劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」《前編》
本作は2014年にスタートした“セーラームーン”の新たなアニメシリーズ「美少女戦士セーラームーンCrystal」の劇場版で2部作(前後編)として公開された2021年の「劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal」に続く作品の前編だ。今回も「Eternal」同様、前後編に分けられている。
そして、「Eternal」同様、今回も無理して前後編に分けたことにより作品の質が下がっているように感じた。
本来なら1クールアニメで展開するストーリーを無理矢理各80分程度の前後編にまとめているから、どうしてもダイジェスト感が出てしまうし、同じことを何回も繰り返しているようになってしまう。テレビシリーズなら毎回、似たような敵と戦うんだから、そりゃそうだよね。
そこへ来て、前編と後編の尺を同じくらいにしているから、どうしてもシーンによっては間延びしているように見えたり、逆に端折りすぎに見えたりもする。
子どもの観客にも見てもらいたいから、80分程度の尺に収めたい。60分程度のイベント上映の尺にするとマニア向け作品扱いされてしまう。そういう考えもあるんだろうが、子どもにも見てもらいたいなら立て続けに前後編を公開するというやり方はどうかと思うから、ここは90年代のテレビシリーズを知っている人=大人の観客を意識した長尺でも良かったのではないかと思う。というか、2014年に始まった新シリーズは深夜枠の放送だから、そもそも、子ども向けではなかったはずだしね。
ところで、海外ではセーラームーンについてLGBTQなどマイノリティ差別問題の文脈で論じる人が多いように感じる。
これに対して、ネトウヨ思想に感化されがちな日本のオタクがこうしたポリコレ的思想と絡めて論評されることに怒るというのもデフォルトになっているように見える。
日本のオタクに関しては腐女子も含めて、百合とかBL、性転換とかが大好きなくせに何故かリアルなLGBTQの話になると、“ポリコレガー”とか“野党ガー”とか言って、左派政党やメディアの批判になるから面白いよね。
でも、本作に関してはどう見てもその文脈で語らざるを得ない作品だと思う。
作中に登場するアイドルグループ、スターライツは普段、男性として活動している。原作では細かく言及されているらしいが、少なくとも本作を見ただけでは男性にしか見えない。
ところが、戦士・セーラームーンとして活動する時は完全に女性の姿だ。
戦士に変身する時に性転換するキャラなのかと思う人がいてもおかしくない設定だ。実際は女性が男装して男性アイドルとして活動しているようだが。
こうした設定のキャラの活躍を描いた時点でLGBTQと結びつけるなという方が無理だと思うしね。
それに、セーラームーンに登場するキャラはこのスターライツもそうだが、地球人でないキャラとか未来人も出てくる。要は性的な面でなく人種の面でも多様性のある社会が舞台となっている。こうした作品をポリコレ観点なしで楽しめと言っている日本のオタク・腐女子の方がおかしいでしょ。
とりあえず、きちんとした評価は後編を見てからします。前後編とか⚪︎部作と銘打った作品って、普通のシリーズものとは異なり、それ1本では評価できないしね。