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『メイドランカー!詰り蹴落とし跪け乙女』11月24日(木) 19:00

どんな人気アイドルだろうと、何故かジャニーズ以外のアイドルが出演する映画やドラマ、舞台は話題にならない。

80年代は松田聖子や斉藤由貴、南野陽子、角川系アイドル女優などの主演映画がヒットしていたので(その前の時代なら山口百恵とか)、こういう傾向はアイドル冬の時代と呼ばれた90年代(角川映画の神通力も低下し日本映画がヒットしなくなった時代でもある)に定着したものなのだろう。
そして、その傾向がモーニング娘。によってアイドル人気が復活した90年代末以降も続いているといるということなんだと思う。

80年代までは、ファンと名乗る人だって、そのアイドルの現場に実際に足を運べている人はごくわずかだった。売れっ子になれば握手会など接触系イベントなんて滅多にやらなかったしね。

でも、アイドル人気が復活してからは、特にAKB48が世に出た2000年代半ば以降は、アイドルというのは会いにいけるもの、握手会やチェキ撮影などで接触できるもの、そして、そうした現場で世間話までできるものとなってしまった。

だから、普段見られないアイドルの様々な表情を見られる代替品としての映画やドラマ、舞台の価値はなくなってしまった。

そして、こうした演技仕事の中でもあまりオタクに歓迎されていないのが舞台仕事だ。

理由は2つあると思う。

1つは舞台出演で演技に目覚め、それが評価されると、脱アイドルをはかるようになる=卒業がはやまるからだ。
ミュージカルなどに出演していた生田絵梨花の歌唱力や発声法は明らかに他の乃木坂46メンバーと比べると浮いていたからね…。
つまり、演技志向を高めたまま、アイドルグループに居続けるのは本人にとっても、グループにとってもイメージ的に決してプラスではないということだ。なら、別々の道に進もうとなるよね。

そして、もう1つの理由は、外部との交流が増えることだ。グループ内で活動していれば、共演者はメンバーだけだし、スタッフだっていつもの面々だ。でも、舞台はそうでない。そして、そうした新たな出会いが刺激となり、そこから場合によっては恋愛関係に発展することもある。
大騒動を巻き起こした岡田奈々のように思想が変化することだってある。
というか彼女の場合、実際に舞台での共演を機に恋愛関係に発展しているわけだしね。

映画やドラマは、シーンやカットごとに分割して撮影するから、演者同士が密接になっているのはカメラが回っている時だけだが、舞台は2時間なり3時間なりの上演時間の間、ずっと一緒にいるわけだし、リハも含めれば、それが何度も繰り返されるから、そりゃ、親密になるのは当然だと思う。

そんなわけで、舞台志向のメンバーに対して警戒感を抱くオタクも多い。

本公演もそうしたアイドル出演の舞台作品だ。

主演はAKB48の馬嘉伶(まちゃりん)と武藤小麟だ。
前者はCDシングル表題曲では“ジャーバージャ”1曲にしか選抜されていない。後者に至っては1曲もない。こうした非選抜メンバーにとって、舞台仕事というのは、自分の存在をファン以外にも知らしめるチャンスでもあるから、こういう仕事に積極的にチャレンジすることは悪いことではない。

というか、まちゃりんは確実に演技仕事に注力していると思う。

最近では、短編映画「サンタクロースをいつまで信じてた?」に主演したほか、朗読劇「海辺の街でもう一度、あの日の彼女に会えたなら」などに出演している。

彼女のSNSを見ていると、たびたび、舞台を見に行っているようだから、おそらく、他人の演技を見ることにも自分が演技をすることにも興味があるんだと思う。

そして、本作にはいわゆる歌って踊るアイドルだけでなく声優アイドルも出演している。

全公演ではないが、自分が見た公演には声優ユニット、DIALOGUE+のメンバーである村上まなつ(まなてぃ)が出演していた。

また、本業は女優もしくはタレントだと思うが、アイドルアニメ「シャインポスト」に声優として参加していた中川梨花も出演している。

そうした広義の様々なジャンルのアイドルを集めて、メイド役を演じさせるというのは、なかなかの策士と言ってもいいアイデアだ

ちなみに、自分はまちゃりんとまなてぃ目当てで鑑賞した。

まちゃりん出演舞台を見たのは先述の朗読劇「海辺の街でもう一度、あの日の彼女に会えたなら」以来2度目。まなてぃ出演舞台を見たのは、DIALOGUE+としての朗読イベント「世界はこじつけでできている。」以来2度目だ。両作品とも、一般人がイメージする朗読劇とはちょっと違うとはいえ、これまでの鑑賞作品は、まちゃりんにしろまなてぃにしろ朗読劇だったということを考えると、今回は初の“本格”舞台作品の鑑賞ということになるのかな。

そんなわけで、色々な不安と期待を抱えながら見ることにした。

ぶっちゃけた感想を言わせてもらうと、睡眠不足状態で見るにはかなりつらい内容だった。コメディとうたっているが、そんなに笑えなかったしね。
まぁ、ストーリー展開が想像していたものとは違っていたという点では面白かったけれど。
ただ、AKBの2人がW主演という感じがしないんだよね…。いわゆる小劇場作品なのにキャストは25人もいるから、どうしても、個々のキャラの描き方が散漫になってしまうしね。
あと、女性演出家作品って、やっぱり“ヤオイ(ヤマなし・オチなし・イミナシ)”になりがちなんだよね…。個々のシーンでは面白い箇所もあるが、全体のつながりが弱い。

それから、全体としては、やり直しがきかなくなった日本社会を皮肉ったストーリーなんだとは思うが、相手が許さなくても謝罪し補償しなければいけないみたいなメッセージは日韓関係を彷彿とさせるので、正直なところ素直に楽しめなかった面もあった。

というか、ビジュアルイメージだと、メイド版バトル・ロワイアルみたいな話に思えたんだけれど、確かにバトルシーンはあったが、全くそういう展開ではなかった(=どんどん死者が出て、最後に残るのは1人ではなかった)のは、ちょっと拍子抜けした。


とりあえず、日替わりキャストだったまなてぃのぶっ飛んだ演技は良かった。ついでに言うと、主題歌がやけに耳に残った。

それにしても、まちゃりんって、決して演技は下手ではないんだけれど(時々噛むけれど)、日本語がネイティブでないから、やっぱり、日本人役をやるのは無理なんじゃないかなと思う時があるんだよね…。
外国人とかハーフ、帰国子女の役ばかりでは役者として成長できないから日本人の役を演じているんだとは思うんだけれどね。

《追記》
会場のCBGKシブゲキ!!はミニシアター(映画館)を改造した小劇場だからキャパは242席と少ない。そのステージに25人+挨拶担当の演出家の計26人が立つというのは採算が取れるのだろうかと心配したくなってしまった。


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