ハケンアニメ!
先週公開作品、今週公開作品含めて見たい作品は何本もあるが、来週末には上映回数が一気に減らされて見る機会が減少しそうな作品=客入りが悪そうな作品からまずは片付けようと思い本作を見ることにした。
◎原作小説は読んでいないが、2019年に上演された舞台版は鑑賞しているので、それと見比べてみたい。
◎劇中劇(劇中の登場人物たちが作っているアニメ)の担当声優に人気声優が何人も参加している。
◎朝ドラ「カムカムエヴリバディ」でヒロインの親友役を演じた小野花梨(可愛い!カムカムのちょっと近未来パートで兼役で演じた親友の孫役は特に可愛いと思った!)がアニメーター役で出演している。
この辺が見たいと思った動機だ。
作品について語っていこう。
まずはタイトルについて。
原作、舞台、映画を問わず、この「ハケンアニメ!」というコンテンツの“ハケン”の部分がカタカナ表記になっているのはダブルミーニングではないかと自分は思っている。
アニメ(に限らず映像制作の現場のほとんどがそうだが)にはフリー・業務請負といった非正規労働者が多いという意味での「派遣」。
アニメの放送形態が1クール終了の深夜アニメが中心となり、アニメの制作スタッフは、正社員であっても、1クールごとに毎回、現場がかわる実質「派遣」労働者のようなものになっているからね。
そして、1クールアニメが増えたことによって、アニメファンの間で、その期で一番人気があった作品、あるいは、ストーリーや演出、作画、演技などがすぐれている作品。もしくは、後世に語られそうな作品なんかを「覇権」アニメと呼ぶようになったが、こちらの方に主題を置きつつも、「派遣」の方も描くという趣旨なんだろうと思う。
まぁ、1年、2年と長期放送されていたアニメが主流だった時代には「覇権」なんて概念はなかったよね。
せいぜい、70年代、80年代みたいな大きなくくりで、その時代の代表作・名作が語られるくらいだった。
90年代が過渡期で、1クール放送のアニメが主体になったのは2000年代以降って感じかな。
という、色々な「ハケン」をミックスさせて、ストーリーが作られているであろうことは、多少なりとも、アニメに興味がある人間ならすぐに想像できるとは思うけれどね。
それでは、自分の鑑賞動機である3大要素に沿って作品の印象について触れていきたいと思う。
まずは舞台版との比較。
そもそも、舞台版は舞台オリジナルキャラを主人公にしているらしい。その舞台版の主演だったみなるんがこの映画版にはチョイ役で出ていた。台詞はほんの一言しかなかったが、ネット情報によると、舞台版の主人公だった新人アニメーターの役をそのまま演じているらしい。
ストーリーに関しては、誰を主人公にするかという違いはあれど(本作では新人女性監督)、基本的にはアニメスタジオ2社が今期アニメの覇権争いをするという大まかな流れは変わっていないので、舞台版と別モノを見たという印象にはなっていない。ただ、舞台版にはあった、フリーランスや業務請負などの非正規スタッフ、つまり、派遣労働者目線の描写はだいぶ薄れてしまったように感じた。
そして、そのせいで根性論・精神的な面が強調されているようにも感じた。
パワハラやセクハラ、差別をされた者が別の者にパワハラやセクハラ、差別をしていて、しかも、そのギクシャクした関係が最終的にはお互いのことを思ってやったことでしたみたいな美談にされているのはどうなんだろうかという気もした。
それから急なプラン変更で休みがなくなることを美談にしているのもどうかと思う。まぁ、そうしたブラック労働の肯定はアニメ業界を描いたアニメ「SHIROBAKO」にも言えることだし、映画界を描いたアニメ映画「映画大好きポンポさん」にも言えることだが。
あと、最終回前話の視聴率が出た後に最終回のプロットを変更するって無理だよね。まぁ、フィクションだから細かいことは気にしないけれどね。
とりあえず、劇中アニメ、どちらのスタジオの作品も面白そうだよね。
ただ、全体としては、邦画大手がオタク文化を題材にした実写作品としては異例と言っていいほど、オタクを見下した目線がなかったので、その点は感心してしまった。
福田雄一の「ヲタクに恋は難しい」なんて酷かったからね…。
続いて豪華声優参戦について。
本作では劇中アニメのボイスキャストのうち、何人かが実際に顔出ししていたし、高野麻里佳なんて、演技が下手なアイドル声優として、きちんと役名もあるキャラを演じていた。
アニオタって本業でない人が声優を務めるとブーブー文句を言うけれど、声優が顔出し演技をしたり、CDをリリースしたり、コンサートを開いたりすることは批判しないのが多いのは何故?それって矛盾もいいところだよね。
というか、単なるワガママ。自分の好きな人がやることは何でもOKだけれど、気に入らない人がやることは全てNGって言っているだけだからね…。
職場にもこういう上司いるよね…。本当、腹立つ!
そういう思想だから、ブラック労働肯定の「SHIROBAKO」や「ポンポ」、それに本作のような作品が好きなんだろうね。
ただ、劇中アニメのボイスキャストは本当、超豪華だと思った。特に、主人公の憧れでライバルである鬼才監督作品なんて、花澤香菜と堀江由衣が組んでいるしね。
そして最後に小野花梨について。
本当可愛い!
ただ、演じた役に関しては疑問もあった。いくら天才アニメーターとはいえ、どちらのスタジオの作品とも関係しているのか?それから、地域おこしイベントにちょくちょく立ち会っているのも謎だ…。プロデューサー、監督、声優辺りが関わるのは分かるがアニメーターは普通関わらないのでは?
役所の地域おこしイベント担当が彼氏ならまだ分かるけれどね。
この映画版では主人公になっている新人女性監督は元公務員なんだから、彼女が毎週のように聖地で開かれる鑑賞イベントに参加するというのなら分かるんだけれどね…。
そもそも、原作は鬼才監督と組む女性プロデューサー、新人女性監督、天才アニメーターの3人の女性をそれぞれ主人公にしたパートからなる3部構成らしいので(未読)、それを新人監督のみを主人公にした1本の作品として構築し直し、尚且つ、舞台版オリジナルキャラにも目配せしたりしたから、ちょっと、人物相関図的に中途半端になってしまったってところはあるような気もするかな。
というか、今頃気付いたが、自分は「無限ファンデーション」の舞台挨拶で実物の小野花梨を見ていたのか…。
その時は全く意識していなかったが…。
《追記》
リア充側の人間からすると、リア充って言葉を投げかけられると蔑視されているように感じるのかというのが本作では分かった。