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マエストロ: その音楽と愛と

毎年秋から年末にかけて恒例となっている賞レース向きNetflix映画の連続先行上映は当初、今回の4本目となる本作で終わるはずだったが、「雪山の絆」が上映されることになったので、これが打ち止めではなくなってしまった。

賞レース向きと言えば、米国ではネトフリ配信で公開される「May December」が日本では先行上映どころか、ネトフリでの配信も決まっていないのは謎だが…。ネトフリが世界的に権利を持っていないから、国や地域によって配給会社が異なり、公開の仕方も様々ってことなのかな?

本作は今回の連続上映作品5本の中で唯一、アカデミー作品賞にノミネートされる可能性があると言われている作品だ。あとは、「雪山の絆」が国際映画賞にノミネートされる可能性があるくらいだろうか。

それにしても、マーティン・スコセッシとスティーヴン・スピルバーグの2大巨匠がプロデュースを務めているとは驚きだ。スコセッシ監督はネトフリで「アイリッシュマン」、アップルで「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」といった具合に最近、配信系会社で監督作品を発表しているから驚きはないが、スピルバーグ監督は一時期、配信映画は映画ではない、だから、アカデミー賞のノミネート対象にすべきではないといった趣旨の発言をしていただけに、ネトフリ映画を手掛けたことは驚きだ。

おそらく、彼を心変わりさせたのは新型コロナなんだと思う。2020年、彼が設立者の1人となっているドリームワークスの作品「シカゴ9裁判」がコロナの影響でパラマウントが劇場公開を断念し、ネトフリによる配信及び限定劇場公開という形で世に出ることになった。

これを機に方針を転換したのだろう。

コロナ禍以降、日本でも米国でも、邦画でも洋画でも、大人向けのシリアスドラマ作品の興行成績は振るわなくなっている。感染リスクを警戒して中高年が映画館に行くのを控えるようになったからだ。

そんなわけで、賞レース向けのドラマ作品に配信系会社のものが増えた。そうした変化を受けて、せっかく、自信作を作っても見てもらえないのでは意味がない。配信であろうと、見てもらえる場があるなら積極的に利用しようということなんだと思う。

そんな2大巨匠と、「アリー/スター誕生」で高い評価を受けたブラッドリー・クーパーが手を組んだ作品ということで大いなる期待を持って鑑賞することにしたが、つまらないね…。

レナード・バーンスタインは男女問わず様々な相手と関係を持つが、結局、一番愛しているのは妻で女優のフェリシア。その彼女も不貞を働き続ける夫に対し怒ったりもするが、結局、彼を愛し続ける。そうしたバースタインの恋愛遍歴や夫婦関係に焦点をあてた作品かというとそうでもない。

それでは、指揮者、作曲家、ピアニストなど幅広い活動で評価された音楽家・バーンスタインの音楽性を初心者にも分かりやすくまとめてくれるクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」のような作品かというとそうでもない。

バーンスタインの知識があれば何とか見られるが、これは何の場面という説明もきちんとしないし、長回しのシーンもあるので、クラシック音楽に興味がない人が見るのはつらいと思う。自分はかつて、FM fanという幅広いジャンルの音楽情報を仕入れることができる雑誌を購読していたから、ある程度、展開を把握できたけれどね。

まぁ、描かれる時代に合わせて画面サイズや色味を変えるのは、映画マニアや評論家が好きなやつだから、そうした映像表現の面では評価されると思う。
ちなみに、青年時代がモノクロ・スタンダード、中高年時代がカラー・スタンダード、晩年のシーンがカラー・ワイドという構図だった。大雑把に言えば、その時代の主流のスクリーン・サイズに合わせたといった感じなのかな?

勿論、青年時代から晩年までという朝ドラ方式で(朝ドラだと少年時代もやらされるが)バーンスタインを演じ、朝ドラのようにコントに思わせない演技を披露したブラッドリー・クーパーが良かったのは言うまでもない。

でも、映画としてはつまらなかった。

そう言えば、終盤の晩年のシーンでティアーズ・フォー・フィアーズ“シャウト”が使われていたが、同じティアーズ・フォー・フィアーズを使うなら、“ルール・ザ・ワールド”の方が作品の趣旨に合うのではと思った。

ところで、ネトフリ映画の劇場公開版だと最後のネトフリのロゴの後、黒味に下の方に小さく映倫マークが映し出されるがそれがなかったようだったが何故?

本作を鑑賞したアップリンク吉祥寺は上映スケジュールが過密状態だから、映倫マークを確認せずに映写を止めてしまったのか?それとも、ロゴが映し出されてすぐに場内を明るくしてしまったので小さい映倫マークを判別できなかったのか?あるいは、今回鑑賞したスクリーンは上映中に誰かが立ち上がったり、スクリーン前を横切ったりすると映し出されたものの一部が見えなくなってしまうので、ロゴが出た瞬間に立ち上がった奴のせいで見えなくなってしまったのだろうか?

まぁ、ネトフリ映画の冒頭に流れるロゴではいつもの音楽が流れなかったので、本作に限ってはいつもと仕様が異なる可能性もあるし、既に配信もスタートしたので映画の上映ではなく、配信作品を投影しただけという扱いになり映倫マークが外されたという可能性もゼロではないが。

そうそう!昔の映画館って、エンド・クレジットが全て流れ終わる前、最後の映画会社ロゴが出る直前直後あたりで幕がおりて、場内も明るくなるってところが結構あったよね。アップリンクって、パワハラ・セクハラという昭和の悪しき習慣が残っているところだから、上映システムも昭和の雑なままなのかな?

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