パヴァロッティ 太陽のテノール
ルチアーノ・パヴァロッティの若い頃がハンサムだったということに驚いた。(イケメンではなくハンサム!)
そして、人によって、パヴァロッティ像が違うというのもよく分かった。
それにしても、邦題のサブタイトルの「太陽のテノール」ってダサいな…。本当、日本の映画関係者って、センスないよな…。まぁ、パヴァロッティのレパートリー「オー・ソレ・ミオ」から取ったんだろということは音楽ファンなら誰でも分かるけれどさ、違うでしょって感じだな…。
あと、何故、スティングの「フラジャイル」のインスト・カバー(2CELLOS)が繰り返し流れるのかも謎だったな…。スティングがパヴァロッティのチャリティ公演出演者って理由なら、本人のバージョンを使えばいいのに…。
それから、インタビュー取材に応えていたホセ・カレーラスが痩せていたというかやつれているように見えた。ちょっと体調が心配だな。
パヴァロッティとカレーラスとともに3大テノールを形成していたプラシド・ドミンゴも出ていたが、彼はセクハラ騒動で騒がれる前に本作が海外では上映されていたからギリギリセーフって感じだったのかな?騒がれた後だったら、カットされていたのかな?
そして、U2とブライアン・イーノによる覆面?プロジェクト、パッセンジャーズとパヴァロッティのコラボ曲「ミス・サラエボ」の誕生秘話をU2のボノが語るシーンは感動的だった。そういえば、2006年に見た来日公演では、ボノがパヴァロッティのパートも歌っていたな…。
それから、身内が撮った貴重な映像とかも見られて良かった。ここまで満足度の高い音楽ドキュメンタリーは滅多にないな。9月4日には、パヴァロッティ以外にも、マイルス・デイヴィスやPerfume、欅坂46のドキュメンタリーも公開されたけれど、4本の中では、これの出来が一番良かった。邦楽の2本はクソ映画だった。
やっぱり、ロン・ハワード監督の手腕なんだろうな。これまでにも、ザ・ビートルズのドキュメンタリーを発表しているし、劇映画でも、「ラブINニューヨーク」(ロッド・スチュワート)、「バックドラフト」(ブルース・ホーンズビー&ザ・レインジ)、「エドtv」(ボン・ジョヴィ)、「グリンチ」(フェイス・ヒル)など音楽との相乗効果が高い作品が多いし、俳優として出演した「アメリカン・グラフィティ」はオールディーズ・ナンバーがてんこ盛りだしね。
話はそれるが、「アメグラ」の70年代にオールディーズとされた50年代、60年代の曲がいまだにオールディーズと呼ばれ、70年代以降の曲はオールディーズと呼ばれないのは、60年代の半ばあたり、つまり、ビートルズやストーンズによって、音楽シーンが大きく変わったからなんだろうな…。
そういえば、本作でも言及されているけれど、クラシック愛好家の中には、アンチ・パヴァロッティの人って多いよね。
スタジアム公演などで大勢の観客を集めたことから、ポップ(本作の字幕ではポップスと訳されているが古臭い表記だよな。まぁ、本作のメイン・ターゲット層にはポップスの方がしっくり来るんだろうが)やロックのコンサートみたいにPAを通して、観客に歌声を聞かせたのが気にいらないんだろうね。
あと、3大テノールの公演も当然、大規模コンサートだからPAを通してのパフォーマンスだったし、イベントみたいになっていたから、頭のかたいクラシック愛好家のヘイトの対象になったんだろうね。
そして、3大テノールの公演と並行して行われたポップ・ロック系アーティストとコラボしたチャリティ・ライブ「パヴァロッティ&フレンズ」はPA問題に加えて、クラシック愛好家が見下しているポップ・ロックに歩み寄ったものだから、尚更、嫌われた。
でも、こうしたPAを通したコンサートや、3大テノールとしての活動、ポップ・ロック系アーティストとのコラボで、パヴァロッティ、そして、ドミンゴやカレーラスは幅広い層に親しまれる歌手になったんだよね。しかも、U2とコラボした先述の「ミス・サラエボ」は名曲中の名曲だしね!
だから、クラシックしか聞かない連中の戯言なんて無視して構わないんだよな!
ということで、本作はルチアーノ・パヴァロッティという素晴らしいアーティストの生涯を振り返ることができる優れたドキュメンタリーだった。
≪追記≫
「バケツの水をひっくり返したような」って表現って英語由来だったのか…。
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