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加湿をめぐる冒険
現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。
「山」と言えば「川」。
「カオサイ」と言えば「ギャラクシー」。
そして「冬」と言えば「リビエラ」と「加湿」なのだ。
そうだ、加湿器がほしい。
思いたったが吉日。
計画性もなく近くの量販店に足を運び加湿器を物色。
で、ティファールの加熱式(スチーム式)加湿器を購入。
![](https://assets.st-note.com/img/1738329555-n3IfYBZ6sCKqoHyhOrluaEtp.jpg?width=1200)
さて、加湿方式は何種類かある。
大別すると、加熱式、気化式、超音波式。
(加熱式+気化式、加熱式+超音波式のようなハイブリッドタイプもあるが
ここでは措いておく。それにしてもハイブリッドという単語を聞くたびに
ハイブリッドレスリングを標榜したパンクラスを思い出してしまい、ぐっとくる。)
何が違うのか?
空調を生業とするものらしく『空気線図』をひもときながら話したい。
と、その前に冬はなぜ加湿する必要があるのか。
(冒頭で「冬」と言えば「加湿」と言っておいてなんだが。)
それは空気が乾燥しているからだ。
つまり、空気中の水蒸気量が少ない状態となっている。
具体的にどれぐらい少ないのか。
それは毎度おなじみ気象庁の過去データを検索すると確認できる。
それによると、名古屋の1月の平均温湿度は
4.8℃
64%RH(相対湿度)
となっている。
湿度を語るとき、一般的にはこの相対湿度で語られるように思うが
実はこれを追いかけても乾燥しているかどうかよくわからない。
何故なら相対湿度は温度という与条件下での水蒸気についての情報であるからだ。実際に、名古屋は年間通して、平均湿度が60~70%程度だが、1月の64%では喉が痛くなり、8月の69%では私の体は汗でまみれる。
1月と8月では与条件である温度が違うからだ。
なので、乾燥度合いを測るために相対湿度ではなく、絶対湿度を確認するとよい。
そうすると、名古屋はこうなる。
1月平均
4.8℃
64%RH
4.3g/m3
8月平均
28.2℃
69%RH
19.0g/m3
絶対湿度は「g/m3」。
つまり、空気1m3中に何グラムの水蒸気が含まれているかを表している。
相対湿度ではわずか5%しか違わなかった1月と8月だが、絶対湿度にすると約4倍以上開いているいることがわかる。
冬は乾燥しているわけなので、4.3g/m3では少ないだろうし、夏は汗まみれなので19.0g/m3ではジメジメしていると予想できる。
今回は加湿なので冬の議論をすすめる。
4.3g/m3では少ない。
それでは何g/m3にすればよいのか。
一つの考え方として「インフルエンザリスクを最小化する絶対湿度にすればよい。」と言える。
インフルエンザと湿度は関係があり、エビデンスも示されている。
それがこれ。
![](https://assets.st-note.com/img/1738479980-mHejsTrJyUQk710N3hGpZntB.png)
なるほど17g/m3となると生存しないのか。
しかし、17g/m3は夏の<ジメジメ19>の二軒隣であり、
つまり同じ町内なのでジメジメである。
さらにややこしいことを言うと17g/m3を許容する(相対湿度60%とする)ための室温は31℃ぐらいとなる。
ハワイ。
冬の我が家にハワイがやってくる。
( ↑ 行ったことないけど。)
そもそもエアコンの設定温度がない。
それに地球にも財布にも優しくない。
よっておすすめしない。
そこで目標を11g/m3に置く。
1月の平均絶対湿度は4.3g/m3だった。
なるほど上記の表中だと「5g/m3」のカテゴリーでインフルエンザが達者に日々を過ごしている。
これはまずい。
そこで室内の絶対湿度を4.3gから11gまで上げる。
(特に考えやすいように14畳(23m2)のLDKを加湿することにする。
また、本来であれば人の呼気、調理、洗濯等で水蒸気が発生するが
今回はないものとする。)
で、冒頭の加湿方式。
加熱式、気化式、超音波式、(と、ハイブリッド式)。
大別すると
①加熱式
②気化式、超音波式
となる。
何が違うか。
消費電力が全く違う。
例えば①加熱式であるティファール。(私が購入したアレ。)
仕様書を見ると225Wとある。
![](https://assets.st-note.com/img/1738851433-8FVgTb7fdunSORxDicp9Iy6j.png)
なるほど、そうですか。
で、②の代表として、いつも私が温湿度測定でお世話になっているスイッチボットの加湿器(気化式)の仕様書をみてみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1738851611-37WCRgTKtOEXdzovrSPHaDUG.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1738851660-fHNOU9Fc5XDQd4SjoTgYIW86.png?width=1200)
ティファール加湿器の能力は400ml/hなので、能力を合わせるとおよそ6Wだろうと思われる。
225Wと6Wを比べると圧倒的に気化式が地球及び財布に優しいという勲章を得る。
確かにそうなのだが、実際はそこまで大きな差は生まれない。
で、空調屋稼業なので空気線図を使う。
![](https://assets.st-note.com/img/1738852117-XMS4H7xiRTZ5aJcVzDvBWqNU.png?width=1200)
LDKは22℃だったとする。
で、絶対湿度は3.5g/kgだったとする。
(※単位が変わってます。注意。空調では通常g/kgで扱う。また、20℃前後の空気はg/m3を1.2で割るとおよそg/kgに変換できる。で、1月は4.3g/kgだったので、÷1.2をして3.5とした。
それと、最低限の図の情報として、
横軸:空気温度(℃)
縦軸:絶対湿度(kg/kg ※0.004kg/kg=4g/kg)
右肩上がりの曲線:各曲線が5%毎の相対湿度)
これが出発点(赤丸)
これでは乾き切っている。
実際相対湿度も20%台だ。
まずい、部屋内をインフルエンザが我が物顔で闊歩する。
喉も痛い。床もパキパキと音がする。
そこで①加熱式で加湿する。
そうすると、空気は出発点・赤丸から垂直に上昇し、やがて9g/kgに到達する。室温は変わらない。
では②気化式だったらどうか?
その場合、出発点・赤丸から左方向斜め上に加湿されていく。
左方向とは即ち室温が下がっていく。
そうなのだ。気化式は室温が下がるのだ。
実際はエアコン併用だろうから、室温は下がらない。また、気化式はある一定の相対湿度以上になると、気化しなくなるので加湿しない。
でも、この条件がなかったとしたら、およそ11℃ぐらいまで下がる。それでも絶対湿度は8g/kgであり、9g/kgに未達なのだが、それ以上空気が水蒸気を保てなくなっている(飽和水蒸気)。
14畳のLDK(CH2.4m)で11℃の空気を22℃まで加熱するために必要な熱エネルギーはおよそ200W。
なので、
①加熱式の消費電力⇒225W
②気化式の消費電力⇒6W+200W=206W
ということになる(それでも②は加湿量がやや少ない。)
ま、もっとも、②の場合、加熱をエアコンで行うとすると、ヒートポンプというステロイドを使ったホセ=カンセコ級の裏技?を使えるので、この200Wが実際は65Wぐらいまで減らせる(COP3.0)。
よって、結局②の方が地球にも財布にも優しいのだが、仕様書の通りではないということを少なくとも知ってほしい。
そんなこんなで本日はここまで。
次回も加湿を語ろうと思う。