット)となる。
これを壁、床、窓で行う。
例えば、画像②のように、壁、床、窓がそれぞれこんなだったとする。
で、それを合計する。
すると、この家は内外温度差1℃あたり、142wの熱が移動するということがわかる。これをq値とよぶ(スモール・キュー値)。また、それぞれの断熱層を構成する部位の面積の合計が285m2
となっている。
で、142wを285m2で割ってみる。つまり、建物外皮1m2あたり、且つ内外温度差1℃あたり、どれだけの熱が逃げているかの平均を出してみる。
142/285=0.5(w/m2k)
となる。
この値をUA値と呼ぶ。
つまり(と言うよりも繰り返すが)、建物外皮1m2あたり、且つ内外温度差1℃あたり、どれだけの熱が逃げているかの平均がUA値なのだ。
また、その値が低ければ低いほど熱は移動しにくい(=断熱性が高い)
(実際の計算は、玄関土間の基礎であったり、窓や、玄関が複雑だったりしてこんなスッキリしない。)
見落としちゃいけないポイント
UA値はあくまで平均なので、その値の大小で絶対的な断熱性=省エネ性は語れない。
例えばUA値が0.25w/m2kの住宅と、0.5w/m2kの住宅があったとする。
0.25は、なかなか高い値なのですごい省エネ住宅と言ってもよい。
0.5も悪くない数字だがUA値だけで議論すると、「0.5の住宅の外皮における断熱性=省エネ性は0.25の半分だ。」と言えてしまいそうだ。
しかし、もしそれぞれの外皮面積も考慮し、q値で比較して、以下だったとする。
0.25w/m2k*500m2=125w/k
0.5w/m2k*250m2=125w/k
q値は一緒だ。
つまり、UA値0.5の住宅は小さい家だったので(外皮面積が小さい)、トータルの熱損失は実はUA値0.25の住宅と同じだったのだ。
こうなると、同じ省エネ性だ、と言って過言でないと思う。
(ただし、UA値0.25の住宅は室内の窓や壁、床の表面温度はUA値0.5の住宅より高いだろうと思う。)
ことほど左様でUA値より、q値の方が実際の断熱性をつかみやすかったりする。
例えば、画像②の住宅で内外温度差が20℃だった時、この住宅から移動する熱は2840wだ。
おっと、書き忘れたが、先ほどから「熱が移動する」と書いているが、移動する際のスピード感は「毎秒」だ。つまり、今のケースだと、毎秒2840wの熱が移動している。
と、なると、この住宅を毎秒20℃を維持するために必要な熱は2840wとなる。よって、例えば、エアコンで暖房する場合、2840wの能力があるエアコンを選定すればよいことになる。
で、例えば、ダイキンのHPで2840以上の暖房能力のある機種を選ぶと2.2kwタイプ(6帖用)となる。
空調屋として言うと、エアコンは冷房で機種選定する。また、日射熱がなくても、換気や漏気によるによる熱損失や、室内発生熱による熱取得など、実際はもっと複雑。
それはそうなのだが、簡単にした説明だと以上だ。
まとめ
・UA値は建物(屋根、壁、床、窓)において、内外温度差1℃あたり、面積1m2あたり移動する熱(ワット)の平均。
・「平均」なので、この数値が低い事が絶対的に省エネ性が高いとは言い切れない。
これにてUA値の解説を終わります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?