シャン・チー/テン・リングスの伝説
サーチライト作品の「ノマドランド」や「サマー・オブ・ソウル」、20世紀スタジオ作品の「フリー・ガイ」といった旧フォックス系の作品は東宝・東映・松竹の邦画大手3社の劇場でも上映されていたが、フォックスがディズニー傘下になる前から存在するブランド(ディズニー、ピクサー、マーベル、ルーカス)の作品が邦画大手3社の劇場で上映されるのは久しぶりだ。
劇場公開されるはずだったディズニーの実写作品「ムーラン」を去年9月にディズニープラスでの配信という形での公開に切り替えて以降、ピクサーの「ソウルフル・ワールド」も配信オンリーに変更されたほか、ディズニーのアニメーション作品「ラーヤと龍の王国」やディズニーの実写作品「クルエラ」と「ジャングル・クルーズ」では劇場公開と同時にディズニープラスで配信するという方針が取られた(「クルエラ」、「ジャングル・クルーズ」は1日だけ劇場で先行公開)。
こうした公開の仕方は映画館を軽視しているとして全興連は反発した。そして、日本の映画興行を牛耳っている邦画大手3社はこの全興連の方針に沿って、同時配信されるディズニーの新作映画の上映をボイコットした。
何故か、松竹はディズニーの名作アニメーション「ファンタジア」のリバイバル上映は行っていたが…。
既にソフト化され、配信もされている「ファンタジア」の上映がOKで、新作はNGというのは全くポリシーがないというか、矛盾だらけでしかないと思うが。要は全興連とか業界トップの東宝と足並みを揃えないと叩かれるから、新作はボイコットしたけれど、本音を言えば、ディズニー映画は儲かるから上映したいってことでしょ。
なので、業界のしがらみからは多少、自由な立場にあるユナイテッド・シネマやイオンシネマといった映画興行が本業でない企業が運営するシネコンや、シネマサンシャイン、ヒューマックスなどの独立系のシネコン・映画館、そして、ミニシアターではそうした本音に従ってディズニーの同時配信映画も上映されることになった。
とはいえ、結局、世の中の大半の人にとっては、邦画大手3社以外が運営する映画館って、その劇場周辺の人か、マニアしか寄り付かないダサいものと思われているらしく、そんなに大きなヒットにはならなかったんだよね…。
でも、久しぶりに大手3社の劇場でかかることになったディズニー映画(本作はマーベル作品)である、この「シャン・チー」はネット上で主人公がパッとしないオッサンみたいに揶揄されていたのに、しかも、公開初日の天気は良くなかったのにもかかわらず、結構な客入りとなっていた。
大手3社の劇場では上映されなかった「ブラック・ウィドウ」の方がヒーローとしての知名度も、演じる役者の知名度も本作より遥かに上なのに、本作の方が興行成績を上回りそうな雰囲気となっているというのは、結局、日本の映画興行というのは、大手3社に牛耳られているってことなんだろうね。
そして、映画マニアとかアニメオタクではない、一般のカップルや女性グループ、家族連れは大手3社の映画館には行きたいと思うが、それ以外の映画館には行きたくないって思っているってことなんだろうね。
ディズニーやピューロランドには行きたいと思うが、花やしきはダサくて行きたくないみたいな感じなのかな?
そんな久々に大手3社の劇場で上映されたディズニー映画である本作を見た感想としては、ファンタジー要素は強いし、金もかかっているけれど、コレって、単なるカンフー映画だよねというのがまずはあげられるのではないだろうか。
最近のジャッキー映画よりも遥かに面白いと思う。
そんなこともあってか、主人公よりもミシェル・ヨーとかトニー・レオンといった、かつての香港映画で活躍したベテランの動きの方がやっぱりすごいよねって思ってしまうんだよね。
ところで、この主人公、冴えないオッサン扱いされているが、作中では、1996年に出会った男女から生まれた男児ということが語られているんだよね。
そして、舞台となっているのが現在だから、両親が出会ってすぐに子づくりしたとしても、この主人公は20代半ばってことになるんだよね。
そんなに若者だったのか…。
そして、この主人公の女友達をオークワフィナが演じているが、よく見ると、彼女って宇多田ヒカルに似ているよね…。
まぁ、確かに2人とも、いかにも、ニューヨーク出身のアジア系って感じではあるが。
ところで、本作の主人公は中国系で、作中で“江南スタイル”と呼ばれて韓国人扱いされたことに怒っていたけれど、作中には相撲取りみたいな奴や忍者みたいなのも出てきたし、結局、この映画自体、アジアをごっちゃにしているじゃんって感じだった。
それはさておき、本作は音楽もなかなか良かった。「ブラックパンサー」に近いテイストだったけれどね。
そして、“ホテル・カリフォルニア”はオークワフィナがネタで作中で歌っているだけかと思ったら、まさか、エンドクレジットで本家イーグルスのバージョンでもかかるとは思わなかった…。
洋楽の知識がほとんどない日本の若い観客のリアクションは薄かったけれどね。
エンドクレジットといえば、アメコミ映画では、エンドクレジット中やエンドクレジット後にオマケのシーンとか、今後の関連作品につながるシーンとかが入ることが多いのに、エンドクレジットが流れ出した瞬間、席を立ち、去っていく観客が結構いるのは何故なんだろうか?
“何しにアメコミ映画を見に来たの?”って言いたくなるよね。
しかも、本編前に丁寧に“エンドクレジット後に映像があります”っていう告知画面まで出しているのにね…。
いくら、ハリウッド映画のエンドクレジットは長いといったって、10分を超えるものは滅多にないわけだし、わざわざ、映画館にまで来ておきながら、たった10分を勿体ないって思う感覚が理解できないよね。
●勝手にDVDなどの映像を編集して、ダイジェスト版をネットに流す。
●早送りや倍速で映画を見る。
どちらも「ファスト映画」問題ではあるが、たった10分を非効率と考えるような連中が多いから、こういう問題が起きているんだろうけれどね。
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