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「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編

前作「遊郭編」同様、今回も初回と最終回が放送枠拡大バージョンとなった。全11話構成で初回と最終回が枠拡大という放送の仕方は全12〜13話で毎回同じ尺のテレビアニメのフォーマットではなく、明らかに地上波のゴールデン(プライム)枠で放送される連ドラの作りだ。これは、良くも悪くも「鬼滅の刃」がフジテレビのコンテンツとなった影響だと思う。

しかも、「遊郭編」の時は初回60分、最終回45分(TOKYO MXなどでは35分枠)だったが、今回は初回こそ同じ60分枠だが、最終回は70分枠(MXなどでは60分枠)と大幅に拡大されている。

それにしても、フジで放送したバージョンとMXなどで放送されたバージョンでは放送枠が10分も違うんだから、フジ放送版ではいかに大量のCMがはさみこまれていたかというのが分かるというものだ。

というか、フジ版のCM量が多いのは最終回拡大スペシャル版に限ったことではない。
初回拡大スペシャルも通常の30分枠の2〜10話も、フジ版には次回予告を兼ねたオマケコーナーの「大正コソコソ噂話」がなかった。
フジ版の次回予告は最後にサブタイトルの文字が掲示されるだけだ。まぁ、「噂話」のかわりに、冒頭に「双六大好き善逸の今日の一振り!」というワケの分からないミニコーナーがついてはいたが…。

深夜アニメとしては異例の高視聴率が期待できるからスポンサーとしてもフジ放送版にCMを出稿したいし、フジとしても1本でも多くのCMを流したい。とはいえ、「噂話」を丸々カットしただけのバージョンで放送したら、熱心なファンはフジでの放送では見てくれない。だから、ほとんど意味のないコーナーではあるが、MX版では見られない映像を流せば、ファンはフジ版とMX版の両方を見てくれるという判断なんだと思う。

もっとも、この「噂話」がフジ版にないのは、鬼滅ブームの礎を築いたMXやBS11などに対するリスペクトというわけでは全くないと思う。

何しろ、フジ版放送の直後、つまり、MX版放送のほぼ6日前(正確には5日と23時間30分前)に解禁されている配信版では既に「噂話」付きで流れているからだ。

つまり、「噂話」を見たい人はMXなどでの放送を待たなくてもフジ版の放送直後に配信で見られるわけだから、結局、コアなアニオタ層がMXやBS11を無視するとうるさいから配慮しているアピールをしているだけということだ。そして、内容はないけれど「双六」が見られるのをフジ版だけにしているのもフジ版の視聴率を上げるための戦略ということだ。

というか、最終回に限っては次回予告を兼ねた「噂話」がなく、フジ版、MX版ともに、次回作「柱稽古編」の特報が流されていたので、総尺はフジ版の方が長かったりもする。フジ版最終回はいつもの冒頭ではなく、エンディング後に放送された特報の前に付けられるという形ではあったが、「双六」コーナーは相変わらずあったからね。

「刀鍛冶の里編」の内容自体についても語っておこう。

放送開始前は原作既読のファンから「刀鍛冶の里編」はつまらないという声がよくあがっていた。

確かにメインの4人組のうち、竈門兄妹でない2人(善逸、伊之助)がほとんど出てこない。まぁ、仮に4人組バンドの最新アルバムが出たとして、そのうち、全メンバーが参加している楽曲が1〜2曲しかないとなったら、そのアルバムをそのバンドの作品として認められないよねという感情と同じだ。

フジ版の意味不明な双六コーナーがあったのは、1本でも多くCMをぶち込みたいという編成・営業的な理由もあるが、ファン投票では(まぁ、腐女子の組織票だが)世間的に知名度の高い竈門兄妹より人気があるキャラである善逸をどこかで出さないと見てもらえないという不安もあったのではないかと思う。

でも、実際に見てみると、「無限列車編」や「遊郭編」のようなスペクタクルな要素や感傷的な展開は薄いけれど、結構面白いんだよね。

しかも、この「刀鍛冶の里編」では上弦の鬼2体が退治されている。
「無限列車編」では1体も退治できない上に柱が死去、「遊郭編」では1体のみの退治に終わった上に柱が重傷を負ったことを考えれば、2体も倒し、柱が生死に関わるような状況に陥っていない本作はストーリーが一気に進むエピソードと言ってもいいのだと思う。

というか、禰󠄀豆子が鬼の弱点である太陽を克服し、片言ではあるものの言葉を話せるようになったのだから、かなりストーリーは進んだと言っていいと思う。
さらにはっきりとは明かされてはいないものの、結局、柱を含む鬼殺隊って、結局、鬼と紙一重な体質の人が多いんだなというのが何となく暗示されていたし、禰󠄀豆子が太陽を克服したことにより、敵のボスである鬼舞辻無惨が鬼殺隊を殺したりするために自分の部下となる鬼を量産する必要がないことを悟ったりもするし、結構、「鬼滅の刃」というコンテンツ全体を見通した上では重要なエピソードだったのではないかと思う。

それにしても禰󠄀豆子が言葉を取り戻した時の演技は最高だった。やっぱり、鬼頭明里ってアイドル的人気のある若手女性声優の中では頭一つ抜けた存在だと思う。そりゃ、次から次へと出演依頼が来るわけだ。
何しろ、「英雄王」では国王陛下が転生した美少女剣士の赤ん坊、幼児、美少女時代を演じわけたくらいだしね。可愛いだけじゃないんだよね。

また、これまでの展開では、主人公・竈門炭治郎の耳飾りが旭日旗っぽいイメージだったりすることや、ネトウヨ思想の者が好むアニメに大正や昭和初期を舞台にした作品が多いことなどから、「鬼滅の刃」もウヨ寄りの作品に思われがちなことが多かった。

でも、「刀鍛冶の里編」を見て、そうした考えは吹き飛んだ。本作で鬼殺隊に追い詰められた鬼が“弱い者いじめするな”と発言していたからだ。

どう考えても強大な力を持った鬼は弱い者ではない。というか、大量の一般市民の命を奪っているわけだしね。
でも、鬼からすると人狩りは自分たちが生き残るためにやっているだけのことだから、それを悪事だなんだと執拗に追及してくる鬼殺隊は弱い者いじめだということなのだろう。

その発想って自民党や自民の支持者そのものだ。連中のやっていることは間違いなく国民を苦しめている。でも、連中からすれば自分たちが楽に生活するためにやっているだけという認識しかない。だから、野党やマスコミ、自民支持でない国民からの批判が受け入れられないのだろう。

結局、「鬼滅の刃」における鬼というのは為政者などのメタファーなんだろうね。

ところで、その鬼たちのトップである鬼舞辻無惨って、どう考えてもマイケル・ジャクソンがモデルでしょ。というか、正確に言うと、“スムーズ・クリミナル”のマイケル。マイケルの命日の時期にこんなことを言うと熱心なマイケルのファンには怒られそうだけれどね。まぁ、マイケルの人間という存在をこえたような超人的な佇まいは鬼とかバンパイアっぽい雰囲気はあるけれどね。でも、悪役にするのはどうなんだろうかという気もするな…。

ところで、今回の「刀鍛冶の里編」のテーマ曲はオープニングがMAN WITH A MISSION × miletの“絆ノ奇跡”でエンディングはリーディング・アーティストのポジションがテレコになったmilet × MAN WITH A MISSIONによる“コイコガレ”となっていた。

これまでのLiSAやAimerのようなアニソン系レーベル所属アーティストではないものの、狼バンドにしろ、miletにしろ、今までに何度もアニメのテーマ曲を手掛けてきたので、アニメファンやアニソン好きに、この両者が今回のテーマ曲担当となったことを批判する者はほとんどいないと思う。

でも、盛り上がりに欠けるんだよね…。良い曲だし、いかにもアニソンって感じなんだけれどね。

劇場版「無限列車編」のLiSA“炎”、テレビ版「無限列車編」のLiSA“明け星”、「遊郭編」のAimer“残響散歌”はBillboard JAPANで首位を獲得しているからね。
まぁ、同時期に「推しの子」のYOASOBI“アイドル”、劇場版「名探偵コナン」のスピッツ“美しい鰭”という非オタも好きになる強力なアニソンヒットがあるせいで、「刀鍛冶」楽曲に対する注目度が伸び悩んだところはあると思う。

鬼滅はオワコンだなんだと言う人もいるけれど、初回は8%、最終回は7.6%と23時台放送の番組としては超高視聴率と言ってもいい数字をあげている(というか、現在のアニメとして考えれば放送時間帯関係なく超高視聴率だ)。

そう考えると、全然オワコンではない。
しかも、善逸という人気キャラがほとんど出ていなくてもこれだけの視聴率なんだからね。
つまり、善逸好きな腐女子などが離れただけで、非オタの鬼滅好きは変わらずといった感じなんだろうね。

楽曲の盛り上がりが欠けたのは、熱心な腐女子が離れたことと、非オタが他のアニソンを聞くので忙しかったって感じなだけなのかな?

ところで、次の「柱稽古編」はテレビアニメとして作られると発表されているが、「遊郭編」や「刀鍛冶の里編」のように全11話(初回や最終回が枠拡大だから通常の枠だと全13話程度)構成にするのは無理な内容らしいしね。原作の量からすると4〜5話分なのかな?となると、テレビスペシャル的になるのか?それとも、4〜5回の短期的な連続シリーズとして放送するのかな?あるいは、イベント上映後にテレビ放送とか?

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