「白蛇:縁起」日本語吹替版
本作「白蛇:縁起」は、「羅小黒戦記」と同じく2019年9月に字幕版で限定公開されていた作品だ。
しかし、「羅小黒戦記」はその後、上映館を変えたりしながらロングラン上映を続け、2020年11月には人気声優を起用した日本語吹替版が公開され、中国製アニメーション映画としては異例の観客動員数ランキングでトップ5入りを果たすヒット作品となった。
その一方で、本作はロングラン上映もされなければ、日本語吹替版の公開も遅れてしまった。
その差が出た理由はいたって明快だ。
「羅小黒戦記」は手描きアニメーションで日本のアニメに雰囲気が近いから、日本のアニオタにも受け入れられたにすぎない。
でも、この「白蛇」は日本の多くのアニオタがいまだに毛嫌いしているCGアニメーションだから、「羅小黒戦記」ほど注目されなかったのだ。
でも、「羅小黒戦記」がヒットしたことにより、映画興行関係者は中国アニメーションの波が来たと思い込み、本作の日本語吹替版公開を決意したのだと思う。
とはいえ、字幕版のみで公開されたCGアニメーションの「ナタ転生」や、同じく字幕版のみで公開された手描きだけれどアート性の強い「DAHUFA」はヒットしなかった。
結局、「羅小黒戦記」は手描きアニメーションである上に、雰囲気が日本アニメに近く、それにプラスして、腐女子受けするイケメンキャラや可愛いキャラ、男のオタが好きそうな男の娘みたいなキャラも出てくるから支持されただけだというのがよく分かる。
「HERO」以降、「LOVERS」、「レッドクリフ」2部作など中華圏の武侠もののヒットが日本で相次いだ際は完全にそうしたジャンルの作品のブームが来ていたと思うが、今回の中国アニメーションに関してはブームとは言えないと思う。
本作「白蛇」に関しても、吹替版キャストのジャニーズメンバーのファンがなんとか支えているだけで、アニオタや映画ファンの支持は薄いという気がする。客席を見てもジャニオタっぽい女子はがりだしね。
でも、本編を実際に見たら考えが変わった。現時点での支持は9割がジャニオタ、残りが色んなジャンルの作品に足を踏み入れる映画マニアや海外アニメーション好きって感じだが、この作品はストーリー(ベタなオチも含めて)もキャラデザも日本人好みだと思う。
特にヒロインと謎の道具屋の主はオタ好みだし、主人公は腐女子好みだよね。
また、CGアニメーションも多少ぎこちない所がある分、完璧なピクサーやイルミネーション、ドリームワークスといった米国産よりも進歩から取り残されている日本のアニオタにも受け入れられやすいのではないかと思った。
あと、主人公の吹替を担当したSnow Man佐久間の声優演技もなかなか良い。ジャニーズでいえば、キスマイ宮田と並ぶ、今後の声優仕事が期待できるメンバーって感じかな。
それから、ベタな中華メロディ・アレンジだけれど、Snow Manによる日本語吹替版主題歌“縁”もなかなかの良曲だと思う。
ジャニオタ、映画マニア、海外アニメーション好き以外にも口コミが広がり、「羅小黒戦記」クラスのヒットになるといいなと思った。
そして、どうやらヒロインの妹が主人公で、現代が舞台らしい続編もあるらしいが、それも楽しみだ。
ところで、“白蛇”といえば、どうしても、80年代洋楽世代の自分はホワイトスネイクを思い出してしまうが、“ヒア・アイ・ゴー・アゲイン”などホワイトスネイクの一連のMVで踊っていた彼女って、今年亡くなったんだよな…。