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脳裡に焼き付いたイメージを払しょくする方法
私の実家は富山県で、両親が古い家に住んでいる。
先日母親から画像が届いた。
![](https://assets.st-note.com/img/1672471155541-E7wjQJFrWS.jpg?width=1200)
玄関前が一面雪に覆われている。深さは60cmぐらいだろうか。
富山である以上、一度はこうなる。
カリブ海の国ならサトウキビを栽培するように
富山なので、雪は積もる。
そして、雪の便りを聞くと両親の健康が心配になる。
私の祖母はお風呂で溺死した。
実家には母屋と離れがあった。
私の両親は離れに住み、祖母は忠臣蔵を撮影できそうな
ぐらい広い母屋で一人暮らしだった。
寒い日の朝。
いつもなら深々と腰を折った姿勢で、畑に行くはずの
祖母が現れない。
不審に思った息子(つまり私の父親)が母屋のお風呂を覗くと
祖母が溺死していた。
ヒートショックによる溺死。
父親は慌てただろうし、落胆しただろうと思うが、寅年生まれの
空手家で、佐山タイガーのように強い男を演じていた父親は、
家族に母親を「理想的ではない死に方」で亡くした落胆の色を
見せなかった。
私は祖母の溺死している姿をみなかった。
しかし、お風呂で溺死しているというイメージは私の中で膨らんだ。
祖母の死から随分時間は過ぎたが、いまだにそのイメージが時々去来して
背筋がゾクッとする。
特に、この季節になると、高齢になった両親が、
その当時の祖母と重なり、祖母のイメージがちらつき始める。
ヒートショックによる溺死は、既に交通死亡事故者数を上回っている。
なるほど、私の近親縁者で、交通事故で他界した例はない。
ヒートショック死した肉親がいる遺族が私だ。
つまり道路を歩くより、寒い家で入浴する方が、危険な状況なわけだが
こんなデータもある。
「日本サステナブル建築協会」のサイト内にアップロードされている資料だ。
これによると、「暖かい家」と「健康」についての因果関係は科学的に証明されており、「暖かい家で暮らす」と「40~80代の平均血圧が4mmH低下」し、それによって、「脳卒中死亡者が年間1万人、冠動脈疾患死亡数が年間5千人減少」と推計されている。
お風呂での溺死が5000人弱なので、家を暖かくすることによって、実にその3倍の死者数を減らせる。これは交通事故による死者数の何倍なのかというお話。
富山は雪が積もる。それぐらい寒くなる。
そして、私の祖母のようなリスクが増大する。
しかしそのリスクは回避できる。
住まいを暖かくすればよい。
具体的にどれだけの室温にしたら健康リスクを回避できるかについても
データが出ている。
それは18℃だ。
以下で、国交省が「WHOの勧告」に基づきガイドラインを出している。
https://www.mlit.go.jp/common/001500202.pdf
18℃以上にするためには、断熱・気密をしっかり行い、それにあった適切な冷暖房・換気を行う必要がある。
それによって、住まいは暖かくなり、私の祖母のような悲劇は減少できる。
そして、肉親がお風呂で溺死ている姿を実際に見たり、イメージをして苦しむ遺族は減る。
交通事故死亡者数が年間1万人を超えていた時代、それは「交通戦争」と呼ばれた。今、住まいにおいて年間1万人を遥かに超える人々が死亡しており、住まいこそ戦争の最前線といえる状態なのだ。
私たちは、実は戦時下にあるという状況を自覚し、戦死者が増えないような住まい作りを進めていかなくてはいけない。