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ビリーバーズ

好き嫌いはさておき、邦キチの間で今年一番マンセーされている監督といえば、城定秀夫であることは間違いないと思う。
今年公開された城定秀夫監督作品はこれで3本目だ。年末にはもう1本公開されるらしい。
また、メガホンをとっていない脚本担当作品も既に1作品公開されているほか、年内にはもう1本の脚本担当作品が公開予定だ。

個人的には欧米のエンタメ界がここ最近、過度のポリコレ至上主義に傾倒していることに関してはどうかと思うこともある。
映画賞レースなんて、黒人や女性、同性愛者、障害者などに対する差別や偏見をテーマにしていないと選考対象にすらしてもらえないような雰囲気すらあるくらいで、それはやり過ぎだと思う。

でも、その一方で日本映画界に対しては少しはポリコレに配慮しろよと言いたくなる気持ちがあるのも事実だ。

園子温、中島哲也、河瀨直美など鬼才・異才と呼ばれる監督をはじめ、プロデューサーやベテラン俳優による性暴行、セクハラ、パワハラの問題が続々と発覚している。
そして、こうした人たちの作品には性や暴力の描写が激しいものが多い。あるいは、そういう描写がなくても自分の主張を声高に一方的に押し付けてくる作風になっている。

だから、どうしても性や暴力の描写が目立つ、あるいは左右どちらかに振れすぎた思想の作風の監督の作品を見ると、“どうせ、こいつもそっち側の人間なんでしょ?”としか思えなくなってしまっているんだよね。

城定秀夫はピンク映画、あるいはピンク映画版VシネであるエロVシネというジャンルで有名な人だから、性的な描写が目立つのは仕方ないのかも知れないけれど、一般映画でもそちらの方で注目されてしまうのはどうなんだろうかという気もするかな…。
「アルプススタンドのはしの方」のような性描写のない作品でもフェチズムを感じるからね…。

ちなみに今年公開された城定監督作品の内容はこんな感じだ。

「愛なのに」
女子高生に求婚される古書店主の話

「女子高生に殺されたい」
女子高生に殺されたいと願う教師の話

「ビリーバーズ」(本作)
無人島で生活することになった中年男性を含む3人が性欲を剥き出しにする話

全て、年上の男と若い女性の倒錯した関係を描いているんだよね…。

ポリコレを受け入れられない中年男のファンタジー、本番のないAVと言われても仕方ない内容だと思う。

そして、本作を含めた3作品を実際に見てみたが、そのイメージは見終えても全く変わらなかった。

本作の話をしていこう。

邦キチは多分、本作をマンセーすると思う。まるで、本作に登場する新興宗教の信者のようにね。

でも、個人的には良くも悪くも邦キチがマンセーするタイプの邦画でしかないと思った。

無人島で生活する主要キャラの信者3人は男2・女1のいわゆるドリカム編成だ。でも、女1の存在がやけにファンタジーなんだよね。

男2人は月日が経てば無精ヒゲが伸びてくるし、土仕事をすれば、顔も汚れてくる。また、体調不良の時は顔色が悪く見えるし、懲罰を受けている時なんて痩せているのがはっきりとわかる。

でも、“ヒロイン”は取り締まりに来た警察に攻撃されて絶命する(?)直前に顔が血だらけになっているシーン以外は顔がきれいなんだよね。というか、化粧しているよね。無人島でのサバイバル生活を描いているのに、リアリティがないんだよね。
もしかすると、この“ヒロイン”というのは実在しないキャラなのか?極限生活を送っている男2人が見た幻なのか?それなら、“ヒロイン”の顔が汚れないのも納得だが。
警察に攻撃されて絶命したように見えたはずなのに、その後、男のうちの1人とボートに乗っているシーンがあるし、彼女に陰茎を噛みちぎられて絶命したはずのもう1人の男がテロリストとして海外で活動しているシーンもあるので、猶更、幻の存在にも思えてくる。
でも、それならそうと暗示する場面を入れても良かったのではないかという気もする。

まぁ、エロVシネの巨匠の作品だけあって、エロかったけれどね。“ヒロイン”が完全に乳房・乳首を披露する前の濡れたTシャツから乳首が透けて見えるシーンとか定番だけれどエロいしね。
それから、彼女がはいている破れたジーンズの穴に手を突っ込み体を触るシーンとかもエロい。
でも、“ヒロイン”役の北村優衣は、これまで無名に近い存在だったから、エロいイメージが定着してしまうと思うんだけれど大丈夫かな?

吉高由里子はミニシアター系映画で多少注目された上での「蛇にピアス」出演だったから、ヌード女優のイメージはすぐに払拭できたけれど、彼女は難しいのでは?

そして、この時期に新興宗教をテーマにした映画を見ると、嫌でも安倍“暗殺”事件を想起してしまう…。しかも、総理大臣に認められたみたいな台詞もあるから、尚更、安倍と統一教会の関係を思い浮かべてしまうしね…。

結局、統一教会と関係を持っている政党は自民だけでなく、普段、自民を批判している野党にもいるし、公明からしたら連立政権を組んでいる自民が他の宗教団体と深い関係を持っているのは面白くないだろうけれど、公明が統一教会を批判すれば、それは創価学会をバックボーンとする公明に跳ね返ってくるからできないしってことで黙認状態だったんだろうね。
でも、普段、韓国人差別ばかりしていて、K-POP人気は捏造だとかほざいている連中が、韓国がルーツである統一教会と自民が深い関係にあることを黙認しているのは意味不明だよね。
結局、ネトウヨとかパヨクと呼ばれる連中ってダブルスタンダードだらけで、ポリシーがないんだよね。

そういえば、自分は本作をテアトル新宿で鑑賞したが、同館がodessaという音響システムでの上映をウリにしているのって違和感しかないんだよね。同館の上映ラインナップって、低予算のミニシアター系邦画が基本だから、音響システムにこだわった上映作品なんてほとんどないしね。
同じシステムを導入しているミニシアターでも、ヒューマントラストシネマ渋谷は、日本ではヒットしそうにないからミニシアター公開になっているだけの欧米作品とか、配信作品だけれど音にこだわっているNetflix作品の先行上映、洋楽系のドキュメンタリーなどを上映しているから分かるんだけれど、“テアトル新宿ではね…。しかも、城定作品でしょ…”って思ってしまった。

でも、実際に見てみると、独立系邦画作品としては異例と言ってもいいほど、音響面でも見る価値のある映画だった。

というか、本作って、城定作品史上最大の大作だよね。CG・VFXも使われているし、主要キャラは3人しかいないけれど、クライマックスの信者vs警察のバトルシーンはチャチな画にはなっておらず、迫力もあったしね。

とりあえず、ドリカム編成ってうまくいかないよねってのを改めて認識することができた作品だった。

邦楽だろうと洋楽だろうと、この編成の音楽グループって、途中から男1人が抜けて、男女1人ずつのデュオになることが多いからね。
邦楽では、Dreams Come True以外では、Every Little Thingとかいきものがかりがそうだし、洋楽ではスウィング・アウト・シスターもそう。トンプソン・ツインズは元々は7人編成だったが、全盛期はトリオ編成で、その後、デュオになって人気が下降したパターンだ。

結局、ドリカム編成がうまくいかないのって、男女比のせいなんだろうね。同じ3人組でも男1・女2の編成だとここまでもめない気がするんだよね。

つまり、ドリカム編成がうまくいかない背景にあるのは嫉妬なんだと思う。

男は複数の女性を同時に妊娠させることはできるが、女性は同時に複数の男との間の子どもを妊娠することはできない。これに尽きるんだと思う。
女性アイドルは恋愛発覚・結婚・出産で一気にファンが減るが、男性アイドルが30代、40代になっても活動できるのもそれが理由なんだと思う。

まぁ、3人組グループがデュオになってしまった理由の全てが恋愛・結婚・出産ではないけれど(というか、ドリカムは薬物だし)、恋愛関係や肉体関係がなくても、いつも一緒にいる女性が同じ職場内で自分より別の男の方と仲良かったりしたら、大抵の男は嫉妬するよね。職場の後輩女性社員が自分ではなく同期の別の男に仕事のことで相談したら嫉妬するのもそれと同じ。

本作でも、男2人が“ヒロイン”に性的なものを感じるようになったことがバランスが崩れた理由だしね。それでも、“ヒロイン”が両方を無視していれば、まだ均衡は保てていたのに、若い方の男のみに性的なものを感じてしまったから、そりゃ、バランスは崩れるよね。しかも、若い方とは相思相愛でいい感じになっていたのに、年上の方の男に性的な行為を要求され、しかも、好きな彼の前でやるように言われるんだから、そりゃ、惨劇になるよね…。

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