彼岸のふたり
本作を見ようと思った最大の理由はイロハサクラのメンバーが出ているからだ。しかも、イロハサクラの楽曲も使われている。そりゃ、見に行きますよ。しかも、初日は舞台挨拶付きの上映だ。そんなわけで、初めてイロハサクラの現場に足を運ぶことができた。何しろ、関西のグループだから、関東で行われるライブやイベントに出演することなんてほとんどないからね。
初めて生で見たイロハサクラの朝比奈めいりは魅力的な人だった。ワンコーラスだけとは言え、主題歌も歌ってくれたのでドルオタ的にも満足できる舞台挨拶だった。
映画自体も彼女の魅力のおかげで成立していると言ってもいいくらいだった。まず、アイドルグループのメンバーがほぼスッピン状態で主人公を演じるというのがすごい。
そして、救いようのない話。というかクソみたいな大人がたくさん出てくる作品で、見ていて怒りをずっと感じてしまうのに、この作品をずっと見ていたいと思うのは、この主人公が魅力的な人物であることに加えて、朝比奈めいりの演じ方が良いからだと思う。
擁護施設を出たばかりで世間を知らない女性という役だからこそ、本格的な演技は初挑戦に近い彼女がハマったというのはあるのではないかと思う。
それにしても、クソな大人だらけの作品だね。
主人公が働くことになったホテルの先輩スタッフである外国人女性(アビちゃん)と、主人公が通うようになる食堂を経営するシングルマザー、この食堂と同じ商店街に属する店のおっちゃん、この辺は良い人だけれど、モブキャラを除けば○したくなるような奴ばかりだ。
一番のクソは言うまでもなく主人公の母親だ。子ども時代の主人公に対してネグレクトしていたのに、擁護施設を出て働き出したと察知した途端、金をせびりに来るなんてクソの極みだからね。
つい、自分の母親を思い出してしまった。後期高齢者となった今ではだいぶマシだけれど、働いていた時は本当、金銭感覚がルーズで、しょっちゅう、督促の支払いをこちらがさせられたし、金がなくなると、貸してくれと言われることも多かった。そうしたかつての母親の姿を思い出してしまい、本当、腹が立ってしまった。
そして、次にクソなのは子ども時代の主人公を虐待していた継父だ。ジェンダー差別になるからこういうことは言いにくい風潮にはなっているが、生物の本能として交際相手の連れ子に冷たくなるのは仕方がないことだとは思う。オスはメスに自分の子どもを産んでもらいたいと思うし、そのメスが連れている血のつながらない子どもなんて興味ないというのは自然の摂理だと思うしね。そして、メスもオスに興味を持ってもらいたいから、自分と血のつながった子どもにも冷たくなる。でも、人間は単なる生物ではないんだから、男は子連れの女性に興味を持ったのなら、その子どもにも興味を持たなくてはダメだし、女性もきちんと自分の血を継ぐ子どものケアをすべきだと思う。
擁護施設の園長も酷かった。毒母の性的誘惑に負けて主人公の勤務先を教えるなんて擁護施設を運営する資格ないからね。
そして、主人公の勤務先となったホテルのマネージャーも酷い。ホテルに押し掛けて来た母親が明らかに毒親であることが分かっているのに、一般客に対する見映えを気にして主人公に押し付けてしまい、その結果、親子のイザコザが起きてしまったのに、自分は責任を取らず主人公をクビにしてしまうんだからね。
それから、もう1人のマネージャーも酷かった。こちらは主人公と接点を持つことになる地下アイドルのマネージャーだけれどね。
自分のところの“商品”に手をつけただけでもクソなのに、妊娠させてしまうし、そもそも、結婚しているのにアイドルと関係を持ってしまうんだから、本当クソだ。
イマジナリー・フレンド的、妖精的な謎の助言者も、苦しみから逃れるための選択肢は“自殺するか、母親を殺すか、体を売るしかない”とか結構酷いことを言っていた。
そんな、今すぐ○んで欲しい大人だらけの世界なのに、この話をずっと見ていたいと思うのは、何度も言うが主人公が魅力的で、しかも、その主人公を演じる新人女優の演技も魅力的であるからにほかならない。
レイトショー上映だから、日本アカデミー上映の審査対象にならないのが残念で仕方ない。思わぬ掘り出し物だった。
《追記》
それにしても、シネマ・ロサって、というかミニシアター系邦画を上映している映画館ってどこもそうだけれど、初日って関係者が客として来ていて、それに気付いた舞台挨拶登壇者や劇場関係者とロビーで談笑している様子をよく見かけるが、アレって、一般観客を蔑ろにしている行為だから、そういうのは控え室でやった方がいいと思う。そうした身内ノリが一般にミニシアター系邦画が受け入れられない要因となっているのでは。もっと、作品を見てもらいたいなら、身内ではなく一般観客にアピールした方が良いと思う。せっかく良作を作ったんだから関係者でなく映画ファンにもっと目を向けようよ。