印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
やけに混んでいた。平日は日時指定にしていないというのもあるのだろうし、そもそも、日本人に印象派好きが多いというのもあるのだろうし、制服を着ているグループもいたから社会科見学的なので来ているのもいたのだろうし、中国語も聞こえたからバブル期の日本人のように金を持て余している人たちがエリートぶって美術館に来ているというのもあるのだろう。
でも、増税メガネのというか自民党の悪政で税金(社会保険料やインボイスなどを含む)は上がる一方だし、世界的なインフレだし、実質賃金が下がっているしで世の中的には経済的に苦境に立たされている人が多いはずだ。
なのに混んでいるというのはどういうことだ。
今の美術館・博物館の入場料は高いと言われている映画館よりも高額だ。
しかも、映画ならアニメや特撮のイベント上映を除けば2000円で数時間過ごすことができるが、展覧会なんて2000円以上するのがデフォルトなのに(3000円とか取られるのだってある)、館内の滞在時間なんて企画展示しか見られないものであれば、30分、じっくり見ても1時間程度。その上、予約必須のものも多い。企画展なんて最近は展示作品が100を超えないものがほとんどだから鑑賞するのに要する時間なんてそんなものだ。
そう考えると、美術展鑑賞ほどコスパやタイパが悪い趣味はないと思う。
こうした非効率的な展覧会に人が集まるということは、金のみならず時間や文化的な情報を収集する労力にも余裕のある人がそれなりにいるということなのだろう。
つまり、経済格差のみならず文化格差のようなものが拡大しているということだ。
でも、金と時間を持て余して美術館・博物館にやって来る人は必ずしも美術ファンとは限らない。
推しの声優や俳優が担当する音声ガイドを聞くためだけに美術に興味かないのに大枚をはたいているのだっている。
地方や海外からやって来た観光客には自分を教養のある人間に思わせるために来ているのだっている。
でも、そんな似非美術ファンの化けの皮はすぐにはがれてしまう。鑑賞しながら連れとぺちゃくちゃしゃべったり、撮影禁止の作品をスマホで撮影したりするなどマナーの悪い人間が目立つのはそういうことだ。
それから、本来、美術館・博物館というのは館側が規制しない限りはどんな順番で見てもいいことになっている。なのに、やたらと列を作って前の人がどいたら自分が見るみたいな鑑賞をする人が多い。美術館・博物館にあまり行ったことがないからルールが分からないのだろう。
しかし、美術館・博物館は利益を出さなければ運営を続けることができない。最近は円安やインフレの影響で費用も増大している。だから、美術ファン以外から集金しないとならないという厳しい財政も理解しているつもりだ。
とはいえ、美術好きが自分たちをマイノリティのように感じてしまう今の美術シーンは健全とは言えない。
だいたい、クロード・モネの「睡蓮」の展示スペース前に人だかりができていないんだから、来場者の多くは印象派のファンじゃないんだよね。
こういう最近の美術館事情が好きになれず、その結果、なかなか来訪する気にもならず、今回が今年初めての美術館訪問となったが、やっぱり、訪れる頻度は今後ますます低下しそうだと改めて思った。