『SHOGUN 将軍』エミー賞®受賞記念上映 ~第一話、第二話~
コロナ禍に入りディズニーは配信に重きを置くようになり、それが興行成績の低迷に繋がった時期があった。
多くの国や地域で劇場が休館していたり、営業していても動員数が少なかったのでディズニープラスの加入者を増やすことで利益を得る方向にシフトしたというのは一般的な企業の戦略としては間違っていない。
しかし、さんざん映画館で予告編を流していた作品の劇場公開を見送り配信オンリーにしてしまったり、劇場公開されても配信開始と同時だったりするというのは映画ファンや映画館に対する裏切り行為でしかない。
だから、映画館はディズニー映画のプロモーションを積極的にやらないようになった。
また、観客の方も、配信オンリーの作品が増えたり、劇場公開と同時配信はなくなったけれどすぐに配信される作品が多いこと、マーベル作品に配信ドラマとリンクしたものが増えたことなどを背景にディズニー映画は配信で見ればいいやという意識が高まっていった。
だから、ディズニー映画(旧フォックス系含む)の興行成績は伸び悩むこととなった。
そんなディズニー映画の興行成績がマーベル作品以外で復調するようになったのは世界的には2022年の年末公開の「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」、日本では2023年初夏公開の「リトル・マーメイド」からだ。
そして、今夏、米国では「猿の惑星/キングダム」、「インサイド・ヘッド2」、「デッドプール&ウルヴァリン」、「エイリアン:ロムルス」とディズニー配給4作品が週間の全米興収ランキングでトップに立った。現時点での年間ランキングは1位が「インサイド・ヘッド2」、2位が「デッドプール&ウルヴァリン」なので完全復活と言っていいと思う。
日本でも今年公開の洋画1位が「インサイド・ヘッド2」、実写洋画1位が「デッドプール&ウルヴァリン」だから、ディズニー映画を映画館に見に来る人が戻ってきたと言っていいと思う。
その一方で、ディズニープラスは苦戦しているようだ。立場が逆転したということなのだろう。
だから、エミー賞を受賞した配信ドラマシリーズである本作の冒頭2話を映画館で上映し、これを見て気になった人がディズニープラスに入ってくれることに期待する作戦を実行したのだろう。
とりあえず、海外ドラマのイベント上映としては異例の国内観客動員数ランキングのトップ10入りを果たしたので興行としては大成功だと思う。
ただ、これだけのために解約が面倒と言われているディズニープラスに加入する人が増えるとは正直なところ全く思わないが。
試しに今回の特別上映で冒頭2話を見た感想を一言で言えば、最近のテレビ局が製作委員会に入っている時代劇映画や若者受けを狙った大河ドラマよりも王道の時代劇だと思った。
また、日本人はヨーロッパ人を、ヨーロッパ人は日本人をお互いに野蛮人と思っているというのが公平・公正に描かれていて、どちらもほめられたものではないときちんと描写していることには感心した。
現在はハリウッドが活動の場となっている真田広之がプロデューサーに名を連ねているからこそ、こうした真の意味でのポリコレ描写になっているのだろうと思う。
最近のハリウッドのポリコレ仕様で言えばヨーロッパの侵略行為が全て悪という描き方になるし、ひと昔前なら日本は野蛮な未開の地だったという描写になっていたので、これはヒロユキ・サナダ効果と言っていいと思う。
それから、宗教関係者が為政者に口を挟むところなんて、日本人が見たら嫌でも現在の統一教会と自民や維新などとの関係を思い浮かべてしまう。
ただ、作中でポルトガル人やポルトガル語を学んだ日本人の台詞が英語なのはどうにかならなかったのだろうかとは思った。
あと、アンナ・サワイは外国生まれということもあって、若干、日本語の時代劇台詞に違和感があった。
違和感と言えば、エンドロールが1話、2話それぞれのラストに入るのではなく、2話まとめて本編を流した後に、2話分続けてエンドロールを流すというワケのわからない上映の仕方になっていたのが謎だった。イベント上映であることは分かっているのだから、1話ごとに流しても良かったのではないかと思う。
あるいは、雰囲気を壊したくないと言うのであれば、リメイク版「宇宙戦艦ヤマト」シリーズのように劇場上映版用に、その時上映した全エピソード分をまとめたエンドロールを作ればいいのにと思った。