ザ・ファブル 殺さない殺し屋
俳優業をやっている現役ジャニーズメンバーは数多いが、その中で映画俳優と呼べるのはわずかしかいないと思う。
キラキラ系映画中心の若手はまだ演技面ではそのレベルには達していないし、中堅やベテランクラスでもテレビドラマや舞台にはコンスタントに出演していても、映画にはあまり出ていない人も多い。また、生田斗真は俳優業を本業としているが、ここ数年は映画の出演がない(11月公開予定の「土竜の唄」シリーズ完結編が久々の映画だ)。
木村拓哉は一見、映画スター的イメージがあり、 声優としての出演作品も含めればこの5年間は毎年、出演映画が公開されている(今年は9月に「マスカレード・ナイト」が公開予定)。
でも、2010年代には声優としての出演作品も含めて映画出演が1本も公開されていない年が5年もある。
そうした色々なことを考えると映画俳優と呼べるのは二宮和也なのかなという気がする。
何しろ、2010年以降だけで11本もの映画に出演している。
この中には山田洋次や原田眞人といった巨匠、名匠と呼ばれる監督の作品もある。
でも、映画俳優のみならず、映画人と呼べるのはと誰かという話になったら、それはもう岡田准一しかいないと思う。
出演映画は2010年以降だけで17本と二宮を大きく上回っている(10月公開予定の「燃えよ剣」を含む)。
そして、ジークンドーのインストラクター資格を持っていることなどを活かして、出演映画でアクションシーンのコーディネーターを務めたりもしている。さらには、カメラを担当した作品だってある。
そうしたアクション嗜好は、海外スターでいえば、トム・クルーズやジャッキー・チェンに匹敵すると思うし、一言でいえば、映画バカなんだと思う。
こんな人、今までジャニーズにはいなかった。
なので、そんな映画バカによる、今では日本では珍しいタイプとなってしまったコメディアクション映画のヒット作の続編ということで期待を胸に鑑賞することにした。
そして、実際に見た感想は最近の日本の実写映画でここまで、純粋に娯楽映画として楽しめるというものはないよねというものだった。
このストーリーとアクションなら、海外でも通じると思う。少なくとも、リーアム兄さん主演サスペンス・アクションをさらに低予算、B級にしたものくらいの支持はされると思う。
まぁ、照明がいかにもな日本映画クオリティで暗いのが難点ではあるが。
あと、エキストラなのか無名俳優なのか知らないが、マスクつけている人とそうでない人が混在していたのは中途半端だった。コロナ禍であることを全面に出して主要キャラにもマスクをさせるか、時代背景をはっきりとさせていないとか、あくまでもフィクションの話だと割り切って、エキストラもノーマスクにするかどちらかでしょ!
それにしても、ファブルって、バカなのか、バカのフリをしているのか、それとも、発達障害みたいな感じなのか分からないキャラだよな…。
それから、ファブルとその“妹”は殺してはいけないということになっているが、例えば、ファブルが駆け抜けた足場が崩れて、それに巻き込まれて死んだ人がいたとしたら、それは死人にカウントされないのか?
というか、この“兄妹”が関わった現場でこの2人が殺していなくても、別の人間の手によって死んだ人間とかいるよね。それはいいの?
あと、平手友梨奈を久しぶりに可愛いと思った。
いつの間にか、反逆児イメージが定着していたし、最近はノンバイナリーなイメージも付きつつあるが、本作での家出少女時代のロングヘアの彼女は可愛いと思った。それから、エロ演技もやるんだと感心した。
それにしても、堤真一は最近では、「砕け散るところを見せてあげる」でもクソ野郎を演じていたが、こういう変質者役が似合うよね。
まぁ、あの声のおかげかな。
そういえば、作品を見進めていけば、堤真一が平手友梨奈が車椅子生活になった経緯を一般人に説明しているシーンはウソだと分かるのだけれど、ボーっと見ている人は混乱するだろうなと思ったかな。
ところで、前作に続いて、レディー・ガガが主題歌になっているのは何故なんだろうか?
まぁ、洋楽不振と呼ばれて久しく、洋楽の最新動向をチェックしていない大多数の日本人にとっては、レディー・ガガ以降、新しい洋楽アーティストがインプットされていないってのもあるのかもしれないのかな(ちなみに、テイラー・スウィフトは日本デビューの時期はガガと近いが、本国でのデビューはもっと早い)。
ジャスティン・ビーバーやエド・シーラン、アリアナ・グランデあたりがギリギリ、多少は洋楽にアレルギーがない人には知られているってレベルかな。
実際、Billboard JAPANの総合チャートで首位に立った洋楽曲って(K-POPを除く)、「ザ・ファブル」前作の主題歌に起用された“ボーン・ディス・ウェイ”以来ないような気がするしね(2011年のヒット曲を2019年の映画の主題歌にするのは謎だが、それくらい、日本人の洋楽最新情報がアップデートされていないってことなんだろうね)。
そして、今回は去年のヒット曲でアリアナ・グランデとのコラボ曲“レイン・オン・ミー”が起用された。前作に比べへばアップデートされているが、結局、ガガしか日本人は洋楽アーティストを知らないのかよってツッコミたくなるのは相変わらずだ。
2020年度のBillboard JAPANの年間チャートで100位以内にランクインした洋楽曲はK-POPを除くと、たったの3曲しかない。
そのうち、ビリー・アイリッシュ“バッド・ガイ”は前年度から引き続いてのヒット曲だし、エド・シーランの“シェイプ・オブ・ユー”に至っては2017年の曲がいまだにヒットしているのかよ?日本人は本当、新曲を聞かないな…と呆れてしまうほどの長期エントリー曲だ。
そんな中、唯一、2020年の最新ヒット曲として年間チャート入りしたのが、この“レイン・オン・ミー”だ。
つまり、日本人の洋楽観は、ガガあたりでストップしたままってことなんだよね。
現在の社会情勢の影響を受け、最新の音楽トレンドを取り入れたテイラー・スウィフトやアリアナ・グランデ、ジャスティン・ビーバーあたりの新作は海外では大成功を収めているが、日本での人気は下降しているから、日本では、ガガがギリギリ受け入れられるサウンドなんだろうね。