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採用から育成まで一気通貫のフォローをどう行うか。:『若年就業者の組織適応』(尾形真実哉著)を読んで。

学術書ってここまで読みやすく書けるものなのだなぁと驚きました。その上で、書かれている内容は、採用や人材育成の研究および実務の両面で非常に示唆的です。採用部門・育成部門に勤務する方はもとより、どちらもケアしてビジネスに貢献する必要があるHRBPにとって参考になる一冊とも言えそうです。

組織社会化は組織適応の下位概念

本書が面白いのは、若手社員の組織社会化と言わず、若手社員の組織適応という言葉で形容している点であり、著者のこだわりと言えそうです。概念としては、組織適応を知識的側面と感情的側面という二つの側面から捉えていて、このうちの知識的側面に組織社会化を位置付けています。

組織社会化は組織コミットメント(情緒的コミットメント)・離職意思・仕事のやりがいに影響を与えるわけですから、組織適応の知識的側面を組織がケアすることで感情的側面にポジティヴな影響を与える、と考えられるでしょう。実際、本書の結論はざっくりと言ってしまえばこのようなことをおっしゃられています。

リアリティ・ショックとポジティヴ・サプライズ

企業に入ると、新卒であれ中途であれ、入社前の認識と異なる現実に直面して面食らうことがあります。これをリアリティ・ショックといい、高すぎるリアリティ・ショックが離職意思を高めることは直観的に理解できるでしょう。

このリアリティ・ショックに加えて、ポジティヴ・サプライズという概念を著者自身の以前の研究から持ち出してきています。平たく言えば、入社前に想定していなかったよりもよかった!という驚きのことです。

本書が面白いのは、リアリティ・ショックを解消してもポジティブ・サプライズが起きるわけではない、ということを導出している点と言えます。リアリティ・ショックは感情面にネガティヴな影響を与えるのに対して、ポジティヴ・サプライズは感情面と知識面のどちらにもポジティヴな影響を与え、特に知識レベルの組織社会化に影響を及ぼすことに着目するべきでしょう。

新卒入社二年目に要注意!

新入社員教育を行った後は現場にお任せ、頑張っても三年目のフォローアップまでであとは昇格/昇進時研修までは何もなし、ということは日本企業には多いでしょう。入社二年目というのはやや注目されづらい年次なのですが、実は入社二年目こそ要注意であると著者はしています。

ここには、二つの種類のリアリティ・ショックが関連しています。まず、入社直後のリアリティ・ショックが組織に入って様々な人やイベントに出会う遭遇型リアリティ・ショックです。その後、二年目になると理想と現実とを真剣に比較することにより擦り合わせ型リアリティ・ショックが生じると著者はします。

この擦り合わせ型リアリティ・ショックを克服できない時に訪れるのが、二年目の憂鬱というなんとも絶妙なネーミングの現象なのです。ここを乗り越えられないと離職へと繋がるデフレ・スパイラルへと進んでしまうため、二年目にこそ組織は手を尽くすことが必要なのです。


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