【論文レビュー】専門職としての看護師の組織社会化から学べることは多い:篠原 (2024)
病院が怖い私にとってICUと聞くと心拍数が上がってしまいます。本論文のイントロの部分を読むと、看護師の方々には専門的な知識が技術が求められるようになっており、特にICUではその度合いが大きく、ストレスもよりかかるようです。本論文では、こうしたタフな職場への異動者がどのような組織社会化がなされるのかのプロセスを質的研究によって明らかにしています。
概要
本研究の対象者は、ICUに異動してから1-2年が経過した看護師5名です。これらの対象者に対して、回顧的なインタビューを行うことで、ICUへの異動前、異動時点から1年以内、1年経過後からインタビュー時点まで、という三つの時点において、どのような組織社会化に関連する体験があったかをヒアリングしています。
分析結果
得たれた質的データについては、ナラティヴ分析のテーマ分析を用いて分析しています。その結果について、上述した三つの時点において時間軸で分類したものが以下の表です。
質的研究ならではの、中身の濃いワーディングが並んでいます。時を経る中でのプロセスが見えてくる内容です。
病院組織で働いたことがないので推察の域を出ないのですが、分析結果を読んでいて興味深い点が二つあります。
専門職は主体的な異動
一つめは、【異動前】のところを読んでいると、看護師という高度な専門職の方々の場合、異動に個人の主体性が見られるという点です。病院組織であっても、組織による異動命令という側面はきっとあるのでしょうが、ここで取り上げられている5名の分析結果からは、過去における経験を整理して次のキャリアを志向していたり、自ら情報を取りに行くといった主体的な行動が見られます。
本論文は看護師を対象としているものではあるものの、やや抽象化して高度専門職として捉え直すと、専門職においては個人による主体的な異動やそれに伴う知識・技術の習得が大事になってくる、ということが言えるかもしれません。
良好な組織風土の重要性
もちろん、異動者本人による取り組みだけが重要なわけではなく、受け入れ側にも大事な点はありません。異動後の職務に対するフォロー体制がしっかりしていたり、期待の伝達を行うといった、職場における良好な組織風土が異動者の組織社会化を促しているという側面も見えます。
拡大解釈を恐れずに言えば、過去のキャリアにおいて知識や技術が開発されている専門職であっても、受け入れる側の組織風土が悪ければ、異動後の組織社会化が十分になされないということを肝に銘じておくことが大事なのでしょう。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!