仮想少女の難点。「公開投票オーディション」と「クラウドファンディング」の混ぜ方。

■はじめに

最近私の観測範囲内でもちらほら話を見かけるようになった、仮想少女プロジェクト。

スペシャルギフトによる集金はしつつも「公開投票オーディション」に特化していた最強バーチャルタレントオーディション極=バーチャル蠱毒とは異なり、「公開投票オーディション」と「クラウドファンディング」を一緒くたにした形式になっている。

12~1月で2,000万円の目標金額を達成しなければならないAll or Nothingプロジェクトだが、1/20時点の達成金額は約1,250万円。あと9日で750万円を上積みしなければならないので、正直厳しい状況だ。


その伸び悩みについて、筆者は

仮想少女の一番の難点は、「公開投票オーディション」と「クラウドファンディング」を悪い意味で混ぜ込んでしまっていることではなかろうか

と考えている。今回はその話をしよう。


■一点目:外部へのアプローチの制限

公開投票オーディションの参加者に対して、運営側から「アレはダメよ」「コレはダメよ」という制限がつくことは勿論あるだろう。

仮想少女では、個人へのリプライやライブ配信なども禁止されている。

この外部へのアプローチの制限により、仮想少女の参加者は、ファボ爆撃や突然のフォローでしか存在を訴えかけることができない。

制限の理由をこちらが知る由はないが、正直「オーディションをできるだけ公平にするため?」というぐらいしか思い付かない。

Showroomのイベントでたまに見かける「イベント期間中の1日の配信時間はX時間まで」という制約。
「一日中配信できる人を一方的に有利にはしないので、限られた時間内で配信者のコンテンツ力(≒リスナーの数や質を十分に確保できる魅力)で勝負してね」という意図。
それと同様のものではないかという推測だ。


この外部へのアプローチの制限、目標金額を集めないと成立しないAll or Nothing型のクラウドファンディングとすこぶる相性が悪い。

クラウドファンディングの目標金額を達成するには、まずはできるだけ多くの人に知ってもらわねばならない。
だが仮想少女では、外部、特に仮想少女に現在興味を持ってない層に対して認知を拡大する手段が殆どない。
そのため支援者の母数の確保で伸び悩む。

「母数が少なくても、高額課金してくれる富豪を引っ張ってこれればいけるんじゃない?」という考え方もあるが、基本的には母数が多いからこそ、その中に高額課金者が混じるものだ。

10万円を趣味にポンと払える人を200人も集めてくるのは至難の業だろう。現に、個人最高額の10万円コースに参加している個人の支援者は、1/20時点で3人しかない。

※ついでに言うと、個人支援者用に3,000円より下のコースや10万円より上のコースもあった方が、支援者数も総支援額も伸びそうな気がする。


■二点目:支援の見返りに起きる齟齬

仮想少女はクラウドファンディングでもあるので、支援コースに応じてのリターン、すなわち見返りが明確に設定されている。

これ自体はクラウドファンディングとして普通のことだが、支援コースに応じてのリターンそのものが、脱落者が発生してしまう公開投票オーディションとすこぶる相性が悪い。

仮想少女での見返りは、有形のグッズ類から無形のエンドロール表記権、果ては30分のバーチャルデートまで様々だ。この内容であれば、それを魅力的だと思う人もいるだろう。

最大にして不可避の問題は、その見返りが自分が推していた子のものとは限らないことだ。

仮想少女は公開投票オーディションなので

・1/29までの予選投票で8人から5人に絞られる。
・2/16までの本選投票で5人から1~3人に絞られる。

という予定になっていて、最終的には8人のうち5人~7人が脱落する。

もし自分が票を投じた推しの子がその過程で脱落しても、目標金額さえ達成できてしまえばプロジェクトは進むし、見返りも推しの子ではない勝者のもので用意されてしまう。

バーチャル蠱毒の時にも「(オーディション中の)スペシャルギフトの金銭が推しの子の手に届かないのは納得いかない」という声は聞かれたが、クラウドファンディングの見返りの形だとその齟齬がより目立つ。

本気で入れ込んでいた場合のダメージは計り知れない。


分かりやすくシンプルに、ゲーム制作のクラウドファンディングで類似のケースを考えてみよう。

・AとB、二つのゲームのうちいずれか一つの制作を考えているよ!
・目標金額を達成したらいずれか一つのゲームを実際に作るよ!
・どちらのゲームを作るかは支援者の投票で決めるよ!
・支援者には見返りとして完成したゲームをあげるよ!

目標金額を達成して、投票の結果Aというゲームが制作されたとする。

Bというゲームの制作を待ち望んでいた支援者の元には、Aというゲームが届いてしまう。

Bというゲームの制作を望んで支援したのに、望んだゲームは作られず、支援したお金も返ってこない。その現実を容赦なく突き付けられる。

これは支援の心理障壁としては相当高い壁だと言わざるを得ない。


■おわりに

以上のように、「公開投票オーディション」と「クラウドファンディング」が悪い意味で混ぜ込まれてしまった結果、お互いの利点を潰して欠点を目立たせてしまう状況になってしまったのではなかろうか。

もし筆者が仮想少女をベースに似たような座組を作れと言われたら、素人考えではあるが、以下の内容を検討するだろう。

外部へのアプローチの制限は取っ払う。

→もちろん現環境による有利不利は生じるが、アクティブに動き続けられる人の方が、デビュー後もうまく認知拡大し続けられる可能性が高い。

→目標金額達成に必要なプロジェクト全体の認知拡大にも繋がる。
プロジェクト全体で目標金額を設定するのではなく、参加者一人一人に目標金額を設定し、達成できれば人数は関係なくデビューさせる。

→支援する側としては、支援が明確に推しの子のためになるし、見返りは確実に推しの子によるものとなるし、残念ながらデビューできなかったとしても未達成で返金扱いになる。安心できる。

→運営側としては、一人デビューさせるのに必要な金額をきちんと設定できてさえいれば、極論全員デビューさせてもビジネスとしては成り立つ。

※課題:一人あたりの目標金額が、支援者から見て現実的な金額に抑えられるか?(プロジェクト全体という体で誤魔化せず、シビアに見られる)


ともあれこの仮想少女、なかなか厳しい状況だが、全く夢も希望もないというわけでもない。

冒頭でも述べた通り、最近私の観測範囲内でも仮想少女の話題をちらほら見かけるようになった。

これは、仮想少女の参加者によるファボ爆撃や突然のフォロー、さらにはその前段となる検索手法(仮想少女自体のエゴサのみならず、仮想少女にも興味を持ってくれそうな人をどう探し、どう監視し、どうアプローチするか)の賜物であろう。

当人達からすればたまったものではないだろうが、外部へのアプローチが制限された環境下においてルール上ギリギリ可能な手段を駆使する姿は、とても興味深い。


目標金額を達成できずにクラウドファンディング未達になった場合、本当に跡形もなく消滅するかもしれないし、そのケースのブックも用意されていて筋書き通りに進むだけかもしれない(ただ潰すにしては初期投資が大きすぎるように見える)。

そんな仮想少女の行く末も、しばらく見守ってみようと思う。


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