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ゴジラS.P<シンギュラポイント>

自分のゴジラ初体験がはっきりといつなのかというのは全く記憶にないが、小学生の頃、よく「ゴジラ」シリーズがテレビ放送されたいたので、テレビ視聴を通じてゴジラに親しんでいたことは間違いないと思う。

本格的なゴジラ体験。つまり、映画館で初めて「ゴジラ」シリーズを見たのは、1984年版の「ゴジラ」だった。
長らく新作が途絶え、テレビ放送でお子様が見る特撮ものというイメージがついていた「ゴジラ」映画を当時、中学生だった自分が見に行こうと思ったのは、同級生に誘われたというのもあるが、それまで、テレビで見ていたゴジラが他の怪獣とプロレスする映画になってからの単なるお子様向け特撮とは異なり、大作感があることだったのではないかと思う。

また、日本公開が同時期となったハリウッド映画の「ゴーストバスターズ」、「グレムリン」と同じく頭文字が“G”であることから、“3G対決”などと映画業界が煽っていたことも見たいという気持ちを高める要因だったのではないかと思う。当時の中高生には、自分のようにこの3本全てを映画館で見たという人も多かったのでは?

それから、当時、アイドル的存在だった沢口靖子がヒロイン的存在で出演していたのもこの頃の中高生が「ゴジラ」を映画館で見ても恥ずかしくないと思う理由の一つだった気もする。

あと、武田鉄矢の出演も大きいかな。沢口靖子の映画デビューは「刑事物語」シリーズの3作目だが、この武田鉄矢主演のシリーズは当時の小学校高学年から中学生あたりの男子にとっては、「金八」よりも人気があったしね。
ハンガーをヌンチャクがわりにして戦うなんて、そりゃ、このくらいの世代が好きな設定だよね。しかも、当時はカンフー映画の人気が高かったから、尚更だよね。

そして、主題歌が英語曲というのも子ども向けに思われない、大作感が出る戦略だったと思う。
当時、角川映画が外国人アーティストに日本でしかリリースされない主題歌を歌わせることをよくやっていた。
「復活の日」、「汚れた英雄」、「幻魔大戦」、「里見八犬伝」といった作品の“似非”洋楽主題歌が次から次へとヒットしたので、東宝もその路線を意識したのだと思う。
沢口靖子が出演している東宝映画でいえば、のちに「竹取物語」でも、その手法を取り入れているしね。

そして、この84年版の成功により、「ゴジラ」映画は再び続編が次々と作られることになった。

次作「ゴジラvsビオランテ」(1989年)は何故か、特撮オタの間ではシリーズ最高傑作扱いされているが、個人的には、この作品を映画館で見た時に、自分は「ゴジラ」から卒業するべきだ。こんな幼稚な作品はないと、高校生ながらに思ったほどだった。

90年代、平成「ガメラ」3部作や、一部の「ウルトラ」映画は見たのに、東宝製「ゴジラ」は見なかったのは、幼稚に見えたからだと思う。
84年版以降復活した「ゴジラ」シリーズが90年代半ばに再び終了したのは、結局、昔のシリーズより見た目は金がかかっているようには感じるけれど、結局は怪獣がプロレスしているだけで、続編が作られれば作られるほどマンネリ化してしまったことなんだろうね。

そんな中、98年に公開されたハリウッド版「GODZILLA」は見てしまった…。
ハリウッドがゴジラをどう描くのかは見てみたいし、監督は「インデペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒだし、ということで日本版ゴジラとは関係なく見てみようという気持ちの方が強かった。

また、当時、人気があったザ・ウォールフラワーズ(デヴィッド・ボウイのカバー)やパフ・ダディ(レッド・ツェッペリンをサンプリング)、ジャミロクワイ、そして、日本からはL'Arc〜en〜Cielがサントラに参加していることも鑑賞動機だった。

当時は、漁船に乗っている連中が、ラルクを聞いているなんてありえないだろって思ったけれど、ラルクが懐メロとなった現在なら、ありえそうだよね。

このハリウッド版は、めちゃくちゃ酷評された。それは、ゴジラの造形が全然、ゴジラじゃないからだ。でも、それを除けば、普通にモンスター映画としては面白い作品だったんだよね。
ぶっちゃけ、街中でモンスターが暴れるというビジュアルの映画では、類似している「ジュラシック・パーク」シリーズの2作目「ロスト・ワールド」より、このハリウッド版の方が面白かったと思う。

とはいえ、やっぱり、あの造形は認められないからね。ぶっちゃけ、「ジュラシック・パーク」シリーズの恐竜だしね。
だから、いったん終了した日本版も、あれを現時点での最新(最終)「ゴジラ」映画にしてはならないという思いが募り、再度復活することになったのだと思う。
また、平成「ガメラ」シリーズや、平成「ウルトラ」シリーズなどが、特撮技術やストーリー性で評価されていることに、特撮ものの最高峰であるはずの「ゴジラ」としては、このままではいられないという思いもあったのではないだろうか。

しかし、この復活した「ゴジラ」シリーズは子ども向けアニメ「ハム太郎」と2本立てで公開されたりするから、大人の観客は映画館には足を運びにくいのが実情だった。だから、このシリーズも2000年代半ばで終わってしまった。
高い評価を受けた平成「ガメラ」を意識して、大人にも見られる作品を作ろうと、実際、「ガメラ」を手がけた金子修介を監督に迎えたりもしたのに、同時上映が「ハム太郎」という矛盾したことをしているのだから、そりゃ、再びシリーズ終了になるのも当然だよねとは思う。

そして、長い沈黙を破ることになったのは、今度も“外来種”だった。

2014年の「GODZILLA ゴジラ」がそれだ。しかし、この新ハリウッド版は98年版のように酷評されることはなかった。
ゴジラの造形も98年版のような別物にはなっていないしね。まぁ、太り過ぎ?で首がないのはどうかとは思うが。

なので、この新たなハリウッド版は「モンスターバース」としてシリーズ化され、今年は最新作「ゴジラvsコング」も発表された。
コロナ禍で映画館への客足が完全に戻っていない中、しかも、米国では劇場公開と同時に配信もされたのに、全米興収1億ドル突破作品になったのだから、今回のハリウッド版シリーズは成功したといっていいのだと思う。
まぁ、制作会社のレジェンダリーは「パシフィック・リム」シリーズなどの怪獣映画や、アメコミ原作映画などで定評があるから、特撮オタも納得できる作品に仕上げることができたのだと思う。

そして、98年版の時のようなネガティブな感情ではなく、この2014年版はポジティブな感情のもと、日本版を復活させる契機にもなった。

それが、2016年に公開された「シン・ゴジラ」だ。この作品は、特撮映画としては異例の日本アカデミーの最優秀作品賞受賞作となった。

そして、この「シン・ゴジラ」の成功により、アニメで「ゴジラ」を描くという実験的な3部作映画(通称アニゴジ)も、2017年〜18年にかけて公開された。

98年版の時は、ハリウッド版と日本版は分断した存在だったが、現在は、ハリウッド版、日本版、さらにはアニメ版も共存した関係にあるといえるのではないだろうか。

その新たな流れで作られたのが、本作であるテレビシリーズ(Netflixで先行配信)「ゴジラS.P」だ。

この「SP」は、「モンスターバース」版、「シンゴジ」(ラと中黒しか省略していない略称って謎だが)、「アニゴジ」全ての影響下にある作品だと言える。

アニメである時点で「アニゴジ」との共通点はあるが、パッと見た感じでは怪獣ものというよりかは科学的なSFミステリー(そもそも、SFってサイエンス・フィクションだしね)という点も共通していると思う。

また、登場人物たちが専門用語を延々と言い合っているというのは、紛れもなく「シンゴジ」の影響下にあると言える。

そして、そうした人物たちのドラマ部分を重視しているのは、「モンスターバース」に通じるところだと思う。なかなか、怪獣が姿を見せないのは、「バース」1作目の2014年版を彷彿とさせる(もっとも、1954年の初代日本版自体がそういう構成だが)。

そうした、ここ最近のゴジラと共存関係を保ちつつも、メインキャラ3人のうち2人が眼鏡キャラだったり、狂言回し的なAIキャラも出てきたりと、本作ならではの要素もある。

このキャラたちのやり取りは確かに面白い。

ただ、この眼鏡キャラやAIキャラが放つ膨大な台詞のほとんどは文系の私には理解できないので、ポカンとしてしまうことが多かった。

理系のアニオタ、特撮オタが絶賛するのは分かるんだけれどね。

なので、文系の自分としては、そして、一応、マスコミ関係者である自分としては、どうしても、怪獣による被害を伝えるニュースのシーンのリアリティのなさとか、誤字脱字とか、そういうことばかり気になってしまうんだよね…。

本作に限らず、日本の多くのアニメやドラマ、映画、コミック、小説のニュースを伝えるシーンでは間違った言葉が使われていることが多い。

とりあえず、バラエティ化したワイドショーはともかく、きちんとしたニュース番組ではアナウンサーや記者は以下の言葉は使わないということを覚えておいて欲しい。

“本日”という言葉は使わない!
→“きょう”(媒体によっては漢字の“今日”を使うところも)

人数の表記に“○名”とはしない!
→“○人”

中高生を“学生”とは呼ばないし、中高生は“学生証”なんて持っていない
→中高生は“生徒”であり学生ではない。だから、身分証も学生証ではなく、“生徒手帳”

とりあえず、最終回まで見た感想としては、つまらないとは思わないが、理系ではない自分にはついていけなかったってのが正直なところかな。

最近、理解できない映画やドラマ=つまらないと短絡的に判断する若者について問題提起するネット記事が話題となったが、本作は確実に理系でない人間には理解できない内容だと思う。
また、怪獣の登場シーンが少ないことに物足りないと感じた人も多いと思う。

ただ、つまらないかと聞かれるとそうでもないんだよね。少なくとも、単なる制作側のマスターベーションにしか思えなかった「アニゴジ」3部作よりは遥かに面白かったしね。

とりあえず、謎の民謡は良かったと思う。効果的にストーリーに組み込まれていたかどうかはさておき、中毒性のある楽曲だと思う。
 
最初はロシアあたりの昔の曲だと思っていたが、インドだと知った時は驚いたが。そして、あの曲が実際の民謡ではなく、作品用に作ったオリジナル曲だということにも驚いた。

とりあえず、本作放送中に「ゴジラvsコング」の日本公開を迎え、相乗効果で盛り上がるという作戦は、緊急事態宣言の影響で「ゴジコン」の公開が延期されてしまったのでなくなってしまったが、「SP」の内容を考慮すれば、いったん、本作を見終えて気持ちを整理してから、新たな気持ちで「ゴジコン」を見た方が良かったということが分かったので、結果的にはこれで良しってことなのかな。

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