トランスフォーマー/ビースト覚醒
本作はスピンオフもしくはエピソードゼロ的作品と言われていた「バンブルビー」を含む実写映画版「トランスフォーマー」シリーズの7本目となる作品だ。
これまでの6作品で一般的に評価が高いのは2007年の1作目と2018年(日本公開は翌年)のスピンオフ的作品「バンブルビー」だけだ。
2009年の2作目「トランスフォーマー/リベンジ」はラジー賞のワースト作品賞を受賞してしまうほど酷評された。
個人的にはシリーズ最低作品は2014年の4作目「トランスフォーマー/ロストエイジ」だと思うが、これは見ているうちに睡魔に襲われ目の前に映し出されている映像がよく分からなくなってしまったほどだった。
何故、「トランスフォーマー」シリーズが酷評されるのかと言うと、それは上映時間が長い割に(2時間以内に収まっているのは「バンブルビー」だけ)内容がないからだ。まぁ、これは本シリーズを手掛けている(監督は5作目まで。前作「バンブルビー」と本作はプロデューサー)マイケル・ベイの関連作品全般に言えることだが。
マイケル・ベイ作品ってしつこいくらいドンパチやっているシーンを延々と見せるから上映時間が長くなっているんだよね。延々と続くアクション・シーンを刈り込み、くだらないギャグをカットすれば2000年以降のほとんどのマイケル・ベイ作品は30分以上は短くできるからね。
オタク気質の連中にはドラマの場面よりアクション・シーンが延々と続く作品を好む傾向があるが(「ガールズ&パンツァー」シリーズとか「怒りのデス・ロード」が評価されるのはそういうところだし)、そんな人たちでも退屈に感じてしまうほどマイケル・ベイのアクション描写はしつこいってことだからね。
そんなわけで、あまり期待せずに見ることにしたが、実際に見てみると、1作目や「バンブルビー」ほどではないが、そこそこ楽しめた。
その成功の要因となったのは90年代(正確には1994年)を舞台にした作品としたことだと思う。「バンブルビー」が80年代を舞台にした作品で映画など80年代カルチャーの小ネタを挟んだことで高評価を得たので今度はそれを90年代でやってみたという感じだろうか。
なので、BGMとして使われているのは90年代のラップやヒップホップ・ソウルのヒット曲ばかりだ。ウータン・クラン“C.R.E.A.M.”とか、ディゲイブル・プラネッツ“Rebirth Of Slick (Cool Like Dat)”、L.L. クール J“Mama Said Knock You Out”など、当時をリアルタイムで経験した人にとってはたまらない曲が連発されるのは爽快だ。ただ、1997年のヒット曲であるザ・ノトーリアス・B.I.G.“Hypnotize”が2度もかかるのは違うんじゃないかとは思ったけれどね。ビギーをかけるのなら、1994年リリースの1stアルバム『Ready To Die』収録曲でしょって思う。
そんなわけで、主人公やヒロインは黒人となっている。とはいえ、いかにも、90年代に大量生産されたブラック・ムービーに出てきそうなアフリカ系アメリカ人ではなく、主人公はヒスパニック寄りだし、ヒロインはアンチ・ルッキズム的なビジュアルになっているが、そんなにポリコレ臭は漂っていないので、過度なポリコレ描写が苦手なアジア人でも見られると思う。
というか、ほとんど、少年漫画誌みたいなアツい展開が続くので、日本人なら本作を受け入れることはできるのではないかと思う。
主人公が車を盗もうとした現場でトランスフォーマー集団と出会うという設定はコンプライアンス的にどうなのよって意見もありそうだが、その辺は90年代の話だし、いいんじゃないかなという気もする。
そういえば、「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」では、マーキー・マーク・アンド・ザ・ファンキー・バンチ“Good Vibrations”が使われていたが、本作では楽曲は使われていなかったものの、マーキー・マークが俳優に転身し、マーク・ウォールバーグとなったことがギャグとして使われていた。やっぱり、マーキー・マークって90年代を語る上で外せないカルチャーなんだね。
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