MEG ザ・モンスターズ2
日本の映画市場で洋画のシェアが低下しはじめたのは2000年代半ばなので今更、邦高洋低とか洋画不振という言葉を使って、日本のガラパゴス化を嘆いても仕方ないような気がする。
というか、同時期に洋画の大ヒット作もあったからあまりそういうイメージがないが、「もののけ姫」が当時の日本の興行記録を塗り替えた1997年、「千と千尋と神隠し」が「もののけ」の記録を塗り替えた「タイタニック」の記録をさらに塗り替えた2001年、「踊る大捜査線踊るTHE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が邦画実写作品の興行記録を塗り替えた2003年。このあたりで確実に日本の興行は邦高洋低に向けてシフトしていたのは間違いない。そう考えると、日本の興行は既に四半世紀にわたり邦画優位になっているということだ。
だから、米国どころか全世界で大ヒットとなった作品が日本のみでコケても何の驚きもない。
そして、ごくまれたが、米国ではイマイチの興行成績だった作品が日本ではヒットすることもある。本当、日本というのは特殊な市場なんだと思う。
今夏、ワーナー・ブラザース映画は4本の大作をリリースした。
①ザ・フラッシュ
②バービー
③ MEG ザ・モンスターズ2
④ブルー・ビートル(原題カタカナ表記)
このうち、③以外は全て全米興行収入ランキングで首位を獲得している。
①と④はDC原作のアメコミ映画だが、①は日本では興収5.2億円、観客動員数ランキング最高位4位という成績に終わっている。④に至っては現時点で日本公開に関するアナウンスがされていない。
コロナ禍に入って間もない2020年8月に全米公開されたX-MENシリーズのホラー作品「ニュー・ミュータント」が日本で劇場公開されなかったのはリリース時期を考えれば仕方ないと思う。
しかし、米国では興行成績がコロナ前のレベルに戻り、しかも、ハリウッドの大規模ストがあってもほとんど影響なくヒット作が出ているという現状を鑑みると、現時点で日本公開の予定がない④はおそらく、Blu-ray/DVDスルーもしくは配信スルーになってしまうような気がして仕方ない。
②はこれまた、日本での劇場公開予定が立っていない米国では同日公開の「オッペンハイマー」との相乗効果、いわゆる“バーベンハイマー”で記録的な特大ヒットとなり、米国では今年最大のヒット作となったのみならず、ワーナー映画として最大の世界興収をあげてしまった。
同作は東南アジアや中東の一部の国では上映禁止となったが、こうした措置が取られていない主要市場で大コケしたのは日本と韓国だけだ。ちなみに日本では興収こそ5.6億円と「ザ・フラッシュ」を上回っているが、観客動員数ランキングは最高位8位で終わっている。
日本でヒットしなかった要因の一つにワーナー米本社が“バーベンハイマー”のムーブメントに悪ノリして原爆をあざ笑う米ネット民のネタに賛同してしまったことがあるのは間違いない。
だとしたら、韓国ではネトウヨ的な連中が反日映画として喜びそれなりの数字をあげているはずだ。でもそうではない。
だから、リベラルとかパヨクと呼ばれる連中はここぞとばかりに、日韓で同作がヒットしないのは東南アジアや中東レベルの後進国で女性や同性愛者に対する差別が根強いからだというアピールをしているようだ。でも、個人的にはバービー人形というカルチャーが老若男女に浸透していないから日韓ではヒットしなかっただけという気もするけれどね。
ところが、本作③は同じワーナー作品の②に阻まれ全米興収ランキングでは初登場2位という結果になったのに、日本では観客動員数ランキング初登場1位となった。今夏のハリウッド大作では本作以外で首位を獲得したのは実写版「リトル・マーメイド」、「インディ・ジョーンズ」、「ミッション:インポッシブル」両シリーズのそれぞれの最新作だけだ。2018年公開の前作も首位に立っているところを見ると、本当、日本人ってサメ映画が好きなんだなというのを改めて実感する。
そして実際に本作を見て思った。「MEG」シリーズって日本の映画ファンが好むハリウッド娯楽映画なんだよね。確かに中国資本が入っているから、主要キャラに中国人がいるし、悪役は中国人ではない人種にされている。そして、ネトウヨはそれだけで駄作と喚いている。でも、中国要素を除けばポリコレ要素なんて少ないしね。というか、オタク要素がある者なら主人公(ジェイソン・ステイサム)が育ての親となっている中国人少女メイインを可愛いと思うはずたしね。
それにしてもツッコミどころ満載の作品だ。主人公たちは環境保護を訴えている集団のはずなのに、いくら人命に危険が迫っているとはいえ巨大なサメやタコを仕留めてしまうという大矛盾をしでかしている。まぁ、セガールの「沈黙の要塞」みたいなものかな?環境保護を訴えておきながら大爆発していたしね。そういえば、これもワーナー映画だった…。
そして、色んなジャンルを詰め込み過ぎでしょって思った。単なるサメ映画ではないしね。サメとタコのバトルもあるし、「ジュラシック」シリーズのような古代的な生物も出てくる。そして、サメもタコも古代的な生物も関係ないステイサムのアクション・シーンも出てくるし、スパイものの要素もある。海底パニックものみたいにもなるしね。時々、自分が見ている映画が「エクスペンダブルズ」なのか、「ワイルド・スピード」なのか「MEG」なのかそれ以外の作品なのか分からなくなるくらいだ。
ところで、冒頭のシーンでクイーンとデヴィッド・ボウイのコラボ曲“アンダー・プレッシャー”が使われていたが、もしかすると、これって、水圧のプレッシャーを引っかけたダジャレ的な選曲か?
あと、クリス・クロスとリック・ロスで韻を踏むエンディング曲はなんなんだ?