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映画 太陽の子

去年8月にNHKで放送された単発ドラマ版「太陽の子」を見た時に思ったことは、作品自体の出来やメッセージの良し悪しは抜きにして、中途半端な作品だなというものだった。何かもやっとしたまま終わってしまったって感じだったしね。

第二次世界大戦下の原爆投下という重いテーマを描いていながら、わずか1時間20分の放送枠しかない。CMが入る民放の枠にあてはめれば2時間ドラマにすらならない短い尺だ。
普通に考えたら、ノーCMのNHKの放送枠基準でいえば、1時間枠で2夜(2週)連続とか、単発で2時間枠とかでやってもいい内容だ。
2夜(2週)連続なら後編に前編のおさらいみたいのがつくだろうし、単発でもオマケで舞台となった場所の紹介映像とかが入ったり、次の番組までの間に番宣とかが入ったりするから、いずれにせよ、正味は1時間50分から55分くらいかもしれないが、最低でもそれくらいの尺でやる内容だと思った。
実際、今回の映画版はそのくらいの尺になっているということは、そういうことなんだと思う。

同じNHKの単発ドラマの劇場版でも「スパイの妻」は色調整などを劇場での上映に合わせていじるなど一部を変更しただけで、尺もテレビ版とほとんど同じだったが、この「太陽の子」はそうではない。

結局、テレビ版というのは映画版(「スパイの妻」は劇場版と呼んでいるが、本作は「映画 太陽の子」という表記になっているので映画版と呼ぶことにする)の長い予告編だったということなのかな?公式側はテレビ版と映画版は視点を変えて描写したと言っているが、そうとしか思えないな。要はテレビアニメの総集編映画にテレビ版になかったシーンが含まれているみたいな感じかな。

そして、実際に映画版を見た感想としては、テレビ版にあった中途半端感は薄れてはいたものの、やっぱり、唐突な終わり感はあったというものだった。まぁ、日本人の観客ならあのエンディングで終戦を理解できるとは思うが、外国人には無理では?

というか、別の視点で描いた作品でもなんでもなく、単なるロング・バージョンだった。ぶっちゃけ、中途半端に発表された作品を一応、完結させただけって感じだった。

あと、途中でヒロインの祖父がいつの間にかいなくなったりとか、終盤に何故か、主人公の所にヒロインがやってくるとか、謎の声のみの出演の外国人とか、ご都合主義というか、謎演出というか、何というか、そういうアラだらけの作品だなと思った。ぶっちゃけ、テレビ版より尺がのびた分、アラいところも目立ってしまっていると思う。

ただ、コロナ禍で感染者が拡大している中、五輪が強行開催された今の世の中の視点で本作を見ると、本当、第二次世界大戦の頃から日本という国も、日本人も成長していないなというのを実感できるので、そういう意味では見る価値はあったと思う。

明らかに負け戦なのに戦争をやめられない国の姿は、明らかに経済効果がないのに五輪を強行開催した今の国や都と重なるしね。

また、戦争に対して疑問を持ってはいけないというのは、五輪開催に反対すると自民支持者らに反日と呼ばれることを想起してしまう。

それから、原爆開発競争に負けた日本の描写は嫌でもコロナのワクチン開発や獲得の競争に負けている今の日本政府を思い浮かべてしまう。

さらに、原爆の開発に関わっているという理由で戦地に行かなくて済んだり、家族を安全な場所へ避難させられるという特権を持った科学者の様子は、コロナの感染拡大の懸念がある中、国民に犠牲を強いているのに上から目線で発言する五輪出場アスリートそのものに見えてしまう。

そういう意味では実にタイムリーな作品だと思った。

ただ、今回の映画版、テレビ版は公共放送を名乗っている(実際は国営放送というか、自民党のプロパガンダ局だが)NHKでの放送ということもあり、思想的・政治的には極力中立にしようという雰囲気があったが、この映画版は若干、反権力モードに傾いていたようにも感じた(そういえば、クレジットには企業名が連なって出てくるのに製作委員会の表記がないのはNHK絡みの作品だからなのかな?)。

テレビ版でもヒロインが、主人公兄弟に喝を入れる場面はあったが、彼女が訴える“未来のことを考えろ”というメッセージがまさに、それを象徴していると思う。大戦中の日本でも、コロナ禍の今の日本でもその視点が欠けているんだよね。

結局、政治だろうと、経済だろうと、芸能だろうと、日本社会というのは至るところで自転車操業状態なんだよね。だから、目先の利益のことしか考えられない。コロナ対策がなっていないのも、まさにそれだと思う。要は実際は後進国なのに、先進国のフリをしているから、自転車操業になるんだよ。

それにしても、三浦春馬演じる主人公の弟が入水自殺しようとするシーンは嫌でも彼の最期を思い出してしまうよね…。

ところで、ヒロイン役の有村架純といえば、所属事務所が最近、彼女と小結・明生との関係について女性自身が報道したことを全面否定するとともに、法的措置を取る構えを見せたことが話題となったが、それって、どうなんだろうかね。

勿論、誤報どころではない捏造報道というか、捏造にすらなっていない創作したストーリーを報じた女性自身はクソでしかないけれど、全面否定ってのは明生に対してかわいそうだよね。

彼が有村架純に対して何の興味もないなら、それでもいいけれど、彼はファンだからね…。
それって、横綱や大関ならまだしも、小結なんて、単なるデブなんだから、うちの有村架純とは釣り合わないんだよって言っているようなものでしょ。正直言って、彼女のイメージが落ちたと思うな。

ちなみに、本作は今年になって劇場で鑑賞したちょうど100本目の新作映画となった。8月中に大台に乗るなんて、ありえないほどのハイペースで驚いている。

それだけ、公開ラッシュ状態が続いているってことだよね。度重なる緊急事態宣言などで公開時期が変更になった作品が多く、その結果、劇場の営業が再開されてから、元々、公開予定だった作品と、緊急事態宣言の影響でリスケジュールされた作品が同時期に公開されるから、そりゃ、ラッシュ状態になるのは当然なんだけれどね。

でも、それによって上映回数が減らされるから、鑑賞機会が失われているんだよね。それでいいのかな?実際、100本も見ているけれど、それでも、本当は少なくともこの1.5倍くらいは見たい映画があったわけだしね。上映回数が少ないとか、同時期に公開される見たい作品が多いとかの理由で鑑賞を諦めた作品がたくさんあるんだよね…。

そういえば、今日は長崎に原爆が落とされた日か…。映画やドラマでは広島については描かれても、長崎って省略されることが多いよね。
本作でも台詞で長崎にも投下されたって言及されるだけで、次の投下地と噂されている京都の話にとっとと移っていってしまったしね…。

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