室井慎次 生き続ける者
前編が中途半端なところで終わる典型的な2部作映画の前半パートだったので、きちんとした評価は後編を見てからしようと思っていた。
そして、後編である本作を見終えた。
最初はドラマシリーズとして企画していた内容を映画に変更したので尺的に2部作になってしまったとのことだが、この構成に関しては全然、評価できないと思った。
というか、これだけの尺をさいているのにもかかわらず消化不良に終わっていた。
過去作の悪役を再登場させ、新たに事件を起こさせたものの、きちんと事件は解決したようには見えなかった。スピンオフも含めた「踊る大捜査線」シリーズ、いわゆる「ODORU LEGEND」(THEが付くのが正式表記なのかな?)を今後も続けていきたいから、悪役陣を再登板させたいから、今回の事件を完全に解決させなかったという思惑しか感じられなかった。
あと、もうすぐ日向坂46を卒業する丹生ちゃんを出す必要はほとんどなかったね。前編の出番が少ないのは後編で重要な役回りになるからだろうと期待していたが、そんなことはなかった。
まぁ、最近のリベラル寄りの視線だと加害者の再起や加害者の家族の人権にばかりに重きが置かれている風潮があったが、本作では被害者や被害者の家族のことも忘れるなというメッセージをきちんと伝えていたので、その点は評価したいと思う。
それから、役所や児童相談所の実の親至上主義に対する批判を込めていたことも評価できると思う。日本における子どもの虐待被害には、こうした、役所や児相の旧態依然とした家族観のせいで起きているものも多いしね。
でも、室井の愛犬の放尿シーンは意味不明。どうやっても評価できない。
それから、室井を他界させるのはどうかと思う。百歩譲って他界させるとしても、せめて、犯人に殺されるとか、里親として面倒をみていた子どもに殺されるとか、そういう展開にして欲しかった。犯人のせいで家から出てしまった愛犬を探している途中で命を落とす。しかも、その絶命の場面を見せないなんてありえないでしょ。
そして、それ以上にありえないのがエンドロール後に青島が出てきたことだ。
久しぶりに「ODORU LEGEND」が復活したのだから、青島が出てこないのはありえない。多くの人がちょこっとでも出てくることを期待していたと思う。でも、室井と一切絡まない、それどころか室井の死後に線香をあげるといったことすらないというのは何を考えているんだと思う。これなら、出さない方が良かった。
どこまで本当かは知らないが青島役の織田裕二と室井役の柳葉敏郎は不仲だと言われている。だから、共演シーンはなかったのだろう。
そして、今後の「ODORU LEGEND」では青島が主役の正シリーズ作品を作りたいから、織田裕二には復帰してもらいたい。そのためには柳葉敏郎とぶつかることを避けねばならない。だから、室井を殺した。そんな風に見えてしまう。
まぁ、終盤の室井の死とオマケの青島登場を除けば全体的に非常に感動的な作品で、何度も涙を流してしまったんだけれどね。
とりあえず、この前後編の最大の収穫は福本莉子が色んな演技ができると知ることができたことかな。サイコな演技も可愛い仕草も良かった。
TOHOシネマズの幕間映像でフラフラしながら(カメラマンやマネージャーは注意しろよ!)、ハリウッド・スターを呼び捨てにしている態度のでかい奴という悪いイメージをちょっとは払拭できたのではないかと思う。