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TVシリーズ特別編集版『名探偵コナンVS.怪盗キッド』

2021年2月公開のテレビシリーズの総集編映画「緋色の不在証明」は元々はイレギュラーな企画だったはずた。
本来なら2020年4月公開予定だった劇場版新作「緋色の弾丸」が新型コロナの影響で公開延期となり(21年4月に公開)、1997年以来、毎年ゴールデンウイークに劇場版の新作を発表していたのが途切れてしまったため、GWにコナン映画を映画館で見るという慣習を取り戻してもらうための予告編として、関連する内容のテレビシリーズのエピソードをまとめた総集編を公開しようと意図したことは容易に想像ができる。

通常のコナン映画に比べれば興行収入は遥かに低いものの、普通の総集編映画よりも遥かに手がかかっていない内容のものであるのにもかかわらず、興収12.4億円もあげたことは評価に値すると思う。それだけ、総集編でもなんでもいいから映画館でコナンを見たいという人が多かったということだったのだろう。

緊急事態宣言の影響で前作よりも数字は落としたものの、「緋色の弾丸」も無事公開され、これでコナン映画は通常のローテーションに戻ったため、翌22年4月公開の「ハロウィンの花嫁」公開時には総集編映画は公開されなかった。

ところが、23年4月公開の「黒鉄の魚影」を前にした同年1月には同作に関連した内容の総集編映画「灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜」が公開された。
これは緊急事態宣言が発令されていなかったのにもかかわらず、22年の新作「ハロウィンの花嫁」がシリーズ初の興収100億円を突破できなかったことが影響しているのだろうか。

そんなわけで、「黒鉄の魚影」はプロモーションが行き届いた結果、シリーズ初の興収100億円を突破したのみならず、23年公開の邦画としては最高の興収138.3億円を記録した。

これで、東宝は総集編映画は新作のプロモーションとして有効だということを認識したのだろう。
「灰原哀物語」は「緋色の不在証明」の時のようにコナン映画に対する飢餓感があったわけではないし、しかも、年明け間もない頃という新作が話題になりくい時期の公開なのに興収7.3億円とまずまずの成績をあげたのだから、そりゃ、東宝としては美味しいコンテンツだと思うよね。何しろ、ほぼテレビシリーズ何話かを繋いだだけの内容だから金はかかっていないしね。

そんなわけで今年も新作「100万ドルの五稜星」の公開を前に総集編映画が公開されることになった。



これまでの総集編映画同様、テレビシリーズ何話かをほぼそのままくっつけて、間に繋ぎのナレーションを入れたり、最後に新作劇場版に繋がるような新規映像を加えたりしただけのものだし、上映時間もこれまでの総集編映画では最も短い1時間21分なので映画として評価できる内容のものではない。

ただ、去年の「灰原哀物語」もそうだったが、通常の劇場版ではコナンがやっている世界観説明パートをコナンではなくその総集編でメインで扱われているキャラがやるというのは面白かった。

あと、コナン映画というと、まるでバラエティ番組のように読ませる気がない高速スピードで文字が駆け上がっていくエンドロールでおなじみだが(その辺がシネフィルにコナン映画を映画と認めてもらえない理由の一つでもある)、本作はきちんと読めるスピードで流れていたので驚いた。
もしかすると、いつものパターンでやるとエンディング曲がワンコーラスで終わってしまい、上映時間も1時間20分を切ってしまうため、それで2000円(TOHOシネマズなどの一般入場料金)も取るとぼったくりと言われてしまうから、ゆっくりクレジットを見せて尺をのばしているのではないか?

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