見出し画像

「龍の歯医者」再放送

地上波で再放送された「龍の歯医者」を見た。

最初に見たのは、2017年2月にBSで初放送された時だ。その際には、映画向きの内容だし、再編集して劇場でやりそうだなと思った。
そして、予想通り、その年の年末には劇場版が上映され、映画館に足を運んだ。今回はそれ以来となる久々の鑑賞だ。

初放送当時から思っていたが、この作品の世界観って好きだな。
本当、ずっと見ていたいって思うほどだったしね。 

本作は全2話(前後編)の作品として放送された。各エピソードの放送枠はNHKなのでCMが入らない46分枠となっている。
おそらく、テレビ放送のスペシャルアニメということで枠は前後編に分割するにしろ、一本化して放送するにしろ、トータルで90分程度にしたいというのはあったのではないだろうか(一本化した劇場版の尺はキネノートによると89分となっている)。
日テレの金曜ロードショーでよく「ルパン三世」などスペシャル版のアニメを放送しているが、このおよそ90分というのは、そうしたスペシャル版のCMなどを除いた本編の尺とだいたい同じだ。

ただ、その尺に合わせたせいで、唐突にシーンが変わる箇所も目立つし、説明不足と思われる点も多くなってしまったのは残念だと思う。

1クール12〜13話のテレビシリーズか、上映時間2時間から2時間半程度の映画として世に出していれば、そうした駆け足感はなくなり、もっと名作として世間に知られる作品になれたのではないかとも思う。

もっとも、そうした駆け足感があったとしても十分に良作となっている。本作はスタジオカラー制作で監督に鶴巻和哉、音響監督に庵野秀明がクレジットされているのだから当然といえば当然だ。

まぁ、その面子のおかげで「エヴァンゲリオン」っぽいところはあるけれどね。それから、庵野のキャリアを考えれば当然だが、ジブリ作品っぽいところもある。

考察したくなる謎の設定が多いところは「エヴァ」っぽいし、食事シーンが印象的なのはジブリっぽい。
それから、死生観とか環境問題は「エヴァ」でもジブリでも描写されているし、反戦メッセージを訴えながらリアルなミリタリー描写を入れるところなんてのはパヤオの系統だ。

さらに、強い女性キャラが出てくるのも「エヴァ」でもジブリでもおなじみのキャラクター設定だ。
だから、「エヴァ」やジブリ作品が好きな人なら間違いなく本作の世界観は気に入るはずだと思う。

また、映像面でも色々と冒険をしている。日本製アニメではいまだにスタンダードである2Dのみならず、CGも取り入れているし、水彩画風の描写もあるし、漫画風に描かれている箇所もある。龍やメカニックのデザインも気合いが入っているし、本当、大作感はあると思う。

それだけに、本作が知る人ぞ知る存在になってしまったのは残念で仕方がない。

その原因は本作の初放送直前に主人公の声を担当している清水富美加が幸福の科学に出家し、千眼美子と名前を変えたことにある。
事実上、カルト宗教である幸福の科学の芸能活動を地上波、特にNHKやキー局で取り上げることなんて不可能だからね。 
本作は清水富美加名義だからお蔵入りにはならなかったけれど、彼女が主演であることは大々的にアナウンスすることはできなくなってしまった。だから、作品の存在が半ば無視状態になってしまったのは仕方ないんだけれどね。

でも、この千眼(当時は清水)の声優演技がめちゃくちゃ良いんだよね。
よく、アニオタとか声オタと呼ばれる人たちは、本業が声優でない俳優やタレントが声優を務めるとブーブー文句を言うけれど、彼女の演技は本当に良いんだよね。

神田沙也加とか中川翔子、芦田愛菜あたりと並ぶ演技力だと思う。
だから、出家騒動がなく、その後も清水富美加として活動していれば、声優として活躍を続けていけたと思うんだよね。そういう意味でも残念で仕方がない。それから、彼女が演じた主人公のキャラデザインも可愛いさと格好良さがまじった感じでかなり、個人的には好みだったな。

アニオタ的属性を持っている人間ならビジュアル的にも性格的にも好きになってしまうキャラクターだからね。

それ以外にも、林原めぐみが演じたキャラの変異にも驚いたし、山寺宏一は安定の演技を見せているし、本当、評価できる点が多い作品なんだよね。

あと、DAOKOといえば、世間一般的には「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の主題歌「打上花火」で知名度が上がったけれど、千眼騒動がなければ、この作品の挿入歌で注目されていた可能性もあるんだよね。使われ方も良かったしね。

それだけ、いろんな観点から評価できる作品なので、本当、何度も言うけれど、千眼騒動のせいで作品の存在が無視に近い状態になってしまったのは残念…。

いいなと思ったら応援しよう!