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【論文レビュー】プロアクティブ行動のレビュー論文を読んでみた。:Grant & Ashford(2008)
本論文はプロアクティブ行動に関する主要なレビュー論文の一つです。プロアクティブ行動をザックリと掴んでいただくために、服部先生の『組織行動論の考え方・使い方』から援用させていただくと、①将来を見据えた進取的行動や②置かれた状況を積極的にコントロールして現状に変化をもたらす統制的行動というような意味であるとまずはお考えください。
Grant, A. M., & Ashford, S. J. (2008). The dynamics of proactivity at work. Research in organizational behavior, 28, 3-34.
プロアクティブ行動が生まれた背景
プロアクティブ行動と関連が深いものとして本論文ではモティベーション研究が挙げられています。モティベーション研究における従来の人間観は、組織に対して受動的であり組織からの働きかけに対して反応的に対応するというものでした。
しかし、社会の変化に対する対応やむしろ変化を創り出す必要性が増してくる状況において、人間の持つ能動性に着目されるようになりました。その結果として、2000年前後からプロアクティブ行動に関する研究が増えてきたという背景があります。
プロアクティブ行動とは何か
まずはプロアクティブ行動自体とそれを取り巻く先行要因と帰結について描かれたモデルをご覧ください。
プロアクティブ行動は図の真ん中に記載されています。まず大事な点としては、プロアクティブ行動はプロセスとして捉えるべきであると著者たちは述べており、図では三つの段階が示されています。つまり、予測、計画策定、未来志向行動です。
次に、プロアクティブ行動は五つの次元によって変化するとしています。具体的には、型(行動の種類)、影響を与えたい対象、頻度、タイミング、戦術、の五つです。
プロアクティブ行動の先行要因
プロアクティブ行動に影響を与えている要因は図の左に書かれています。一つ目は、説明責任が高くなるとプロアクティブ行動が高くなるというものです。その際に、自己観察能力や良心的であるかどうかが調整変数として影響を与えることが指摘されています。
二つ目は曖昧さで、曖昧であればあるほどプロアクティブ行動を取るようになるとしています。ここでも神経症傾向の高さや開放性が調整変数として指摘されていることに留意が必要でしょう。
最後は自律性です。自律性が高ければプロアクティブ行動をより取るようです。この関係性に対しても、自己評価と最上志向性が調整変数として影響を与えることが挙げられています。
プロアクティブ行動の成果要因
プロアクティブ行動の結果として、外面(状況)よりも内面(気質)を重視するようになるという点が第一のポイントです。さらに、プロアクティブ行動は得られる賞罰にも影響します。まず、媒介変数からみていくと、内面(気質)を重視するタイプは強化された賞罰を受ける可能性が高まるとしています。
次に、どのような行動が報酬(賞)を受け、どのような行動が罰を受けるのかについてみていきます。第一に、(当たり前ですが)組織にとって利益がある行動は賞賛され、非倫理的であったり利己的であったり害悪的であったりするものは罰せられます。第二に、建設的かつ破壊的な行動は、賞罰のどちらの可能性もあります。
今後検討したいこと
本論文はプロアクティブ行動の一つとしてジョブ・クラフティングも含むという立ち位置を取っています。他方で、以前のブログ(以下)で取り上げたWrzesniewski & Dutton (2001)ではプロアクティブ行動とジョブ・クラフティングの目的の相違が明確に示されており、分けて考えるべきと考えられます。この点は、自身の研究テーマと絡むところなのでもう少し考えてみたいところです。