劇場版「BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage」
スマートフォン向けゲームアプリというのは利用者に1円でも多く課金させることを目的としているから、スタート時点でもかなりのキャラクターがいるにもかかわらず、プロジェクトが進むに連れて、さらに次から次へと新たなキャラクターが登場することになる。
なので、ゲーム絡みのアニメ作品におけるキャラクター描写やストーリー展開には不満に思うことが多い。
「IDOLY PRIDE」なんて、メイン扱いのアイドルグループのライバルグループとして、スフィアやTrySailのメンバー全員をキャスティングしたにもかかわらず、アニメの中では、ほんのちらっと登場しただけで終わっている。
運営側としては、もっと、スフィアやTrySailのメンバーの演技や歌を楽しみたかったら、ゲームをプレイし、課金しろって方針なんだよね。だから、アニメはあくまでもゲームの販促ツールでしかない。なので、運営側としてはアニメが中途半端な完成度でも問題がないんだよね。
「魔法少女まどかマギカ」はアニメ史に残る傑作だと思うが、その外伝である「マギアレコード」に関しては、ゲーム発のプロジェクトになっていることから、「まどマギ」よりも登場人物の数が遥かに増大している。
その結果、「マギレコ」では、「まどマギ」のように、特定のキャラに感情移入するような鑑賞の仕方はしにくくなってしまっている。
多くのファンにとっては、自分の好きな声優が演じているキャラに注目するみたいな鑑賞の仕方になっているのではないだろうか。
こうした登場人物が多いゲーム絡みのプロジェクトのアニメ版におけるファン心理が究極の形となってあらわれたケースがガールズバンドを描いた「BanG Dream!」(以下バンドリ!)ではないかと思う。
何しろ、主人公が所属するバンドPoppin'Party(以下ポピパ)よりも他のバンド、Roseliaの方が人気が高いからね…。
まぁ、確かにRoseliaの楽曲はレベルが高いし、カッコいい要素もあるから、女子の憧れの対象にもなるし、アニメやアニソンに興味がない人にも好かれる要素はある。
というか、嬢メタル系バンドの楽曲に近いから、そっち系の音楽が好きな人にもアピールできるしね。
そういえば、嬢メタル界って最近、メンバー脱退とか活動休止とか不穏な動きが多いよね。
このシーンのムーブメントの礎を築いたAldiousはメンバーチェンジが多いことで知られてはいるものの、ボーカリストの交代劇が今回で3回目というのはさすがにバンドや運営自体に問題があるとしか言えないよね。
しかも、Aldiousからトップランナーの座を奪い取ったLOVEBITESですら、バンドの中心人物が脱退し、活動休止だしね…。
そして、厳密には嬢メタルバンドではないけれど、Aldious人気の下降には多少は影響したであろうメタルダンスユニットのBABYMETALも曖昧な言い方ではあるものの、活動休止のような発表をしているしね…。
元々、メタルという音楽は配信ライブには向いていないし、音源もストリーミングよりはフィジカルで聞かれるジャンルだから、コロナ禍になって、ライブの開催やCDのリリースが以前のようにはできないというのも影響しているんだろうね。
それに、嬢メタルというのはアイドル的な人気でもっている部分もあるから、ライブを含むファンがフィジカルに参加できるイベントがないと人気下降は免れないってのもあるんだろうね。
それはさておき、本題に入るが、今回のFILM LIVEではバンドリ!関連の7バンドが参加している。2年前の前作は5バンドの参加だったから、やはり、ゲーム絡みのアニメ作品というのは年数を重ねるごとにキャラクター数が増大していくものなんだということを改めて実感する。
まぁ、参加バンドが増えた分、尺もちょっと延びたから、ライブビューイング気取りの2000円均一の入場料金も前作ほどボッタクリ感はせずに済んでいるけれどね。
ところで本作の構成が、オープニングアクトと思われても仕方ないような形で登場する主人公バンドのポピパでスタートし、本編最後にもう一度、ポピパにパフォーマンスさせて幕を閉じるという苦肉の策になっているのは、実質的なトリは一番人気のRoseliaにしたいからなんだろうね。
それにしても、フルコーラスで演奏する曲とばっさり、ワンコーラスで終わる曲と混雑しているのは謎だ。
まぁ、一応主人公のポピパ以外の各バンドの持ち時間を均等にする都合上、尺的にフル尺での使用に向かない曲もあるってことなんだろうね。
そういえば、アンコールは3バンドのコラボ曲となっていたけれど、何故、全バンドのコラボではなかったの?大人の事情?だったら、一応主人公のポピパとか、割り切って一番人気のRoseliaの曲でも良かったのでは?
大人の事情と言えば、やっぱり、バンドメンバーの全員がボーカルを取っている。曲によってはドラマーですら、リードボーカルを取るパートがあるというバンドリ!関連の楽曲の構成って不自然だよね。
まぁ、声優がバンドメンバーを演じていて、CDを買わせるためにはリードボーカル以外のパートを担当している声優にも歌わせないとならないというのは分かるけれどさ…。普通のバンドなら、ドラマーなんて、バックコーラスにすら参加しないこともあるからね…。勿論、ドン・ヘンリーやC.C.B.のように歌うドラマーもいるけれどね。
それから、同様の理由だけれど、全メンバーに均等にMCがあるのも不自然。普通のバンドだと、ライブではメンバー紹介コーナー以外のMCはボーカル以外しゃべらないなんてことも多いしね。
あと、観客がペンライトをずっとふっているのも違和感あるな…。それって、バンドじゃなくて、アイドルか声優やアニソン歌手のライブだよねって思う。まぁ、バンドのフリをしているけれど歌っているのは声優だからね…。とりあえず、グッズとしてペンライトを売りたいという大人の事情なんだろうが…。
現実世界でもSilent Siren(サイサイ)のようにアイドル的支持をされているバンドもあるし、というか、サイサイはポピパともコラボしているから、必ずしも、ガールズバンドの現場でペンライトがふられている描写がデタラメとは言えないんだけれどね。
それにしても、本作では、観客の歓声とか掛け声も入っていたが、現実世界では、特に日本では、この1年半ほどの間、ライブ会場では観客の発声禁止となっている現場がほとんどだから、全編、観客の歓声だらけの本作を見ると違和感あるんだよね…。
まぁ、バンドリ !の舞台が2020年以降の世界とは明言していないから別にいいんだけれどさ…。